高温多湿の季節。ビールに枝豆が美味しい。冷やしたキューリに田舎味噌をつけるのも…。
「発酵」と「腐敗」。どちらも微生物がエネルギーを得る働き
高温多湿の時期は食べ物が傷みやすいが、皆さんは「腐敗」と「発酵」の違いをご存じだろうか。
“発酵デザイナー”として全国各地で活躍する小倉ヒラクさんによると、どちらも微生物がエネルギーを獲得する方法として、あらゆるものを分解する際の副産物だという。それが人間にとって有用なら<発酵>で、有害なら<腐敗>と呼んでいるそう。
▲ビッグイシュー315号 特集より
和食に欠かせない「発酵」
日本特有の発酵食品といえば、酒、醤油、漬物、豆腐、納豆などがぱっと思いつく。また、昆布やかつお節といった「ダシ」のもとにも微生物の働きは欠かせない。食べ物を発酵させる微生物がいなければ、和食は成り立たないのだ。
しかし、たった50年前にはどの家庭でも手作りしていた発酵食品が、いまは「買うのが当たり前のもの」となってしまった。しかし小倉さんいわく、「東日本大の震災の後くらいから発酵文化を再びDIYに回帰させる動きが出てきた」という。
その発酵DIYにかかわるようになったきっかけや、発酵DIYに来る人の動機、そして小倉さんの「手前みそ」のつくり方をビッグイシュー315号で紹介している。
小倉ヒラク(おぐら・ひらく) 発酵デザイナー。「見えない発酵菌のはたらきを、デザインを通して見えるようにすること」を目指し、全国の醸造家たちとの商品開発や絵本・アニメの制作、ワークショップを開催。 東京から山梨県へと移住し、日々菌を育てながら微生物の世界を探求する。アニメ・絵本『てまえみそのうた』を仲間と制作。 著書に『発酵文化人類学 微生物から見た社会のカタチ』(木楽舎)がある。 |
小倉ヒラクさん(発酵デザイナー)企画制作「手前みそのうた」
豆腐、納豆、味噌の原料、大豆の国産はたった7%。
遺伝子組み換え大豆が米国から流入したことを受け、「大豆畑トラスト運動」で自給率UP
そして、味噌の原料となる大豆についても315号で取材している。
1996年ごろ、遺伝子組み換え大豆が認可されて、米国から遺伝子組み換え大豆が入ってくるようになった。そこに安全な国産大豆が食べたいと運動を起こしたのが小野南海子さん。
「大豆畑トラスト運動」という、大豆をつくる農家に出資して、「できた豆をしっかり食べる」という運動を始めた。現在生産地は全国で52か所に増えたという。
その活動の経緯や苦労ポイント、うまくいった事例の説明を315号で解説。
遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン 1996 年結成。98年より、市民が大豆生産地の一定区画に出資し、生産者と大豆を作り、できた大豆を食べる運動(1口10坪4000 円程度)を開始。毎年、全国のトラスト生産者や市民、製造業者による「全国交流会」を行っている。 ※トラスト運動参加ご希望の方には、全国の「大豆畑トラスト運動生産地リスト」を送付。資料の請求やお問い合わせは、電話03-5155-4756 まで。 http://gmo-iranai.org/ ※生産地の一つ「市民の大豆食品勉強会・大豆畑トラスト IN のらっくす農園」に直接申し込むこ |
※味噌にさらなる愛情が湧いてきたところで、料理研究家の枝元なほみさんによる「ピリ辛みそディップ」や「肉みそうどん」などの「みそ達人」レシピ8選を頁見開きでご紹介。
オンライン編集部オススメの発酵関連本・映画
▼発酵道-酒蔵の微生物が教えてくれた人間の生き方
経営の破綻と病気を機に、「発酵」の力を借りた自然酒作りに転向した酒蔵「寺田本家」の第23代当主の話。
発酵をきっかけに人の生き方、環境、生命など様々なことに思いがめぐる作品。
▼創業三四〇年 自然酒蔵元寺田本家 麹・甘酒・酒粕の発酵ごはん
お料理好きな方はこちらも。上記の「寺田本家」の24代目当主の夫婦の日頃のご飯を紹介。発酵とともに生きることで、体にも心にも優しい食べ物をいただくことができる。
▼日仏合作『 千年の一滴 だし しょうゆ』
2014年フランスとドイツで放送され、大反響で9回も再放送された異色作。フランス人シェフが、日本料理の主役「日本の自然によりつくられる食べ物」に感嘆する様子は必見。
日仏合作ドキュメンタリー 『千年の一滴 だし しょうゆ』公式サイト
※自主上映の申し込み受け付けているそうです。
オンライン編集部もオススメ!「大豆」と「味噌」のDIY
オンライン編集部にもかなり発酵ラブの人間がいる。
和食に欠かせない微生物は稲に自生するニホンコウジカビ。その学術名「アスペルギルス・オリゼ」にちなんで、子どもの名前を「オリゼ」にしようとしていたくらいだ。(画数の問題で断念したが…)
彼女は地方での古民家ワークショッププログラムの中に味噌づくり体験があったことをきっかけに、「もっとたくさん作りたい」といって味噌壺を購入。さらに「大豆も自分で作りたい」と年々発酵熱がエスカレートし「大豆からの味噌づくりDIY」にチャレンジしていた。
大豆はそれほど手をかけなくても田んぼのあぜ道に植えただけですくすく育つとのことで、味噌にする目的で大豆を栽培。
夏のこの時期、辛抱たまらなくなったら枝豆として収穫して茹でて食べる。
自分で育てて収穫した無農薬枝豆はとてもおいしい。
全部枝豆にしてしまいたいという誘惑をおさえて、季節が変わるまで待ち、米の収穫が終わったころに、大豆を収穫。
ネットに入れてカラカラになるまで乾燥させ、さやから取り出していく。
(この工程は2日ほどかかる地道な作業なので、誰か気のおけない仲間と一緒にお話しながらするのがおススメ)
そのうえで、洗った大豆を一晩浸し、茹でる。
(茹で時間等はビッグイシュー315号をご覧ください)
(茹で汁は味噌づくりに使うので捨てずに200ccほど取っておく)
そして塩と麹を混ぜ、茹でた大豆をつぶして混ぜ「味噌団子」をつくり、容器に入れる。
塩はこだわりのある人はそれを使うのもよい。
容器に入れるときは空気が入らないように、味噌団子を叩きつける。(コントロールが悪い人は要注意。床に味噌玉が炸裂すると大変なことになる)
容器に詰めた後、最後に、カビが生えないように塩をまぶす人もいれば、焼酎や泡盛で消毒する人もいるなど、それぞれのこだわりのやり方で容器に入れる。
味噌団子を入れた時は、大豆の種類にもよるが白っぽい。
待つこと数カ月で、ふわりといい香りを放つ味噌の出来上がり。
自分の見えないところで、微生物が一生懸命働いていることを強く実感する瞬間だ。
使いきれなかった大豆があれば、また土に撒くと芽が出る。
そうしてまた枝豆、味噌になっていく…。
人間は自分の力で生きているように思っても、見えないところで「生かされている」と感じられる、大豆づくり・味噌づくり。ぜひこれを機にチャレンジしてみませんか。
自分で味噌を仕込んだことがある人や少し知識のある人なら「味噌の仕込みは寒い時期なのでは?」と思うかもしれないが、小倉さんいわく夏仕込みもできるとのこと。
興味を持った方は315号の特集をぜひご覧ください。
表紙はミニオンズの315号は特集のほかにも
・スペシャル企画:『怪盗グルーのミニオン大脱走』
・リレーインタビュー。私の分岐点:パタゴニア日本支社長 辻井隆行さん
・国際:縫製現場にホームレス女性25人雇用。米国オールシーズン対応のコート販売
・ビッグイシューアイ:情報公開制度は「公益を追及するもの」、行政情報は国民共有の知的財産
と盛りだくさん。ぜひ路上でお求めください。