この記事は、釜ヶ崎講座シンポジウム〈コロナ禍の中での生活困窮者への支援活動をめぐって〉レポートその2です。
ハウジング・ファースト型支援の推進へ向けて
ビッグイシュー基金では、コロナ禍以前から住む場所を失った人たちに対して、住まいを得るための支援を行ってきた。また、まずは個室の住居の確保を優先的に行うという「ハウジング・ファースト」の必要性についても考えてきた。
自前でシェルターや居住できる個室の数を増やし、第1回目の緊急事態宣言発出後、休業要請が出されたネットカフェで寝泊りする人が行き場を失うことを危惧し、他の団体と連携して、都に対して緊急の申し出を行った。その結果、定まった住まいのない人を対象にビジネスホテルの個室が提供されるなど、一時宿泊支援の実現にこぎつけた。
コカ・コーラ財団より助成を受け実施
1年半近く感染予防と困窮者支援を両立させてきたが、この両立には個室の居宅の確保が必須である。それをどのように実現してきたのか。
2020年7月、コカ・コーラ財団から約5300万円の出資を受け、コロナ禍の影響で住居を失った困窮者や定まった住居を持たない人を対象に、住まいの確保を応援する「おうちプロジェクト」が、緊急支援事業としてスタートした。
これまでは、ステップアップモデルという、ホームレス状態の方が施設やシェルターなど、一時的な住まいに入り、その後恒久的な住まいを得ることを目指すという形が取られることが多かった。
しかしこのやり方では、途中でドロップアウトしてしまい、恒久的な住まいへの移行まで至らず、再び路上に戻ってしまうケースもあることが問題だった。さらに感染予防という観点からも、多人数で共同生活をする施設で暮らすよりも、路上生活から恒久的な個室の住まいに直接移行する、ハウジング・ファーストが重視されるようになってきた。
各支援団体と協働し、支援のノウハウを共有
今回連携した団体には、東京と大阪を中心に、釜ヶ崎支援機構、Homedoor、つくろい東京ファンド、などに加えて、外国人の困窮者支援団体、10代の女性を支援する団体などがあり、18団体が参加した。
住まいを失った人に、ビッグイシュー基金が事務局となり、入居のための初期費用、家具・家電の提供、場合によっては不動産会社を紹介する。また、それぞれの支援団体が持っているノウハウを共有し、住まいを得る最初のハードルを越える手助けをした。
1年間に渡る支援から見えてきた困窮者世帯の状況とは
2020年8月~2021年7月に行われたこの事業では、合計207世帯をサポートした。最も多かった世代は40代、次に50代、30代。ビッグイシュー日本で雑誌販売者となっている年代よりも、若い世代が目立った。
男女比でみると、利用者の約2割が女性。担当したスタッフによると、「プロジェクトの後半になるにつれて女性の利用者が増えたような印象がある」とのことだ。
入居する前の生活場所については、支援団体の宿泊施設・シェルターなどが最も多く、路上生活という人も多くいた。ただし家賃が払えず家を出ざるをえない人や、友人・知人宅に寝泊りする人、親族の家などに一時的に住んでいる人など、路上生活をしている人だけではなく、様々な状況の人の利用があったことが分かった。
大阪と東京、入居審査のハードルの違いによる利用しやすさの格差
大阪と東京では、課題も異なる。
相談者が東京での利用だった場合、都内では条件にあった物件確保に難航するということが少なくなかった。入居のための審査が通りづらく、特に外国籍の相談者のケースでは、本人名義による入居のハードルが高かったという。
また、たとえ初期費用など、お金の準備はできていても、家主、保証会社、不動産会社などを通じた見えない壁があり、入居までには金銭の部分以外のハードルも高く、本人名義での住まいの確保を阻んでいる。
以上、プロジェクト終了直後の速報として実施状況を発表したが、後日改めてビッグイシュー基金から本プロジェクトの報告書が公開される予定だ。
記事作成協力:Y.T
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