“前任者から引き継いだ50年前に作られた企画書を、あなたはそのまま実行しようとしますか?”
たとえばダム。ダムと言えば「黒部ダム」を思い浮かべる人も多いかもしれない。戦後の電力不足の中、苛酷な環境下で難易度の高い工事をやり遂げたエピソードから、黒部ダムは「技術大国ニッポン」を象徴する英雄ダム、ひいてはダム全般を「クリーンエネルギーを提供する存在」と捉えている人も少なくないだろう。
「撤去という公共事業へ」
さらに11月15日発売の『ビッグイシュー日本版』347号では「ダムを撤去した人たち」を特集している。2018年3月に国内初の本格的な「ダム撤去工事」が完了したのはご存じだろうか。
美しかった球磨川(熊本県)に1955年にできたダムは、水質を悪化させ、漁獲量を大きく減らし、ダム放流時の水害や振動の被害、悪臭などは住民たちを悩ませてきた。
とはいえ、ダムの計画を見直すには、詳細な検証が必要。
熊本県八代市在住のつる詳子さんは約30年前から球磨川流域の観察・調査活動をしてきた。
例えばダム建設の骨材採取予定地だった山にいる絶滅危惧種の昆虫の生態調査。
国交省が7年間で14回の調査を行っていたのに対し、つるさんほか調査メンバーは、毎週日曜朝4時に起きて年に50回も調査。その結果を公表することでその山の骨材採取が中止になったこともある。
その他地元の人々のさまざまな地道な活動で、ダム撤去の動きを盛り上げ、2018年3月、荒瀬ダム撤去が完了。
汚臭は解消され、消失した藻場が再生され、生物が再び集まるようになった。
撤去中の荒瀬ダム。今年3月に工事が完了し、清流がよみがえった
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その他、『ビッグイシュー日本版』347号には
・リレーインタビュー・私の分岐点:フリーライター・北尾トロさん
・スペシャルインタビュー:エルヴィス・コステロ
・国際記事:買い物からプラスチックごみをなくす。ドイツ、無包装のパッケージフリーショップ
・ワンダフルライフ:金魚の骨格標本をつくる人になった――阿久津淳子さん
・ホームレス人生相談 × 枝元なほみの悩みに効く料理:「友達と離れるのが寂しい」という中3生の相談に、販売者と枝元さんが回答
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