北海道、最終処分地には“不適地”-文献調査から概要調査へ進めたいNUMO

2020年11月から、北海道の寿都町と神恵内村で行われてきた文献調査の報告原案がNUMO(原子力発電環境整備機構)より公開された。原案は経済産業省の放射性廃棄物小委員会技術ワーキンググループ(WG)で審議されている。同案は最終的に縦覧されるが、800ページという膨大なもので、とても読み切れるものではない、と批判が起きている。


(この記事2024年4月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 476号からの転載です)

寿都町と神恵内村は
水冷破砕岩地域かつ軟弱地盤

最終処分法では、「文献調査」「概要調査」「精密調査」という段階を経て、処分地の選定を行うことが法定されている。処分地選定を行うNUMOとしては、できるだけ次の段階へと進めていきたい動機がある。

技術WGは報告書案について、同WGで先に決定した「文献調査段階の評価の考え方」が適切に反映されているかを議論・評価する。その考え方に示された「『基準に該当すること』あるいは『基準に該当しないこと』が『明らか又は可能性が高い』とは言えない場合、その個別の対象は『十分な評価が行えなかった』こととなる」ので、概要調査で調査するとしているのである。複雑な言い方だが、たとえば文献調査において活断層が示されていたとしても、その文献だけでは「活断層」が「明らか又は可能性が高い」とは言えず、概要調査で調べるということになる。

実際に、両地域では概要調査へ進む判断を行っている。しかも寿都町は全域で、神恵内村は火山から15kmの範囲を避けた全域を文献調査の対象としている。

他方、岡村聡氏や小野有五氏など地質の専門家は、両地域は水冷破砕岩地域かつ軟弱地盤であり、処分地としては不適地だと指摘している。

このまま概要調査へ進んでいくとすると、他の調査地域がない場合には、不適地が処分地に選ばれてしまう可能性もある。また、先に進めてから不適地を認めるとすると、それまでの資金や労力が無駄になる恐れもある。したがって、より安全性の観点からは、たとえば断層が動く「可能性のある」地域はあらかじめ避けると判断するべきである。

寿都町には活断層や推定断層
鈴木道知事は一貫して反対

寿都町の文献には、町内に活断層、推定断層、リニアメント(※空中写真などで把握される、地表に認められる直線的な地形の特徴(線状模様))などの存在が記されている。NUMOは概要調査しないとわからないとの立場だが、そのような文献があるかぎり、避けることが安全を重視する考え方だ。また、猫の額ほどのスペースしかない神恵内村では沿岸海底下に処分地を選定する考え方だが、沿岸から15km先の海底処分地を図に描くと、沿岸域の活断層の中に処分場を作ることになる。どちらの地域も概要調査に進むことなく、文献調査で終えるべきだ。

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この文献調査報告書が経産省の委員会で承認が得られれば、北海道をはじめ一般住民に縦覧される。その後、NUMOは概要調査地区の選定を行い、自治体の首長に提案する。この段階で、鈴木直道北海道知事の意見を求められるが、鈴木知事は一貫して反対の姿勢を崩していない。むしろ、反対を表明しているのに、それが報告書に書かれていないことにクレームをつけている。知事はこれだけ明白な姿勢であり、概要調査には入れないだろう。

しかし、これは現在の最終処分政策を見直す良い機会にもできるはずだ。根本的な欠陥は、現在の処分対象廃棄物が、再処理を前提としたガラス固化体とその過程で放射性物質に汚染された廃棄物のみということだ。しかし実際には、使用済み核燃料や使用済みMOX燃料なども処分対象にならざるをえない。その処分方法についての研究を進めることが処分地選定より先ではないか。(伴 英幸)

伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけに、脱原発の市民運動などにかかわる。著書に『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)
http://cnic.jp/