ビッグイシューでは、ホームレス問題や活動の理解を深めるため、高校や大学などで講義をさせていただくことがあります。

今回は大阪市立大学杉本キャンパスにお伺いし、総合教育科目Bの「世界のマイノリティ」の授業にビッグイシュー日本・ビッグイシュー基金のスタッフ、そして販売者の吉富さんがお邪魔しました。



今回は100人規模の授業ということで、講義経験豊富な吉富さんも少しドキドキ気味。
お招きくださった川越先生は、「今の学生さんたちは、社会や未来になかなか希望を見出せないでいます。社会的企業として、社会の課題に真摯に向き合っている人や活動があるということは、彼らにとって、とても励みになると思います」と授業前にお話してくださいました。
学生さんたちの希望となれるお話ができるよう、がんばります!
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今回も、冒頭にビッグイシューが取り上げられたテレビ番組の映像を視聴。
映像のなかで、ビッグイシューはホームレスだけが販売できる雑誌であること、350円のうち180円が販売者の収入になること、ホームレスの自立を応援する事業であること、雑誌は世界各国のストリートペーパーのネットワークで記事を共有し合っていることなどの説明に加えて、販売者が登場し、ホームレスになった経緯や販売のこと、卒業後の目標などが説明されました。

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実際にビッグイシュー販売者が販売したり、話したりする映像にぐいぐい引き込まれている様子です。
そして、ビッグイシュー基金のホームレス支援の活動として、仕事や就業、住まいのサポートや、路上脱出ガイドの配布活動、野球などの部活、ホームレスワールドカップなどについても説明させていただきました。
「ホームレスワールドカップ」の話をしたときは、いかにもサッカーをしています、という服装の学生さんが興味津々で聞いてくれていました。
スタッフが「練習にも気軽に参加してくださいね!僕は練習をきっかけに、そのままビッグイシューのインターンになって、そのまま就職しちゃいました。」と言うと、場が和んでいました。

♯次回の野武士ジャパン(大阪)の練習は1月28日(土)18時~ 扇町公園です。


次に別のスタッフにバトンタッチ。

前回の別の大学での講義で、「今の学生は人生において『雑誌を買ったことがない』という学生もいる」と聞いていたので、最初にこのような質問をしてみました。

「紙の雑誌を久しぶりに触るという人いますか?」◆DSC_0193_


‐なんと半分以上の学生さんが挙手。
スタッフ一同、軽い衝撃を受けます。

さらに「紙の雑誌を買うことがある人はいますか?」という質問には数人が挙手するにとどまりました。
そもそも「紙の雑誌を読む」ということ自体が、彼らにとっては新鮮な体験のようです。
出版社として若い世代へのアプローチ方法を考えさせられます。

自己肯定感の低い日本の若者、大阪市立大の学生は?

そしてスタッフから、自己肯定感の話をさせていただきました。
ホームレス状態の方は身近な絆を失い、「ホープ(希望)」レスになっていて、「自己肯定感」が低下しています。ビッグイシューの理念である「セルフヘルプ」は、この自己肯定感を再び前向きにできる支援の仕方だと思っています。
しかし、ホームレス状態の人たちだけでなく、日本の若者の自己肯定感も低下しています。世界の比較調査で日本の若者が「憂鬱な気持ちになることがある」「将来は明るいと思えない」と答える人が多かった比較結果をご紹介。それは日本の若者に資質がないわけではなく、世の中の閉そく感や若者にやさしくない社会がそうさせてしまう。だからこそ、たくさんの体験や知識を得て「こんな生き方ありなんだ!」「こんな人生面白い」というような選択肢をぜひみつけてほしい。ビッグイシューの誌面やボランティアを通して、そういったものをみつけるお手伝いができれば…、というお話をさせていただきました。

そこで川越先生から「私からも聞いてみたいんですけど、『週に1度は憂鬱な気持ちになる人』はどのくらいいますか?」と質問すると、なんと8割以上の学生さんが挙手。

「毎日ハッピーな気持ちだという人は?」という質問に挙手したのは、数名の学生さんだけでした。比較調査の結果は、大阪市立大の学生さんたちにも当てはまるのかもしれません。

ホームレスで販売者の吉富さんが、学生さんに伝えた
「大学を卒業した後大切になるもの」とは

次に今回の目玉、販売者の吉富さんのお話です。
吉富さんの生まれから育ち、職歴、ホームレス状態になった経緯など。
こちらの記事でも吉富さんについて詳しくご紹介しています。)

ホームレス状態の人が話すのを聞くのは初めての学生さんが多かったのでしょう、みなさん集中して話を聞いてくれています。
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スタッフとの掛け合いの形で様々な質問に答えていましたが、学生さんへメッセージをどうぞ、と促されると、このようなメッセージを贈っていました。

みなさん、大学生ということで、ここまではみんな同じレールに乗ってきました。
よほどのトラブルがない限り、このまま数年で卒業します。
でもこのあとはどうなるかは人それぞれで、わかりません。
レールがなくなったあと、大切になるのは「人とのコミュニケーション」だと思います。
周囲の人とたくさんコミュニケーションをとるようにしてください。
直接相談したり、本気で話したりすること。
そのつながりは、きっとあなたを助けてくれます。

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この言葉には多くの学生さんの心に届いたようで、授業後のアンケートでも吉富さんのパートがよかった、という回答が多く見られました。

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正直、やはりホームレスという肩書きが第一印象にあって、複雑な思いがありましたが、話を聞いて、ただ素直に様々な経験をされている人生の先輩だと感じました。吉富店長、これからも頑張ってください!


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今日の話を聞いて、また明日からも頑張っていこうと思いました。
人とのつながりを大切にして生きていきたいです。

大阪にカジノは本当に必要なのか?特集「ギャンブル障害」を読んだ学生さんの感想

そして今回も「6分間リーディング」の時間を持ちました。学生さんに一人1冊のビッグイシューを選んでもらい、まずは6分間集中して読み込んでもらいます。その後ビッグイシューを読んだ感想をグループでシェアしてもらいました。

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ちなみに一番人気は「ひつじのショーン」の表紙、「ハンディこえた希望」が特集の265号
どうしてそれを選んだの?と尋ねると「ショーンが好きだから」「かわいいから」という回答が多く聞かれました。

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ページをめくった学生さんからは「被災地から」に掲載の「川内村の大運動会」を読んで「いいイベントだと思った」などの意見が出ていました。東北の被災地のことを扱うメディアは減っているなか、震災のことを風化させないために、ビッグイシューでは定期的にレポートしています。


また、261号の特集「ギャンブル障害 ― 人間破壊に至る病」を読んだ学生さんは、「カジノ法案が通って、大阪にもカジノ作るって言ってたから、気になって読んだけど、カジノ作って本当に大丈夫なんかなあと思った」とグループで話していました。自分の住む地域の問題として捉えると、読み込み方も深まっていったようです。

グループでのシェアの後、何人かの学生さんに「どんな記事を読んでどう感じましたか」という質問をすると、やはりギャンブル依存症の記事を読んだ学生さんから「僕の周りにもパチンコに行く人はいるんだけど、この記事読んで、やっぱり危ないんだと思って、僕はやめとこうと思いました」「ギャンブル依存症は個人の問題だと思っていたけれど、国にも責任はあるのでは、と思った」などの感想が聞かれました。

#特集「ギャンブル障害 ― 人間破壊に至る病」はこちらからもう少し詳しくご覧いただけます。

紙の雑誌を読み慣れていない多くの学生さんでしたが、薄くても内容がぎっしりのビッグイシューを読む体験は、アンケートでもおおむね好評で、このようなご意見もいただくことができました。

voice01
本当に内容は高尚で、知的好奇心がくすぐられる。
雑誌として面白い。
とのこと。 ありがとうございます!

学生さんからの質問「ホームレスがいなくなったら、スタッフは失業するのでは?」

最後に質疑応答の時間。吉富さんへの質問のほか、スタッフにもいくつか質問が寄せられました。「ビッグイシューのお仕事をされている人はみなさん楽しそうですが、特によかったことは何ですか」といった質問もあれば、「ビッグイシューは、ホームレスをなくすための事業という事ですが、本当にいなくなったらみなさんが失業ですよね。そのときはどうするのですか?」といった鋭い質問も。

この質問に対して、スタッフYからは「残念ながらまだまだ、ホームレス問題をはじめとして貧困問題はなくなりそうにないんです」、スタッフKからは「ホームレス問題は最も解決が難しい問題の一つだと考えている。同時に、これを解決できれば、他のさまざまな社会課題を解消していけると思っているので、そういったことに尽力したい」といった回答をさせていただきました。スタッフMが「私は複数の企業・団体の仕事をしているので、もしもビッグイシューがなくなっても大丈夫!1社に雇用されるというだけが道じゃないですよ」という話をすると、学生さんから少し笑いが漏れました。…進路の授業としてもお役に立てたかもしれません。

女子学生がポロポロと泣き出してしまったそのわけは

授業の後に、スタッフのもとにポロポロと涙をこぼしながら歩み寄る女子学生さんがいました。299号の「ホームレス人生相談」の回答に感激して胸が詰まってしまったのだそうです。
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内容は、「母が亡くなり3年ですが、母が手編みしてくれたマフラーや、作ってくれたクッションカバーなどを見ると、いまだに号泣してしまいます。親ほど私に愛情を注いでくれる存在はいないのだと改めて実感し、あまり親孝行できなかったことがすごく悔やまれます。」という39歳女性からの相談。その号の回答者は偶然にも、今回壇上でお話した吉富さんでした。
その女子学生さんにとって、グっとくる回答をした人が、目の前のホームレス状態の人だということで、余計に胸がいっぱいになってしまったようです。
(上記の相談に対し、どのような回答をしたかは、ぜひ路上にて299号をお買い求めのうえ、ご覧ください。) 授業でこんなふうに泣かせてしまったのは初めてかもしれません…。

このような内容で90分の講義はあっという間に終わり、授業後のアンケートをスタッフと先生で回覧しました。

「今回の授業はどうだったか」…回答があった92名中、53名が「とても良かった」、39名が「良かった」、「どちらでもない」「あまりよくない」「よくない」は0名という、まずまずの評価をいただきました。
また、コメント欄にこのようなメッセージもいただきました。

voice02
ちこくしたことを本当に後悔しています。
遅刻してしまったことは残念なことではありますが、我々にとってはとても評価していただいたと受け取っており、励みにします。

なお、今回の授業が始まる前にしたTweetをリツイートしてくださった方からは、このようなコメントをいただいていました。


ビッグイシューでは、高校・大学その他の団体に向けてこのような講義を提供しています。
日本の貧困問題、社会的排除の問題や包摂の必要性、社会的企業について、セルフヘルプについて、若者の自己肯定感について、ホームレス問題についてなど、様々なテーマに合わせてアレンジが可能です。
高校生には50分、大学生には90分講義、またはシリーズでの講義や各種ワークショップなども可能です。ご興味のある方はぜひビッグイシューまたはビッグイシュー基金までお問い合わせください。






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ビッグイシューについて

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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると半分以上の180円が彼らの収入となります。