Genpatsu

(2011年12月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第181号より)




文部科学省は、航空機を使って観測した放射能の広域モニタリング結果を公開してきた。自然界の放射線量率を除いた福島原発事故の影響が、空間線量率、セシウム134、セシウム137、セシウム134と137合計放射線量の4パターンで発表されている。当初は福島県内80キロメートルの範囲だったが、徐々に範囲を広げ、11月25日には、北は青森県から西は愛知、石川、福井の各県も公表された。さらなる広域の観測計画は発表されていない。

こうした放射能の拡散は、一度の放出で作られたものではないが、幾度かの放出のたびに地形に沿って風下へ流れ、雨や雪によって地面に沈着した。非常に高い放射能汚染地域が福島原発から北西にのび、転じて南西の方角に高い汚染地域が広がっている。福島では中通りと呼ばれる地域だ。

そしてそれは、那須から群馬県へ、さらに八ヶ岳連峰へとのびている。 また、北は平泉町(岩手県)あたり、南は松戸市や柏市(千葉県)あたりに汚染の高いホットエリアがあることがわかる。そこで止まったかと思われたが、さらに遠方へ、南北のアルプスのあたりに点々とホットスポットを作り出した。そして一部はこれらの山脈も越えたのだった。

これらのデータは、150~300メートルの上空を3キロメートル幅で一筆書きするように示される。地上からの放射線を観測するのでやや粗いものだが、4パターンでの表示は、広域汚染状況を視覚的にとらえられる貴重なものだ。

このほかにも、群馬大学の早川由紀夫教授(火山地質学)は、実際に地上で観測された空間線量率をもとに放射能の広がりをマップにした。火山灰の広がりを研究した手法を活用したものだ。ネーチャー誌が掲載した汚染マップはアメリカの科学アカデミーの手によるものだが、日本全国に広がった放射能マップになっている。手法の詳細説明はないが、きわめて低いセシウムの量までとらえている。さまざまな汚染地図はところどころ異なる点もあるが、大きな傾向は変わらない。

放射能の濃い薄いは大きな問題だが、全国的に広がった汚染状況を見ると私たちは福島原発の出した放射能と無関係には生きていけないことがよくわかる。






伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)