Genpatsu

(2012年6月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 193号より)




原子力ムラの実態が明るみに出てきた。ムラ社会の風通しがよくなる好機が訪れたといえよう。5月24日に、毎日新聞が「4/24勉強会用【取扱注意】」と書かれた資料の表紙の写真とともに、原子力委員会が「勉強会」と称する秘密会議を開催したと報じた。

この勉強会は、原子力委員会の担当役人、経済産業省の役人、文部科学省の役人、日本原子力研究開発機構、東京電力や関西電力などの電気事業者と日本原燃などの面々で構成されている。さながらムラの長たちの集まりである。

この秘密会議はいわば裏の会合だ。表の会合は、原子力発電所・核燃料サイクル技術等小委員会。原子力委員会が設置したもので、ここで核燃料サイクル政策に関する選択肢を議論する。日本はこれまで原発で使い終わった燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、燃料に再利用する政策をとってきたが、これが事故続きでうまくいっていない上に、お金がかかり過ぎるというので、福島原発事故をきっかけとして見直すことになったのだ。

表の会合はこれまでに15回開かれたが、裏の会合は23回に達しているという。表の会合の委員である筆者は怒り心頭に発している。初めからムラで相談のうえ議論の方向性を決めていたわけだから、これでは表の審議会が成立しない。

今日に至るまで脈々と続いてきたムラ社会のしきたりではないかと疑っていたところ、04年に再処理を見直した時にも裏の会合が行われていたことも明らかになった。自民党時代には議員、官僚、電力各社といった政官財が一体となって、政策を決め事業者に有利になるような制度をつくり、事業を推進してきた。このようななれ合い、もたれあいが脈々と続いてきたのだ。政権交代後もまだ悪しき慣行を引きずっていた。

東海村の村上達也村長は、5月26日の「講演会 さようなら原発」で「原発発祥の地からの脱原発宣言」と題して講演した。原発立地自治体の中でただ一人脱原発を主張している首長だ。村上村長の話の趣旨は「中央集権的な原発は疫病神、貧乏神。もはや原発依存は時代遅れ」と明快だった。

中央集権的なムラ社会の解体は必至だ。近藤駿介原子力委員長は今後は秘密会合を開かないと公約し、 委員会のあり方を見直すと明言した。行方を注目したい。






伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)