(2012年2月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第185号より「ともに生きよう!東日本 レポート21」)






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(脱原発世界会議YOKOHAMAから)


オーストラリア、年間95基を動かすウラン輸出。先住民の〝神聖な泉〟を汚染



1月14日、15日の両日にわたり
パシフィコ横浜で開催された脱原発世界会議。
海外約30ヵ国からの100人を含め、延べ約1万1500人が参加。
ネット中継を視聴した数は全世界で約10万人にのぼった。






69を数えたブース。脱原発活動が「少数派」を返上した2日間




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(フェリシティ・ヒルさん)




「私たちの活動は小さく、孤立していると感じていました。でも、同じ活動をしている人がこれだけ多く集まったのを見て、涙が出そうになりました」

「オーストラリア緑の党」のフェリシティ・ヒルさんは、脱原発世界会議での分科会で感慨深げに語った。海外で、日本の各地で脱原発活動を続けている多くの人たちもまた、彼女と同じ気持ちを抱いたのではないだろうか。




会議のスケジュールは、実行委員会によるメインセッション、数々のもちこみ企画、福島の人たちの声を聞く「ふくしまの部屋」、子ども向けプログラム、ライブパフォーマンス、映画、写真展など盛りだくさん。日本各地のさまざまな団体によるブースは69を数えた。

会場はどこも人にあふれ、お祭りのにぎわい。脱原発活動が「少数派」を返上した2日間だったといえる。




とはいえ、感動してばかりはいられない。世界を震撼させた福島第一原発事故後も、「原子力」はさまざまなかたちで、私たちの生活を絶えず脅かしているからだ。この世界会議では、国内外の専門家、NGO、自治体代表、そして市民らが、福島原発事故の真実、原発輸出や核兵器問題、被曝や被曝労働者の現状など、原子力に関して多角的な議論を展開した。




核問題の根源、燃料となるウランの採掘もその一つだ。

「福島第一原発事故にオーストラリアのウランが関連していたことを、とても恥ずかしく思っています」。冒頭に触れた分科会「オーストラリアのウランが日本の原発の燃料に」では、「西オーストラリア非核連合」の代表者たちの口から、日本への謝罪の言葉が相次いだ。

オーストラリアは、日本をはじめ14ヵ国にウランを輸出している。1年間に原子炉95基を動かせる量だ。オーストラリアは核兵器保有に反対の立場ではあるが、輸出国のうち、アメリカ、フランス、イギリス、中国、ロシアは核兵器を保有している。

こうした態度に加え、国民が憤りをつのらせているのは、国内での原発は認めないにもかかわらず、今後もウランを輸出するという政府の方針だ。「ウラン採掘は、オーストラリアにも、世界にも、何の利益にもなっていません。毒性の食物を輸出し、相手国の人々を病気にさせたら、その食物は二度と売られることはないでしょう。ウランも同じように考えるべきです」と、「オーストラリア北部準州環境センター」のキャット・ビートンさんは語気を強めた。





オーストラリアでは現在、4つの鉱山でウランが採掘されている。北部のレンジャー鉱山は、世界遺産のカカドゥ国立公園内に位置するが、1日10万リットルもの汚染水を川に放出している事実が明るみに出た。ここから20キロ離れた町を流れる川では、子どもたちが泳ぎ、住民が魚釣りをする。しかも、この川の水は飲料水にも用いられているという。

また、ウラン産業が先住民族に与える被害も深刻だ。ウラン採掘では、泥などを洗い流すために大量の水を使うが、南部の鉱山は非常に乾燥した地帯にある。ピーター・ワッツさんは、「私たち先住民にとって〝神聖な泉〟の水がすべて奪われました。今では水を外から運んで生活しています。祖父は80年代初めから水問題で闘っています」とアボリジニの視点からウラン鉱山の惨状を訴えた。






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(ピーター・ワッツさん)





「鉱山周辺の道にはウランが転がっていて、間違って拾う人がいます。その一帯の動物や農産物を食べると、具合が悪くなるのです。だからといって、自分たちの土地を捨て、他の場所に移り住むことはできません」

先住民の文化尊重や環境保護、情報開示といった法律は存在していても、ウラン産業では特別措置が適用されるというオーストラリア。原子力においては世界中のあちこちで、こうした姑息な手段が行使されている。

原子力はこの世に現れた当初から、世界の多くの人を苦しめ続けてきた。脱原発実現のためには、国際的な連帯がどうしても必要だ。この出会いをスタートに、大きな一歩を踏み出す意義を、参加者たちははっきり確信したに違いない。 

(木村嘉代子)