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寒いほど、暗いほど、人は寄り添いたくなる?
映画の中で寄り添う人々の冬ごもり。


『僕たちのアナ・バナナ』(エドワード・ノートン監督/2000年)



『僕たちのアナ・バナナ』には、冬のニューヨークをほっつき歩く若い男が一人。誰かに聞いてほしいと、一軒のバーに向かう。

 かなり酔っている彼に、マスターも「当ててみよう。浮気がばれて、怒った女房が子供を連れて出て行ったんだろう」。ところが、彼のジャケットの下は、黒一色の神父服。神父がバーで酔いつぶれているという非常事態に、思わずマスターも身を乗り出す。

神父のブライアン(エドワード・ノートン)、ユダヤ教のラビ、ジェイク(ベン・スティラー)と幼馴染の女の子アナ(ジェナ・エルフマン)の織り成す群像劇に聞き入り、バーは「本日閉店」。今夜もどこかのバーで、物語が紡がれているかもしれない。



『キッチン・ストーリー』(ベント・ハーメル監督/02年)





『キッチン・ストーリー』は北欧の冬ごもり物語。スウェーデンの「家庭研究所」研究員、フォルケ(トーマス・ノールシュトローム)は、ノルウェー人・フィンランド人独身男性の台所での行動パターンを調査中。

派遣先のイザックじいさん(ヨアキム・カルメイヤー)とは一言も口を利かず、ただ台所に一日中陣取り、彼の行動をつぶさに観察しなければならない。

初めは寝室で調理するなど抵抗を続けていたイザックだが、あまりにも気まずい観察生活は、ある日ついに二人が言葉を交わすことで終わりを告げる。

調査そっちのけでお茶を楽しみ、語り合う二人。イザックの誕生日にフォルケが用意したケーキには、乗りきらないくらいロウソクがささっていて、思わず笑みがこぼれる。窓の外はしんしんと雪が降り積もるけれど、家の中は暖かい。



『大停電の夜に』(源孝志監督/05年)




ちょっとしたハプニングが、単調になりがちな冬の生活を思い出深いものにする。『大停電の夜に』が描くのは、そんな一夜のストーリー。

「首都圏全域が大規模な停電に見舞われました」のニュースとともに、東京は暗闇に包まれる。会社役員の夫(宇津井健)の定年をともにお祝いする妻(淡島千景)。田口トモロヲ、原田知世演じる夫婦は、ろうそくの明かりの下、家でシャンパンを開け、少しオシャレなディナーを楽しむ。キャンドル屋の叶のぞみ(田畑智子)は、今日は大忙しだ。

12人の登場人物が、それぞれの場所で停電の夜を過ごす。そこには、秘密あり、驚きあり、懐かしい再会あり・・・。ロウソクに照らされた人々の横顔にはどこか優しさが漂う。
(八鍬加容子)




イラスト:Chise Park





(2007年1月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第65号 [特集 冬、満喫—冬ごもりレシピ]より)








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