117人生相談




現在就職活動中。社会に出るのが怖いんです……



私は現在、大学3年生で就職活動真っただ中ですが、社会に出るのが怖いのです。「たくさんの責任を背負いながら人と競って生きていく」、そんな熱意やバイタリティーをもって働ける自信がないのです、能力にしても。

生きるために働かなければ、だからまず就職しなければと、いろいろなセミナーに参加してみますが、いつもどこか心に〝怖い〟気持ちがあって積極的になれません。どのような心もちで就職活動をしていったらいいでしょうか。
(女性/学生/21歳)





気持ちはすごくよくわかります。私も社会に出る時、不安はありましたもん。昭和35年に中学校を卒業して、うちは貧乏だったから高校にも行けなくてね。ただ幸いにも今と違って日本経済が登り坂の時で、金の卵とうたわれて、仕事はたくさんあった。

田舎から東京に行く「就職列車」と呼ばれた蒸気機関車に乗ってね。東京に着くまで煙でね、ワイシャツも顔も真っ黒!




15歳の私はもう、不安でいっぱいでしたよ。

でも社会に出たら、必死で仕事を覚えて、土曜日まで休みなく働いたな。若くて元気いっぱいでね。子ども心にも、お金をもらっておふくろに何かしてあげたいなと思ってましたね。
私には教養はないけれど、社会で積み重ねてきた経験は宝だと思ってますよ。遠回りしてホームレスになってしまったけど、それも社会勉強だと思えるようになったね。

一日一日を体験して思うのは、ビッグイシューを売っていてもそう。売れる日もあれば売れない日もあるっていうこと。哀しい時も楽しい時もあるっていうことですね。それは飛び込んでみなければわからない。社会がわからないから余計に不安になるっていうことですよね。




だからこの相談者の方にも、どんどん人の集まりに参加して話をして、自分をPRして、コミュニケーションを取っていってほしい。やっぱり自分ひとりで考え込むと、どうしても殻に閉じこもってしまうから。友達にも遠慮をせずに相談したらいいです。1年後、のびのびとした気持ちで社会に出てほしいと思うんですよ。

若い時は「こんなこと言ったら笑われるかな」とか思っちゃうでしょう。昔は「出る杭は打たれる」とか「能ある鷹は爪を隠す」とか言っていましたけど、今はそんな遠慮をした甘いことを言っている場合じゃない。しっかり自分のPRをして、会社のためだと思わずに自分の経験のためだと思って、明るく前向きに社会に出てほしいよね。

殻に閉じこもらず、私たちに相談をしてくれてうれしいね。本当は文字ではなくて直接伝えたいくらい。少しでも気楽になるように、言葉を伝えられるのにな、と思いますね。

(大阪/Iさん)




(THE BIG ISSUE JAPAN 第117号より)