「蟻族」とは大都市の郊外に群居する大卒の若者たちのことで、高学歴でありながら低賃金のために劣悪な環境で暮らしている。昨年9月に『蟻族』という本が出版され、社会から一気に注目されるようになった。同書は研究者が北京郊外で聞き取り調査を行い、その生活実態を明らかにしたものだ。北京だけで10万人、全国で100万人いる。
居住面積10平米以下の部屋を賃貸し、家賃の安い郊外から2時間かけて中心部に通勤する。月収は2000元(26500円)以下、家賃は月300元(4000円)というのが平均的だ。多くは地方出身者で80年代以降に生まれた世代である。
なぜ故郷に帰ろうとしないのか。故郷に帰っても就業機会が少なく、よい職に就くには地方ほどコネが必要だ。蟻族の多くは親も貧しい。そのうえ親兄弟からの期待もあり帰れない。だが、将来家を買って親を呼び寄せるという志は高い。
大都市では不動産価格の高騰が著しい。蟻族への関心が高まるなか、政府の住宅政策が問われている。
(森若裕子/参照:中国青年報、広州日報、中国評論新聞)
(2010年5月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第142号より)