(Street Sense- USA 2013年7月15日版より、著者・アンジェラ・ハービー)
ホームレスの若者の声
子供の頃にホームレス状態を経験したことのあるアメリカ大学生たちが、ホームレスの現状を変えるため米国首都ワシントンDCで自分たちの体験を語った。政策立案者と直接話しをすることで、子供たちに直接影響がある教育政策の改善が進み、かつての自分たちと同じような状況にいる子供たちが貧困やホームレスといった家族の環境から自ら抜け出すことが可能になることを願っているからだ。
大学生のスワミ君(19歳)は8歳のときにホームレスになった。母親が失業し、イリノイ州で住んでいたアパートの家賃が払えなくなってしまったからだ。
その後、次の仕事が見つかるまでふたりはホームレスのシェルターで2年間暮らした。母親が新しい仕事を見つけてからまた生活に安定が戻りしばらくは「平和な人生」を送ることができたとスワミ君は言う。けれど、彼が12歳になった年、週の児童擁護団体によって、彼は母親の元から引き離されてしまった。虐待と育児放棄の通報が入ったことによるものだった。
そのときから、2年間におよぶ「児童擁護制度をさすらう旅」がはじまったとスワミ君は言う。現在、イリノイ大学2年生の彼は自分の経験をエッセイにまとめ、その中で、7回も施設や里親が変わり、それに伴う恐ろしい経験を700件程も思い出せると書いている。
今年6月17日、スワミ君を含め、子供時代にホームレス状態を経験した13人の若者がワシントンDCにある衆議院議会のオフィスビルで開催されたディスカッションに参加し、自らの経験を語った。参加者は、「ホームレスの子供や若者の教育支援協会」(The National Association for the Education of Homeless Children and Youth)から1年半前に2000ドルの奨学金を受けた全国の大学生たちだ。
「政策立案者たちに若者の声を直接聞いてほしい」と協会の政策ディレクター、バーバラ・ダフィールド氏は言う。ディスカッションには議会の職員も何人か参加した。議会の職員たちに若者がホームレス状態に陥る原因と既存の施設や制度の欠陥について理解を深めてもらい、上司に伝えてもらうことがダフィールド氏の願いだ。
教育省の発表によると、米国では2010年から2011年の間に100万人以上の子供たちがホームレス状態を経験した。前年度と比べ、14%増加している。ワシントンDCでは2010年から2011年の間に3000人以上のホームレス状態の子供が学校に入学した。この数字は前年度と比べ22%も増加している。
教育省はホームレスの定義を「夜帰る場所がないこと、長期的にすめる生活標準に適した住居がないこと」と定めている。例えば、他人の住宅を共有(居候)している者やホテル、モーテル、トレーラーハウス、キャンプ場や緊急もしくは過渡的住宅に住む者、養護施設の入所街の者、建築基準を満たさない住宅や寝泊りのためでない場所に暮らす者などが対象となる。
「家族が貧困問題やホームレス状態にある青少年にとって、その連鎖から抜け出すために、教育は重要な役割を果たす」とディスカッションの司会役でアンカレッジ学区でホームレスの子供たちの教育を支援している、バーブ・デクスター氏は言う。
参加した学生の話はそれぞれに違うが、学生たちが自らの家族の不安定な住宅事情の原因をあらためて確認しあうと、いくつかの共通する要素があった。例えば、住宅を持つ経済力がないワーキングプアの親、片親、アルコールや薬物に依存をもつ親、刑務所に拘置されている親、健康に問題がある親、住まいからの強制退去、虐待といった「家族ドラマ」から逃げ出すための家出などだ。
「ストレスや精神的な傷の根源が家族であるとき、子供にとって助けを求められる場所は完全になくなる」とルイジアナ州立大学2年生のレーヴンさん(20歳)は語る。
「先生やカウンセラーは私たちに耳を傾けることはできるけど、私たちが抱えている問題を完全に理解することはでいない」
ノースカロライナ大学の2年生のニコラス君は、現実逃避をするためには仕事や勉強に没頭するのだと言う。「常に他のことを考えていれば、今夜寝る場所や食べ物のことを考えなくて済むでしょう?」
<後編へ続く>