若者ホームレスは「問題児」ではなく「被害者」(2/2)

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一方、恥をかきたくない、問題児として批判されたくないという理由で自分たちの生活状況や親の助けがないことなどを、教師や学校のスタッフに相談することをあまり望まなかったと告白する生徒もいた。

「10代の青少年がホームレス状態であるとき、多くの人はその少年が『問題児』であり、少年が何か犯した結果そうなったに違いないと判断してしまう」とセーラム州立大学3年生のティーナさん(20歳)は指摘する。「けれど、実際はそうではないの。私たちは親の無責任な行動や不幸な状況の被害者なのです

ホームレスの学生が高校をスムーズに卒業できる機会を保障するため、マッキニー・ヴェント・ホームレス支援法は、各州にホームレス教育のコーディネーターの設置と、すべての学校区にホームレスの教育のための連携窓口と担当者の配置を義務付けている。

いくつかの大きい地区では独自のホームレス教育プログラムを運営している場所もある、とホームレス教育国立支援センターで働くプログラム専門家、ヤン・ムーア氏は言う。この支援センターは学区と連携し、法律が各学区できちんと運用されるよう働きかける役割を担っている。

法律は学校の支援体制と成功率に重点を置いている。各州が連邦政府から得る予算は競争が激しい補助金プログラムを通じて各学区に配分される。地区のホームレス教育連携窓口の担当者は就学に伴う様々な問題を対処し、学生の出席率を保ち、学校の基準を満たす成績を生徒が得られるようさまざまな支援をする責任がある。

ムーア氏曰く、各州からの年次の成果報告をもとに各学区が法を順守しえいるかが判定され、補助金を受けている地区と受けていない地区が常に比較される。

「マッキニー・ヴェント法は、連邦政府の資金のつかない法律です。全国の学区のうちわずか約9%しか補助金を得ていない」とムーア氏は言う。「そのほかの91%の学区は連邦資金を受けずに子供たちの教育支援の負担を担っている」

ディスカッションに参加した学生の多くが、学校で良い成果を出し、大学に入学することができたのは支援してくれた熱心な教師や教育支援の専門家のおかげであるといい、親の代わりともなって擁護してくれた、と語っている。

「僕の周りには4人の教師からなる驚異的なサポートグループがありました。僕は彼女たちを4人のお母さんって呼んでいました」とウィスコンシン大学3年生のスペンサー君(20歳)は言った。

「僕がちゃんと学校に行き、良い成績を出すため、彼女たちはいつもサポートしてくれました。そして毎晩寝る場所があること、食べ物があること、必要なものが揃っている環境を常に僕に与えてくれました。僕がここまで来れたのは本当にこの教師たちのサポートのおかげです」

テキサス州立大学3年生のアイリーンさん(19歳)は熱心な進路指導カウンセラーが成績優秀な彼女に進学をするよう勧めてくれたという。けれど彼女は、他の学生たちが皆自分と同じ様な支援を受けられていないのではないかと心配をしている。

「学校が私の学力に気付いてくれて初めて、自分に自信が持てるようになった」とアイリーンさん。「けれど成績が低くて、学校で相手にされない子供たちもたくさんいます」

例えば、保護者のいない青少年は後見人がいないことでさまざまな必要条件を満たせない場合や低所得世帯向けのプログラムの利用が厳しくなるなどのケースがある。そういった状況で、成績表やその他の保護者用の書類に親の著名を鍛造した思い出を持つ子どもは多い。また、申請書の必要事項に記入をしてくれる保護者がいなかったため、ランチの無償化のサービスや大学進学のための奨学金に応募することができなかったと言う学生もいる。

「保護者がいない、そして養子縁組があるわけでもない私にはずっと『後見人』がいなかった」とメレディス大学に通う2年生のティアさん(19歳)は言う。

大学で勉強をしているけど、過去に経験してきた崩壊家庭やホームレスの記憶は学生たちの頭から離れてはいない。年下の兄弟の法的後見人を引き受けている学生もいれば、親や保護者の支援がないため、家賃や学費を払うのに大変な苦労をしているという学生もいる。だからこそ、今回ワシントンDCで開催されたディスカッションは彼らにとって、とても重要なものだった。同じ問題を抱えている子供たちにとって影響の大きい教育政策の変化を即することができるかもしれないからだ。

「議員たちに行動を起こしてほしい」とダフィールド氏は言う。「行動を起こすには知識
が必要だが、まず心を動かされることが必要です。子供達の体験談が議員たちの心を動かすのです」。

※プライバシーの保護のためStreet Senseはいくつかの名字の使用を抑えました。

【連邦法】
ホームレス状態にある子供や青少年が学校に入学する際や通学しよい成績をおさめるにあたって直面する問題に対処するための連邦法が1987年に制定された。

各州は、ホームレスの子供や青少年の教育を支援するためのコーディネーターを配置しなければならない。
各学区は、ホームレスの教育のための相談窓口を設けなければならない。この窓口は家族、学校職員、ホームレスシェルターのスタッフや、その他支援組織などが最初に相談できる場所である。
即時就学の義務付け。たとえ、学校の選択や配置に関する争議があったり、出生証明書や予防接種の記録といった必要書類がなくても、子供や青少年の即時就学を許すこと。
各州の学力基準に達するために必要な教育サービスを受けられるよう保障すること。
初等中等教育法に基づき、その年に割り当てられるファンドの額によって金額が決まり、連邦政府より各州に配分される。