【連載第10回】金利の差は貧富の差 岩田 太郎

中西部のセントルイス大都市圏へ出張した。昨年、白人警官による丸腰の黒人少年射殺事件や抗議の暴動が起こった貧困地域のファーガソン市を含むエリアだ。

目的は、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策を実行する12の地区連銀の一つ、セントルイス連銀の取材だ。仕事を終え、筆者は満足してセントルイス市のダウンタウンにある連銀の建物を出た。

そしてふと、大通りを挟んで連銀の斜め向かいに目を向けた時、たまげた。そこには「ペイデー・ローン」、日本で言うヤミ金の店舗があったのだ。

銀行向けゼロ金利政策を象徴する連銀と、個人向け高利貸しが、そこに共存していた。

想像してほしい。京都市の河原町二条にある日本銀行京都支店の斜め向かいに、ヤミ金の事務所が堂々と店を構えているようなものだ。

ペイデー・ローンが連銀のすぐそばで繁盛する大きな理由の一つは、セントルイス大都市圏の黒人失業率の高さだ。ファーガソンでは全国平均の3倍にもなる。

社会不安や暴動の一因だ。

ペイデー・ローンは失業などで貧しく信用度が低い借り手に、最高年率400パーセントという法外な金利を課し、脱出できない慢性的な借金地獄に閉じ込める。

そして顧客たちから年間90億ドル(約1兆円)を利息や手数料として収奪する。

だが、貧者にとって天敵であると同時に、銀行が提供しないローンを組成し、それなりの社会的役割を果たしている。貧困者の車が故障して急に800ドルの修理代が必要になった時、用立てしてくれる金融業者はペイデー・ローンしかない。

一方で、信用度の高い個人は銀行から年率10%以下で借金できる。金利の差は貧富の差だ。

たとえば、金融危機の主因は信用度の低い層の住宅ローン破綻だった。当初低く設定されていた金利が、どんどん高くなる仕組みのローンが多かったからだ。

金利を据え置けば、危機は最小限で済み、差し押さえでホームレスになる人も少なかっただろう。

貧者から搾取すればするほど、金融も社会も不安定化する。だが、利潤追求の辞書に、「適正金利」や「社会持続性」の文字はない。