米国の労働者の3人に1人が「フードスタンプ」を受給。その数、5000万人

『ビッグイシュー日本版』226号より、オンライン編集部が気になった「読みどころ」をピックアップいたします。

米国で進行する「フードスタンプ」

特に目を引かれたのは、堤未果さんが登場する連続スペシャル企画で紹介されている、米国のフードスタンプ(SNAP [Supplemental Nutrition Assistance Program])の現状。米国ではフードスタンプの受給者が増えつづけ、その数は5,000万人を突破し、人口比で14%以上、労働者の1/3が恩恵を被っているという状態にまで悪化しています。

Lee Lawson/iStockphoto

堤さんは、増加の背景には米国の巨大企業の存在があると指摘します。

アメリカでは現在、食の産業が一つの大きな利権になっています。SNAPの支給額は一人月1万円前後。一食120円位しかないために受給者は価格が安く満腹感がある加工食品やファストフードを購入してしまいます。

すると大手加工食品業界や安売りスーパーがものすごく儲かる。たとえば業界最安値を掲げるウォールマートは、SNAP食品購入先の50%以上を独占しており、毎月税金から巨額の利益が流れ込んでくる仕組みです。

そして、フードスタンプが進行する背景には、生産者と消費者を搾取する、貧困ビジネスともいえるメカニズムがあると、堤さんは喝破します。

フードスタンプを増やすということは、国民を死なないギリギリのところでキープしておくこと。貧困状態にある人々は生きるのに精いっぱいになり、政治に口を出す余裕がなくなってゆく。そして業界も潤うという構図です。

(中略)この数十年に食の業界に何が起こったのかの背景を知らないと、単純に『アメリカは福祉が充実している』と思い込んでしまうでしょう。

フードスタンプ導入の議論は日本でも始まっており、このテーマについてはぼくら市民も知見を深める必要があるでしょう。