<part3「不十分な日本の「住宅政策」と「ハウジングファースト」という考え方」を読む>
山谷の年越し風景
荒川:山谷での取り組みを報告させていただく、荒川と申します。まずふとんプロジェクトとの関わりからいうと、渋谷とか池袋に比べると、三谷は薄い関わりという印象があります。三谷では年末年始、寝床を作って寝る場所がない仲間が寝られるようにしているため、ふとんPの個室シェルターなどを利用する必要性があるかというと、そこまでないんじゃないか、という声があり、関わりが薄くなりました。
他には、シェルターに泊まる人と、私たちの寝床に泊まる人を分けることがむずかしい、ということもありました。シェルターに泊まる人を私たちがフォローできるのか、シェルターのある池袋に行って確認ができるかというところで、やはり難しいので関わりが薄くなりました。
さて、具体的に三谷の越年はどんなことをしているかというと、まずは寝床づくりですね。毎晩20〜35人くらいの方が寝ていました。もともと肉体労働をしていた方がほとんどなので、寝床、食品を置く棚なども手作りして、いつのまにかできている感じです。
お昼ぐらいから準備して、夕方くらいには寝床が完成しています。三谷ではあまり立場が関係なく、みんなで作ってみんなで食べようと言うことでやっています。今回は高校生が参加して共同炊事をしてくれました。食材は全国から送られてきます。または、私たちが直接農家に行って食材を貰ってきます。
大晦日に行っているさすらい姉妹の芝居です。三谷で見る芝居は味わい深いので、みなさんもぜひ今年の年末年始に来ていただければと思います。
芝居が終わると年越し蕎麦を作って、みんなで食べます。そして乾杯で新年を祝います。来年もみんなで生き抜くぞ!とかけ声をして、年末を締めくくりました。
三谷の特徴として、餅つきの数が多いです。4日間連続餅を付いて乾杯をするということになりました。みんなで餅をついて盛り上がります。集団申請ということで、6名の方が生活保護の申請に行きました。たくさんの方に支援をいただき、三谷の越冬活動は終わります。以上で報告を終わります。
池袋の越年越冬活動から見えてきたこと
中村:世界の医療団の中村と申します。「TENOHASHI」のボランティアとして、池袋の活動報告をします。
池袋では12/29〜1/3まで連日炊き出しを行いました。年末年始の特別メニューとして、大塚モスクさんの本格カレー、餅つき、年越し蕎麦、野菜たっぷりの汁掛け飯、また衣類、ホットドリンクの配布などを行いました。
ボランティアの方が鍼灸、マッサージ、医療相談、隔日の夜回りを行いました。東口、西口にある公園などを回って、安否を確認して、必要な方にはシェルターに入っていただきました。
利用者でいうと、毎日平均で夕食140人ほど、昼食に70人ほどとなりました。越冬期間は昨年を上回る水準となりました。見かけたことのない若い方も夕食の時に目立ちました。年末に仕事の契約が切れ、同時に住まいを失った方、貯金がなくなって炊き出しにきた方もいらっしゃいました。
今後の課題について、最後にご報告させていただきます。炊き出しというのは路上脱出の「入り口」としての役割があります。しかし、社会的資源がないと支援につなげられないという課題を感じています。今回のような連携活動を継続、発展していきたいと考えています。
強制退去も行われた渋谷の越年越冬活動
室田:みなさんこんばんわ、普段は渋谷ののじれんで活動している室田といいます。よろしくお願いいたします。
闘争という言葉を使っているんですが、その辺からお話をしようと思います。年末年始に行政が何もしないというときに、もはや生きることが戦いであると、そういう想いを込めてこの言葉を使っています。私たちの団体もこのような横断幕を掲げて活動していました。
29日の夜、渋谷区の公園はだいたい鍵を閉めます。宮下公園もそのうちのひとつです。その地域で炊き出しをしたところ、鍵が閉められないので出て行かないと困ると、最終的には警察官を動員され、強制退去されました。法的根拠を求めていますが、回答はありません。
白菜を切っているところですが、ここの野菜は農家さんから送ってもらうものや、八百屋の売れなくなった残りを車で回収していただいています。
加えてモツです。これは三谷地域からわけていただきました。これをゆがいてみんなで切って、できたのはモツ煮丼です。非常に美味しくできました。こういった楽しみをもつというのが渋谷のモットーです。
ふとんPとの連携についてですが、渋谷からのシェルター利用者は4名です。それぞれ何らかの病気を抱えている方が多い、と。4名のうち、2名の方はまだ渋谷の路上にいます。一人の方は生活保護を申請して、状況把握ができていませんが、おそらくまだつながっています。最後の方は生活保護を受けて通院を最下位して、近々手術を受けるとのことです。
4人の方は全員、なんらかの病気を抱えていました。渋谷の場合だと腰痛、アルコール依存症、高血圧など身体的な者から、自閉症、統合失調症など精神的なものまであります。そのなかには、最初から「体の調子が悪い」と相談に来た方だけではありません。
とにかく辛いので避難してきて、そこから我々で医療につないだというケースもありました。うまくいったケースでは、医療相談によって、シェルターで安静に過ごし、命をつなぐことができました。
複雑なケースでは、結局体力をシェルターで回復して医療相談ができましたが、路上に戻ってしまいました。なぜ生活保護を利用しないのか、「働けるうちは国にお世話になりたくない」「厳しい管理になじまない」といった方がいらっしゃいます。
生活保護を選ばない方でも受け入れていく、というのが今後の課題です。通院ではない病院とは異なる医療体制の充実もひとつです。いずれも行政の役割なので、働きかけを行っていきます。
のじれんでは毎週土曜日、毎週やっています。渋谷区の美竹公園で活動しています。ぜひ一緒にやっていきましょう。
「ふとんで年越しプロジェクト」報告会レポート
1:年末年始の閉庁期間の生活困窮者、路上生活者を支援する
2:路上生活者支援のあるべき「前提」、個室シェルター、閉庁期間の生活保障の担保
3:不十分な日本の「住宅政策」と「ハウジングファースト」という考え方
4:山谷、池袋、渋谷でホームレスの人々はどのように年を越えたのか:越年越冬活動・現場からの報告
5:ボランティア医師・看護師が見た、年末年始の路上生活者支援の現状
6:路上生活者支援の新たなキーワード「ハームリダクション」「ハウジングファースト」「ネットワーク」