(2014年3月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 235号より)
過去最悪。タンクの天井からあふれた23兆ベクレルの汚染水漏れ
事故を起こした福島第一原発で、過去最悪といわれる汚染水漏れが起きた。発端は2月19日午後2時頃。汚染水を貯めていたあるタンクで、水位が高すぎると警報が鳴った。その時、別のタンクに汚染水を送る作業が行われていたのだが、当該タンクでは何も行われていなかった。そこで、東電は計器の故障と判断。東電の担当者が念のため午後3時にパトロールして異常のないことを確認したという。ところが、夜11時過ぎに協力作業員がパトロール時に漏れを発見した。汚染水が天井からあふれていた。
タンク上部には雨どいが設置されており、雨水が地上の堰の外に直接出るように排水管が付けてある。タンクの周りには、漏れた汚染水が外へ出ていかないように堰が設置されているが、汚染水は天板部から漏れ、雨どいと排水管を通って堰の外へ直接出た。
漏えい量は100トンに達し、サンプル調査の結果、汚染の度合いは1リットル当たり2億3千万ベクレル(ベータ線を出すすべての放射能量)だった。汚染土壌を回収したというが、地下水汚染は避けられず、いずれ汚染は海へ続く。
警報時にただちに現場に行きタンクを確認し、連結した次の移送先となるタンク水位をチェックするなどしていれば、漏えいは避けられた可能性がある。汚染水はすでに約48万トンに達しており、日々400トンずつ増え続けている。汚染水と格闘する中で、わざと満水警報を切り、さらに汚染水を入れることも常態化していると、ずさんな管理を指摘する現場の声も聞こえてくる。
さらに不可解なことが起きている。タンクの弁は3個付いている。19日の午前中にはこのタンクに汚染水が送られるように開いており、漏えいが発見された時点では弁は正常に閉じていた。このことが撮影されていた写真でわかった。作業ミスかもしれないが、故意による疑いも出てきたという。きつい汚れ仕事に作業員の不満が溜まっていることは容易に想像できる。不満がこのようなかたちで出たとすれば、事態はいっそう深刻だ。
伴 英幸(ばん・ひでゆき)
1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)