(2013年7月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 219号より)
避難、失業、病気、子育て、セクハラ。
シングルマザーの多様な体験、『3.11後を生きる』
被災したシングルマザー11人のインタビューと手記をまとめた冊子『3.11後を生きる』が発行された。
「子どもたちの話を聞いてくれる人がほしい」「避難生活と夫のDV。子どもを連れて何ヵ所も避難した」……など、子どもとともに自宅再建や避難生活、被災者支援などに取り組む被災3県の11人の生の声が詰まっている。
福島県の原発近くで、子ども3人と両親の6人暮らしだった坂井たまえさん(仮名)は、震災後、家族と東京に避難したが、失業した。都内の物価も高く、2011年暮れには病気になって生活が激変。16歳の長女は精神的に不安定になった。のちに相談できる仲間を見つけて、精神的に楽になったという。「夫に振り回されない利点はあったが、自分一人の決断で決めることがストレスと感じることもあった。それでも自分の決断は正しかったと思うし、後悔もない」と結んでいる。
娘と都内に自主避難した、ましこりかさん(つながろう!放射能から避難したママネット代表)は、「故郷を汚され、失った私たちがこれから立ち上がるために必要な力の源は、自分を愛し自分を信じることから始まるような気がする。幼い子どもたちが胸を張って上を向いて生きていけるように温かい社会に転換することを願う」と綴っている。
震災後の避難所でのそれぞれの体験も、漫画とともに紹介されている。ざこ寝が続く避難所で夜間、知らない男性にセクハラに遭いそうになった人の例から、女性や子どもが安心できるスペースづくりへの提言がなされている。母子避難の経済的問題や家族間のコミュニケーション欠如なども具体的に取り上げている。
冊子をまとめたNPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむの理事長、赤石千衣子さんは、「災害でシングルマザーが抱える問題は多様で、自ら声をあげにくくなっている。今回の冊子は、厚労省や福島県にも提出しており、今後の政策に生かしてもらいたい」と話している。
同ふぉーらむは間もなく同じシングルマザーに現状を聞く二度目の定点インタビューを実施し、行政などによる支援の現状と課題などを広く伝えていくことにしている。
(文と写真 藍原寛子)