自分の国にいながら、主権も土地も失い、その存在が「違法占拠者」にされたホームレス先住民、それが「楽園」ハワイの現実だ。
サモア系の元力士KONISHIKI氏の出身地、オアフ島南西部の人口4万人のワイアナエ地区は、低所得のハワイ人が住民の大多数を占め、「貧しくて危険な地区」として知られる。
最近まで同地区の一軒家の家賃は、200〜300ドルが相場だったが、日本・中国・韓国などからの投資マネーが流入し、一挙に数倍の1000ドル以上まで上昇。
家賃の払えない数千のハワイ人がホームレスになり、幼い子どもたちも公有地のビーチでテント生活を強いられている。
しかし、州法や市条例で、そのような行為は「違法占拠」とされ、たびたび強制立ち退きが執行される。
筆者がハワイに住んでいた1980〜90年代、「ここは、我々の土地だ!我々の国なんだ!」と叫びながら、警察の護送車に放り込まれる手錠姿のホームレスのハワイ人の姿を何回もテレビで観た。
今も、それは繰り返されている。
ハワイ人にすれば、意思に反して1898年に米国に併合され、白人や日系人などの外国人植民者が、国の本来の主人の存在を違法化している本末転倒と映る。
ハワイ諸島を1810年に統一したカメハメハ大王は、「路上に臥すすべてのお年寄り、女性と子どもを安全な場所に収容せよ」との法律を公布した。この条文は併合後も残り、ハワイ州憲法第9条に規定されている。
土地も家も食べ物も、すべてを分かち合って暮らしてきたハワイ人にとり、当然の規定だ。共有制のため、人と土地、人と家、人と人の関係は切り離せなかった。
ところが、1848年に白人宣教師団の勧めで、「マーヘレ」と呼ばれる土地の私有化が断行される。規制緩和や自由化で経済が発展し、人々が幸せになるという、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)と瓜二つの甘い囁きだった。
結果は、資本主義的な白人への富や土地や権力の集中と、ハワイ人の国の喪失だ。ハワイ人ホームレスの強制退去はハワイ州憲法違反だが、人と土地、人と家の関係性を切り離す資本主義の当然の帰結なのだ。