日本では「クリーンなエネルギーで電力がまかなえたら理想だけど、無理でしょ?」とハナから諦めている人も多いが、チリは2014年にエネルギーアジェンダを定め、国を挙げて再生可能エネルギーを生み出しつつあり、四国電力などの日本企業も30年規模の事業として関わりを持っている。(参考)
ラテンアメリカの太陽光発電を牽引しているチリで、2017年1月、国内初の市民による太陽光発電所が始動した。
人口約1800万人、チリの国内電力の55%以上は化石燃料の火力発電で、ほとんどを輸入に頼っているが、この状態から抜け出すべく、今後4年間で合計90億ドル相当の再生可能エネルギーを新たに作り出すプロジェクトを進めている。ミチェル・バチェレ大統領による「2014年度エネルギーアジェンダ」では、海外投資家、巨大電力企業、鉱業、農業、学界なども巻き込む内容だ。
そんな中、チリ中部、サンティアゴ郊外の街ブインにて2017年1月から商業運転を開始した「ブイン1太陽光発電所」は、生産から収益までの過程に、市民の存在が組み込まれている。
「ブイン1」は発電量10KWと小規模だが、建設に必要な資金約1万8500ドルを、1口77ドルの株を240株用意することで賄った。株を購入した「市民サポーター」は、年間インフレ率に2%足した利益を受け取ることができる。また、生産される電気の75%をプロジェクトに賛同する顧客が購入し、残りを国の送電網に販売するというモデルだ。
「私たちの目的は市民が太陽光発電の恩恵を受けられるようにすること、エネルギーの民主化プロセスに参加できる道筋を作ることです」と、プロジェクトを支援する「ポリティカル・エコロジー研究所」代表のマニュエル・バケダーノは言う。
「ブイン1」の太陽光発電パネル。
ここで作られた電気の主な購入者は「持続可能技術センター」と一般家庭だ Photo: Orlando Milesi/IPS
チリは現在、電力の26%を水力発電で賄っているが、「ダムの増設を望まない市民からの強い圧力を受け、太陽光エネルギーの開発が進められてきた」という。「ただ、これまでの太陽光発電は大規模事業に集約され、その主な供給先は鉱業分野にとどまっていました」
今後、同様の取り組みが、チリ北部のサンペドロ・デ・アタカマ、中部のクリコ、南部パタゴニア地方のコイハイケでも実施される予定だ。パートナーには、エンジニア、ジャーナリスト、心理学者、農家、中小企業家、さまざまな地域の先住民コミュニティが名を連ねている。
チリ北部の先住民コミュニティ出身で、現在はサンティアゴから北に400kmのオバエ市に暮らす農夫のディオニシオ・アンティケラは、一般市民や貧しい者でも参加できる点に賛同し、「ブイン1」のために1株購入した。「この取り組みにはたくさんの参加方法がある」と電話で語ってくれた。
チリの太陽および風力エネルギーは、実は以前からコストについて競争力を高めてきたのだとリオデジャネイロ・カトリック大学電気工学部のデビッド・ワッツは言う。「今や、ラテンアメリカの再生可能エネルギーランキングにおいて、チリは太陽光発電で1位、風力発電で2位に入っています。国の法律が変わり、地域ブロック単位でのエネルギー供給が可能となったこと、新しい再生可能エネルギーと従来の送電網への同時接続が可能になったことも追い風となりました」
2016年12月14日に出された米ブルームバーグと米州開発銀行(IDB)によるレポート「CLIMATESCOPE」は、ラテンアメリカ諸国で最もクリーンエネルギーに投資している国としてチリの名を挙げた。他地域を入れても、指数上チリを抜いたのは中国のみ。中国は世界の新興経済国を対象にビジネス機会を探っている。 バチェレ大統領はレポートを受け、こうコメントした。「チリのエネルギーミックスに変化を起こそうと宣言したのが2014年。今では、クリーンで持続可能なエネルギーに向けて順調に前進していると胸を張って言えます」
(Orlando Milesi,Courtesy of Inter Press Service / INSP.ngo)
※上記は2017-05-01発売の『ビッグイシュー日本版』310号(SOLD OUT)からの転載記事です。事務所に在庫はございませんが、路上の販売者の手元には残っていることがありますので、お気軽にお声掛けください。
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