台湾、アジア初の脱原発国家へ。フランス、大統領が小型炉の開発をアピール

 COP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)開催中の2021年11月9日に、フランスのマクロン大統領は国内原発の新建設と将来に向けた小型炉の開発をアピールした。これを大きく報道した日本の主要メディアの記事は、次期大統領選挙をにらんで原発に積極的な右派を意識した政治的な意図を指摘していた。

仏、フィンランドや中国に輸出
設計そのものに事故原因!?

 フランスは原発依存度が7割にも達しており、一気に再エネだけによる二酸化炭素削減を達成することは困難かもしれない。原発新設で考えられているのはフランスで開発した欧州型原発(EPR)6基。しかし、この新設が可能だとは考えにくい。フランスがフィンランドに輸出したEPRは05年に着工したが未だに建設中であり、主契約者のフラマトム社は裁判で訴えられている状況だ。また、国内のフラマンビル3号炉は07年に着工したが、こちらも運転に至っていない。

 さらに問題が発生した。中国に輸出したEPRで燃料破損を起こし放射能漏れが起きたのだ。21年6月に起きた広東省の台山原発事故で、放射性のガスが環境に漏れ出た。燃料棒5本が損傷したと伝えられているが、損傷の広がりなど詳細はわからない。これについて最近、フランスのNGO団体に内部からの告発が届いた。同団体が公開した情報によれば、事故原因は原子炉の設計そのものにあるという。燃料棒は大量に作られるため、割合は少ないながら製造ミスによって穴あきや亀裂が起こることがある。ところが、原子炉の設計となると、事態は深刻だ。中国のトラブルは自国フランスの原発にも、またフィンランドや英国にも波及していく。目下、原因究明と対策を検討中だが、新設どころではなくなる恐れがある。マクロン氏のアピールには現実味がないのだ。

日本製の台湾第4原発
機能試験中に火災発生

 フランスのアピールとは正反対に、台湾が第4原発の廃止を決めた。12月18日に国民投票が行なわれ、同原発の続行についてNOが多数を占めた。問いは「第4原発の運転に賛成か否か」。賛成380万票に対して反対426万票。国民投票は4案件あり、エネルギー関係ではこのほかに、サンゴ礁の保護が否決されLNG(液化天然ガス)基地の建設にゴーサインが出た。

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 第4原発は日本から輸出された原発だ。電気出力157万kWの2基の計画で日立と東芝が1基ずつを建設、発電機は三菱重工が担当した。「日の丸原発」と言われているゆえんである。ただ、日本は台湾と原子力協力協定を締結していないので、米国GEが受注して日本に丸投げする形式がとられた。

 第4原発の経緯をたどると、戒厳令(1947~87年)が敷かれていた国民党時代に建設計画が浮上。地元住民たちが激しい反対運動を展開し、県レベルや政党レベルでの反対が長く継続的に続いた。戒厳令が解かれ、民進党が政権を奪取した2000年に中止が決定された。しかし、憲法裁判所が既に予算措置がされていることを理由に中止は違法と判断し、建設は続行。工事は完了したが、機能試験中に火災が発生するなどのトラブルが起きていた。

 政権に返り咲いた国民党の馬英九総統が14年に1号機の稼働凍結と2号機の工事停止を表明した。その後、現在の蔡英文総統(民進党)が稼働中原発を含め25年までに全基廃止という脱原発国家(反核家園)を目指す政策を決定。稼働していた6基のうち、すでに3基が停止した。今回の国民投票で、脱原発はいっそう確実なものとなった。アジアでは台湾が最初の脱原発国家になる。
(伴 英幸)

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(2022年2月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 424号より)

伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけに、脱原発の市民運動などにかかわる。著書に『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)
http://cnic.jp/