日本で多重債務のある人は120万人を超えるという。収入減などで「生活費の補填に」と借りはじめたのをきっかけに、返済しきれず借金を重ね、次第に首が回らなくなる人が多いようだ。借金問題はなかなか人に言いづらいかもしれないが、早期の相談が重要である。
「お金の悩みについて、もっと気軽に話せるようになってほしい」ーー独ハンブルク市内にある社会事業団体ディアコニーで債務カウンセリング長を務めるカトリン・シュテルンベルクは語る。『ヒンツ&クンスト』(ドイツ・ハンブルクのストリートペーパー)が話を聞いた。
ー 債務問題のカウンセリングを受けるのは大変では?
カトリン・シュテルンベルク:借金問題を抱えるのは恥ずかしいことだと思われています。相談の電話を掛けてくる人も、最初はあまり積極的に話そうとしません。なので私たちは「こうして行動を起こすのは素晴らしいことですよ!」と励まします。しばらく話すうち、羞恥心が薄れ、安堵するのが伝わってきます。きっと、長い間一人で悩み苦しんできたのでしょう。
ー 相談者はどういう人が多いのですか。
貧困に苦しむ人たちが主ですが、コロナ禍以降は、非正規労働者や自営業者からの相談も増えています。
ー 借金を抱える主な原因は何ですか。
失業、病気、大切な人を亡くした、離婚などです。
yamasan/iStockphoto
ー 以前、相談者の借金問題を解決するテレビ番組があり、お金の管理をうまくできない人がこんなにも多いのかと知りました。
散財が原因で借金を抱える人は全体の約8%ほどです。
それよりも、病気や失業といった不測の事態により借金を抱える人が45%を占めます。
ー カウンセリングでは何から取り掛かるのですか。
まずは正確な借金額を明らかにするため、借金に関する書類をあるだけ提出してもらいます。そして、相談者と一緒に解決の糸口を探って行きます。ソリューションは個々人の状況によって異なり、万人に適用できるわけではありません。
ー 今はアプリで簡単に支出を記録することができますが、お勧めしますか。
今どれだけお金が残っているかを正確に把握することで、「ああそうか!」と気づくこともあるでしょう。「何とかなる」と分割払いにして、支払えなくなる人が多いのです。まずは、家賃、光熱費、水道代の支払いを優先すべきです。たとえ当座預金が凍結されても、手当を差し押さえから守る方法はあります。
ー 借金返済の目処が立たない人は自己破産を申し立てることができ、ハンブルクでもこの手続きをする人が増えています。これはどう捉えればよいのでしょうか。
破産申告は最後の手段ですが、必ずしも悪いことではありません。2020年に破産法が改正され、手続き面もいろいろと見直されています。破産手続きが完了すれば、相談者は負債の重荷から解放されます。
ー 借金に苦しまないために、何ができますか。
よく「お金の話題は避けなさい」と言われますが、私からすると、お金について話すことはとても大切です。教科書的なアドバイスでは、手取りの3ヶ月分を貯蓄するようにと言われますが、「月の半ばには金欠だ!」と言う相談者には現実的なアドバイスではありませんよね。自分の収入と支出をしっかり把握すべきです。
By Simone Deckner
Translated from German by Lisa Luginbuhl
Courtesy of Hinz&Kunzt / International Network of Street Papers
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