伝統✕ファッション✕社会貢献の形。1万5千点を販売したスコットランドの「ホームレス・タータン」とは

日本でもなじみの深い「タータン・チェック」は、スコットランドが発祥の地であることをご存じだろうか。多様な色や線を組み合わせたデザインは、一族や学校、地域、企業で専用の柄を持つこともごく一般的。スコットランドの歴史や人々の誇り・アイデンティティを表す大切なもので、タータン専門店もたくさんある。

様々なタータンチェック/iStockphoto

そんな専門店のひとつ「スランジ・キルト」は社会貢献活動にも熱心だ。同社が2018年に発表した「ホームレス・タータン」シリーズは、2020年に当時のスコットランド首相、ニコラ・スタージョンがフェイスマスクとして着用したことで注目が高まり、1万5千点の売り上げを達成した。シリーズ商品の売上の20%がホームレス支援団体シェルター・スコットランドに寄付される仕組みを考案した創業者のブライアン・ハレーに国際ストリートペーパーネットワーク(INSP)が話を聞いた。

「ホームレス・タータン」シリーズ
https://slanjkilts.com/news/homeless-tartan-range

INSP: スランジ・キルトの創業について教えてください。

ブライアン・ハレー:INSPの設立と同時期(INSPが1994年、スランジ・キルトが1995年)に起業しました。ずっといつか自分でビジネスをしたいとの思いがあり、他のビジネスを立ち上げたこともありましたが、洋服への強い関心と、スコットランドが生み出したタータン柄への強い思い入れから、スランジ・キルトの創業に至りました。常に新しいデザインを取り入れ、タータン柄を現代風にアレンジし続けています。

「ホームレス・タータン」シリーズを製作するきっかけは?

人々がモノを買って、そのお金の一部が慈善団体に寄付されるという取り組みは比較的取り組みやすいのですが、それにふさわしい商品を見つけ出せるかどうかが肝です。ホームレス問題について人々の意識を高め、寄付を集めるには、私のバックグラウンドであるタータン柄のアイテムが一番の方法だと感じました。

ストリートペーパー事業とのつながりについて教えてください。

『ビッグイシュー』誌は素晴らしい取り組みで、雑誌の購入をはじめ、何らかの方法で支援したいと考えています。弊社はビッグイシュー誌に何度も広告を出していたのですが、次の段階として、タータン柄アイテムの商品開発でサポートすることにしたのです。現在、私たちの商品はビッグイシューのオンラインストアでも販売しています。

THE BIG ISSUE UK SHOP – SLANJ
https://www.bigissueshop.com/vendor/slanj-scotland

2024年6月には、INSPのオンラインイベント*に合わせてホームレス・タータンの新商品をデザインし、売上の一部をINSPに寄付してくださいました。

こうした取り組みを通して、できるだけ多くの寄付金を集められたらと思っています。ホームレス・タータンに少しアレンジを加え、色づかいも変えたデザインにしました。現在、ビッグイシュー・ノースとタータン柄の靴下が売れるたびに、ホームレス状態にある人に新しい靴下がプレゼントされる仕組みはどうかと検討を進めています。

*Changing the narrative on homelessness and poverty

ホームレスや貧困問題へのまなざしを変えるため、どんなことができるでしょうか?

話題をどんどん繰り広げる必要があります。ニュースで取り上げ、一般の人の目につくようにする。大半の人にはちゃんと住まいがありますが、世の中にはそうではない人たちがいる。そんな人たちを何かしらの方法で助けることができればいいですよね。なので、話題にしていくことが大切で、そういう点でINSPの活動は素晴らしいと思います。

世界中に同じような考えをもつ人々がいて、活動をつくり、他の国のストリートペーパー事業にも活動を広げていくことが大切です。私自身。INSPから連絡をもらうまで、こうしたネットワークがあることを知りませんでした。存在を知った今、私なりにできる方法で活動をサポートしていければと考えています。

Photo:Slanj Kilts

変化を起こす上で、今回のようなイベント開催がどんな役割を果たせると思いますか?

人々の関心を高められます。話題にすればするほど、何かできることが見つかるはずです。皆で力を合わせ、路上生活から抜け出せるよう支援し、そうした人の声をしっかりと届けていきましょう。問題を解消できるよう、挑戦を続けていくことが大切です。

タータン柄のアイテムに明るい差し色を使うようにしていると話されていましたね。

グレー地を基調とし、そこに明るい色を足していくことで、気分が高まるデザインを心がけています。気分が冴えない日が続いても必ず素敵な瞬間は訪れる、ちょっとくさいかもしれませんが、そんな風に思っています。

By Niamh Brook
Courtesy of INSP.ngo
Credit:Slanj Kilts

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