里親経験者が語るアメリカの児童福祉制度における諸課題

児童福祉制度は深刻な環境から子どもを保護し、家族的なつながりを提供することを目的とした制度ではあるが、実に複雑である。この制度のおかげで人生が変わったという感動的な体験談も数多くある一方、長きにわたり、関係者たちの心に傷をもたらすなど支障を来してきた面も否定できない。

里親、キンシップケア(親族による養育)、さらに養子縁組で母となった経験者が、実体験を踏まえての課題を、オハイオ州のストリートペーパー『Toledo Streets』に寄稿した。それは必ずしも明るいものではなく、制度の不備にかかわるものもある。残念な事実だが、そうしたことも明るみに出して始めて、問題解決に向けた取り組みを進められるはずだ。

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児童の家族・親戚:官僚的な制度を利用する苦労

養護が必要な側にとっても、養護を提供する側にとっても、里親やキンシップ、養子縁組などの児童福祉制度とのかかわりを決めた家族には、数々の面談、求められる諸要件、期待されることが山積みで、相当な負担がかかる。手続きや義務を果たすため、仕事を休むこと、交通手段の確保、託児サービスの手配なども必要となってくる。また、子どもへの適切なケアに必要な支援を必ずしも受けられているわけでもない。支援を必要とする人として見られるどころか、冷たい目を向けられることもある。確かに、子どもの人生に大きな影響をもたらす厳しい判断をしなければならなかったのかもしれないが、彼らにもわが子を大切に思う気持ちはある。

「ケースプラン」は本来、よりよい支援の提供を目的としたものだが、多くの場合、ただの一般的な義務事項チェックリストとみなされている。個別の事情に合わせた支援が継続的に行われていないことで、親元での暮らしを再開しても、結局は養護施設に戻される子どもを生み出している。

キンシップケアを行う者への支援、情報、アドバイスもないに等しい。実際、キンシップケアを行っていた私たちには、研修や経済的支援を一切受けておらず、必要な情報もほぼ提供されなかった。また、親族は子どもを受け入れるか否かの重要な判断をするにあたって、必要となる情報がすべて共有されるわけではない。親戚の子どもを引き受けられるかどうか相談をされるときにも、その子どもが別の里親のもとで過ごしてきたのかどうかすら教えてもらえないこともある。中には、1年以上の月日を里親家庭で過ごしている場合もある。そこで安定した関係を築いている場合、別の場所に引き取られることが子どもたちにトラウマとなりかねない。

里親:研修の不足とコミュニケーションの課題

里親に対する研修やサポートも十分でないため、しっかりと子どもをケアできる環境が整わないことがある。里親にとって、コミュニケーションは大きな課題の一つだが、ケースワーカーによっては、うまく制度を利用し、子どもをサポートするために必要となる基本情報すら与えられていないケースも少なくない。

子どものことを最もよく理解していても、里親が話し合いの場に招かれないケースもある。招かれたところで、話し合いの余地がないこともあった。それは子どものためにならないのではと疑問を挟んでも、議論を深めるようすはなく、そもそもこちらの意見に耳を傾ける気はないのだと思わざるをえなかった。

ケースワーカー:過重な負担

ケースワーカーは過重労働を強いられている。リソース不足で、効果的かつ思いやりを持って職務をこなす支援が十分でない。担当するケース数の多さに加え、一貫した研修、精神面でのサポートの欠如、賃金の低さなどを見ると、健やかな心で思いやりをもって当事者に寄り添うことは難しいのではないだろうか。子どもが虐待を受けている悲惨な状況に目を向けなければならない、この職務ならではの現実を踏まえ、さまざまな点でもっと余裕を持って働ける環境が必要だと感じる。

裁判所任命特別弁護人(CASA):常に利用できるとは限らない
裁判所任命特別弁護人(CASA)や訴訟後見人(GAL)は、状況について独立した調査を行い、裁判所に勧告し、子どもたちの最善の利益を働きかける、いわば法廷での子どもの代弁者だ。私が関わった方々は、非常に献身的で大きな支えとなり、大いに感謝している。しかし、常にそのようなスムーズな運用がされているわけではなく、彼らの本来の役割を十分に果たせていないケースもあると聞いている。

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コミュニティ:地域全体に包括的な支援が必要

児童福祉制度には、養護が必要な子どもとその親、里親、キンシップケアを行う者たちなど直接の当事者だけでなく、ボランティアやケースワーカーなどの存在も不可欠で、彼らは皆、地域コミュニティ大切な一員である。よって、制度の利用によりネガティブなことが起こってしまった場合には、当事者だけでなく、地域コミュニティ全体に問題が生じる、ということをしっかり心得えておく必要がある。

当事者の子どもたち:「子どもの権利」が阻害されがち

この制度によって、子どもたちがつらい思いをする状況はままある。虐待が繰り返され、負の連鎖が断ち切れないとき、明らかに子どものためになっていない決定が下されるとき、安全でない環境に居続けなければならないとき、自分がよく知っている唯一のコミュニティから引き離されて一切縁のなかった人と暮らすことになるとき、住まいが変わるときにおもちゃや写真など大切にしていた物を持っていけないとき、実の家族に関する重要な情報を教えてもらえないとき。子どもたちが必要とする支援やサービスを受けられないときはもちろんのこと、養育者が子どものケアに必要となる支援を受けられない、あるいは、受けようとしないときもそうだ。養子縁組によって実の兄弟姉妹と引き離されてしまうとき、一旦養子縁組された後に、再び養護施設に戻されるとき、一般社会で生きていくための十分な支援、人脈、スキルがないまま制度から卒業する年齢になるときなど、挙げればキリがない。

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変化に必要なこと

数々の「守りきれなかった現実」。完璧な制度などありはしないが、こと児童福祉制度に関しては、その欠陥が多くの人、とりわけ非常に弱い立場にある者たちの人生を左右するだけに、ひときわ重く感じられる。だが、これらの問題点を認め、改善や見直しを行っていければ、よりよい仕組みへと変えていける可能性も十分にある。

まず、支援に関わる人材への投資を増やすことが必須だ。ケースワーカーや彼らを監督する者たちへの支援や資源の充実も必要だ。必要な研修を提供し、業務に関する手順を明確に文書化し、部署間での情報共有の促進も必須だ。

制度を利用する家庭には、個々の事情に応じた支援や指導を心がけなくてはならない。制度を利用せざるをえない親を「ダメな人」扱いするのではなく、彼らの背景やそうせざるを得なかった事情を理解する姿勢も必要だ。いい親でありたいと願いながらも、必要な支援を得られていない者たちも少なくないのだから。

子どもを受け入れる里親には、その博愛精神と知見をもっと尊重し、考慮する必要がある。現在の里親不足に対処し、長期的な関係性を築くためには、思いやりのある協力的な姿勢で、効率的かつこまめに連絡を取ることが重要である。親戚の子どもを引き受けることを決めたキンシップケアを行う者たちにも、もっと充実した支援やリソースの提供が欠かせない。子どものニーズをしっかり把握し、最善の対策を取れるようにするには、CASAとのよりよい協調関係が重要となる。

さらに、子どもの幸福を最優先にした法律整備も進めるべきだ。子どもの愛着形成をサポートし、必要な支援やサービスが確実に利用でき、安全が確保できる場合は実親とのつながりを保てるようにすることが重要である。

最後に、時間とエネルギー、そして関心を持っていただける方には、もっと積極的にこの制度運用に関わっていただけたらと願う。思いやりと理解をもって関わってくれる人材は常に必要である。関わり方はいろいろある。里親やキンシップケアとして子どもを養育することはもちろん、地域団体でボランティアをするだけでもよい。インターネット検索、または社会福祉の相談窓口に問い合わせるなどして、関連団体の情報にあたってみてほしい。

これらの変革は、決してすぐに実現できるものではない。長い時間をかけて確立されてきた複雑な制度を変えていくことは相当に困難だが、この制度にかかわる全ての人たちが必要な支援をより適切に提供できるよう、一歩一歩近づけていくことができると信じている。

By Toledo Streets
Courtesy of Toledo Streets / INSP.ngo

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