データセンターは大気汚染・気候変動、渇水、騒音、電気代上昇などを引き起こす

生成AIの台頭により、データ センターにかかる負荷が注目されつつある。人工知能、クラウドコンピューティング、暗号通貨の急成長に伴い、データ センターは現代のデジタル経済の根幹となっている。仮想および遠隔でのさまざまな体験を可能にする上で重要な役割を果たしているデータ センターだが、それらは米国のみならず、世界各地の地域社会にそびえ建つ物理的な建物である。

米国内には世界最多の4千以上のデータセンターが存在し、2023 年時点で米国の総電力の約 4.4%、約 176 テラワット時を消費したとされている。米国エネルギー省の予測では、米国のすべてのデータセンターを合わせると、2028 年までに国内の全電力の12%を消費することになるとみられている。データセンターが地域社会に及ぼす影響について、ジョージ・メイソン大学サイエンス・コミュニケーション博士過程在籍中のネーハ・グールらが『The Conversation』に寄稿した記事を紹介しよう。


国内最多のデータセンターを保有するバージニア州には600 以上のデータセンターが存在し、その 3 分の 2 がバージニア北部の郊外に立地している。2023 年、同州にあるデータセンターでは、州内の総電力供給量の約26%を消費、これは他のどの州よりも高い割合だ。科学コミュニケーション、気候科学、公衆衛生を研究している筆者らが、バージニア州のデータセンターが近隣に暮らす人々をはじめとした地域社会にどのような影響を及ぼしているのかを調査したところ、既存のデータセンターは 5 つの主要分野で、近隣住民だけでなく国全体に影響を及ぼしていることが明らかとなった。

大気汚染

通常、データセンターは24 時間年中無休で稼働し、膨大な量の電力を消費するため、大量の発電が必要となる。電力生成のために化石燃料が燃やされると、肺疾患、心疾患、脳卒中、神経疾患に影響しうる幅広い大気汚染物質が排出される。また、大気汚染だけでなく、排出される温室効果ガスにより、地球温暖化や気候変動も引き起こす。

2023 年、全米のデータセンターでは温室効果ガス排出量の 2.2% に相当する量が排出されたとされる。化石燃料の燃焼によって放出されるその他の大気汚染物質は、子どものADHDや自閉症のリスクを高めるとともに、高齢者のパーキンソン病やアルツハイマー病のリスク増加と関連しているとする研究もある*。

*参照:Association Between Ambient Air Pollution and Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder (ADHD) in Children: A Systematic Review and Meta-Analysis, Air pollution linked with increased risk of autism in children, Ambient Air Pollution and Parkinson’s Disease and Alzheimer’s Disease: An Updated Meta-Analysis

電力供給が太陽光、風力、地熱などのクリーンエネルギー由来でないかぎり、電力生成は大気を汚染するため、化石燃料を使用している発電所付近の住人は、大気汚染にさらされている。また、停電時に稼働するディーゼル発電機も大量の大気汚染物質を放出するため、データセンターで働く従業員や近隣住民に害を及ぼす可能性がある。

水の消費と汚染

データセンターではサーバーを冷却するために大量の水が必要で、世界的には2027 年までに1年あたり42 〜66 億立方メートルの水が必要になると予測されている。米国のデータセンターはすでに、工業用水の使用量で上位10 位にランクインしている。

バージニア北部でもデータセンターの水の使用量が急増している。ワシントン D.C.北西部のラウドン郡だけでも、データセンターによる水の使用量が 2019〜 2023 年の間に 2 倍以上に増加、バージニア北部のデータセンターでは 2023年、 約20 億ガロンの水を消費した。こうした需要は持続的な干ばつに直面している米国南西部のような地域はもちろん、干ばつの被害に遭いにくい中部大西洋岸地域でも、地元の河川、帯水層、都市水道システムに負担をかけるおそれがある。

騒音

データセンターが継続的に稼働しているということは、電力供給のための発電機と同様、空冷装置や冷却ファンなどが24 時間ひっきりなしに機械音を発生させることを意味する。バージニア州北部では一部の住民が、こうした施設の「機械音」に苦情を呈し、苦情が出たデータセンターの測定によると、住宅地内の騒音レベルが40~59デシベルとされている。これは約1メートル離れた人と会話する程度で、人々の聴く力や地域の騒音条例に違反するほどではないものの、人々の作業、睡眠、運動能力を低下させるとEPAが定めているレベルに近い。データセンターの騒音により睡眠や集中力が低下したと苦情を訴える人や、騒音がするため自宅の屋外スペースを使わなくなったと言う人もいる。

土地利用と地域のウェルビーイング

多くの場合、データセンターが建てられるのは、電気が通っているエリアの安価な土地で、農村地域や自然を感じられる地域などだ。そういった場所をデータセンターに転用すると、自然があるからこそできていた精神的・肉体的健康づくりの機会が減少するおそれがある。

バージニア州では、データセンター建設地付近に暮らす住民たちが、トラックの交通量やディーゼル排気ガスへの曝露が増加し、特に子どもや高齢者の呼吸器や心臓系の健康リスクになりうると報告している。こうした影響は大規模な建設プロジェクトにありがちだが、複数の小規模データセンターが集まって建設される場合にも拡大するおそれがある。バージニア州プリンス・ウィリアム郡では、開発業者が、郡の担当者によって指定された約2,400エーカーの未開発の土地でのデータセンター建設を提案しているが、空き地や農地が工業地帯に変わることで、長年、その土地とつながりを持ってきたコミュニティを混乱させる可能性がある。

エネルギーコストの上昇

データセンターでの電力需要が増えると、送電網全体のエネルギー価格に圧力がかかる。 バージニア州議会の2024年度報告書では、同州の一般的な家庭用電気料金は、データセンターの成長に伴う送電網の逼迫により、2040年までに月額が14ドル上昇し、​​37ドルになる可能性が指摘されている。これは、潜在的なインフレを考慮しないとしても、現在の平均料金より9〜25%増となる。

これら値上がりした費用は、すべての消費者が負担しなくてはならないが、経済的に困窮し、健康上の問題を抱えがちな世帯にはより大きな負担となる。低所得世帯は生活費に占める電気代の割合が高いため、負担額が上昇すると、冷暖房の使用を控えてしまい、熱中症や寒さに起因する心臓血管系疾患のリスクが増す。エネルギー、食費、医療費のうち何を優先すべきか、難しい判断を迫られることになる。

これからすべきこと

上記のように、データセンター建設により、多くの環境汚染・健康被害が予測されるわけだが、より適切な計画と設計を行えば、その被害を軽減することは可能である。データセンターの電力供給に使用する再生可能エネルギーの割合を増やすことができれば、大気汚染とそれに伴う健康被害の軽減に役立つだろうし、建物全体ではなくとも、サーバー列またはラックの冷却システムに再利用水(飲み水以外の用途に再利用される水)を使用することで、冷却エネルギーの需要が最大 29%削減できるとする研究もある。
バージニア州リーズバーグのデータセンターでは、サーバー冷却装置を再設計することで低周波音の騒音を低減させた。また、大規模データセンターが送電コストのより多くの割合を負担することで、周辺住人が電気代の高騰に苦しむ状況を防ぐこともできるだろう。

デジタル世界のインフラとしてデータセンターの存在は欠かせないだろうが、周辺コミュニティで暮らす人々の健康をないがしろにして、このインフラを拡張することは到底受け入れられることではない。

著者
Neha Gour
Ph.D. Candidate in Science Communication, George Mason University
Ed Maibach
Distinguished University Professor Emeritus of Communication, George Mason University
Luis Ortiz
Assistant Professor of Atmospheric, Oceanic and Earth Sciences, George Mason University

※本記事は『The Conversation』掲載記事(2026年6月8日)を著者の承諾のもとに翻訳・転載しています。

The Conversation
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