<2005年2月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN21号より>


不妊女性の救いか?女性の身体の道具化か?韓国における代理母

世界的にも厳しい生命倫理法成立の一方で、なお存在する「代理母」問題。逆に、それは、法成立によって地下化し、近隣諸国へと移転、国際化しようとしている。代理母を求める人、志願する人、そして契約のトラブルの実態を、洪賢秀さん(科学技術文明研究所研究員/文化人類学者)が現地取材した。


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代理母、生命倫理法成立でさらに潜行

現在の韓国で、代理母は実際にどの程度行われているのか。家系という血統を重んじる社会構造が厳として存在する中で、生殖技術の発達とともにわき起こった倫理論争と重なっているため、問題は複雑である。

古くは「シバジ(種受)」と呼ばれる特殊な代理母の制度が秘密裏に行われてきた伝統もあり、その実態は医学界も把握しきれていない。大韓産婦人科学会の「韓国補助生殖術の現況」によると、代理母は、1992年の全施術6、962件のうち14件、93年は7、887件の中で7件と少ないが、以後は統計資料すらない。

しかし、某有名不妊クリニックは、金銭目的ではない”ボランティア“の代理母の場合に限って手術を行っている、と言ってはばからない。この場合、ほとんどが姉妹間の施術である。クリニック側は、代理母の斡旋を行わないため、希望者は自分で代理母を探さなければならない。患者が代理母を連れてきても、クリニックとして金銭授受の有無を確認する手立てはなく、代理母に関する法的規制もない。患者がその費用として、クリニック側に支払う額は総額約500万ウォンから9000万ウォン(10ウオン=約1円)といわれる。

代理母の斡旋が、氷山の一角として表に出た例が、01年1月にオープンした商業目的の「DNAバンク」である。卵子や代理母の斡旋をカモフラージュするため、紛らわしい名前がつけられている。韓国人向けと日本人向けの事務所を、ソウル市内に別々で設け、同時に日本国内にも事務所を構えて業務を行っていた。これまでこの組織は、血液型や外見を依頼者と80〜90%マッチさせた卵子を提供すると主張する一方で、代理母の斡旋も行っていた。代理母となる女性とのネットワークは明らかにされていないが、人工授精の手術は協力関係にある有名クリニックで行われる。

05年1月1日施行された、アジア初の生命倫理法、「生命倫理および安全に関する法律」で卵子の売買が禁止されたため、04年12月をもって「DNAバンク」は韓国と日本での営業を中断した。代理母の斡旋業務についてはこの法律の適用を受けないが、韓国内での斡旋業務全般をやめ、第三国(アメリカまたはアジア)へ移転するらしく、今後はアンダーグラウンド化した活動となる可能性がある。


インターネットによる代理母の情報網

一方で、代理母に頼らないと子供を持てない不妊女性の間でも、最初からこの種の斡旋組織を利用することには抵抗があるようだ。極秘に頼みたい気持ちと、あからさまにビジネスにしていることへのわだかまりが重なっているらしい。とはいえ、斡旋行為がすべて法律で禁じられてしまうことへの懸念もある。もしも身近なところで代理母が見つからなかった時の最後の選択肢として、残しておきたい気持ちがあるようだ。実際、代理母の斡旋情報は、不妊クリニックで知り合った似た境遇にある女性などの間で、口コミで伝わっていく。

また、韓国で起こった医療消費者の運動の一環として、2000年3月に出発した不妊女性の集い「アギモ」は、04年12月21日時点で、11、692人の会員を擁するまでになり、インターネットを介して、不妊の診断や手術に関する知識や費用、施設ごとの手術の状況などの情報を提供している。一般公開のサイト以外に、実名を確認するなどセキュリティを徹底し、不妊女性だけが参加できる対話の場を設けている。不妊女性のプライバシーを守り、不妊治療からくる心理的・肉体的な苦悩を分かち合うためのものである。

この会では、不妊のタイプ別に小グループに分かれて、情報交換や話し合いが行われている。卵子提供や代理母を必要とする小グループで交換される情報の中には、代理母の斡旋サイトもある。卵子提供や代理母を斡旋するサイトは、会員だけの手で運営され、主に学費稼ぎのための女子大生や、事情があって経済的援助を必要とする女性などが立ち上げている。交渉は個人の間で行われる。また、代理母で妊娠が成功した場合、依頼者が妊娠・出産したように装うためのノウハウなども密かに提供されるという。これも「シバジ」以来の伝統である。


後編に続く


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