ビッグイシュー・オンライン編集部より:豊橋市で地域活性に取り組む長坂尚登さんの記事です。村落LLPがまとめた「地域おこし協力隊」の「失敗の本質」がコンパクトにまとまっています。地域おこし協力隊事業、そして日本版シティマネージャー制度(地方創生人材支援制度)に関わる方はぜひご一読ください。(提供:「愛知豊橋・長坂尚登のblog」、一部編集、掲載)


「日本版シティマネジャー」制度について

若手官僚を、地方に派遣する「日本版シティマネジャー」制度が、僕周りで話題になっています。

政府の地方創生本部(本部長・安倍晋三首相)は、官僚らを人口5万人以下の市町村に派遣し、自治体の5カ年計画「地方版総合戦略」の策定を補佐する「日本版シティーマネジャー」制度の概要を固めた。対象の約100市町村から11月末まで要望を受け付け、霞が関の官僚や大学・民間シンクタンクの研究者を1人ずつ、来年4月から派遣。規模の小さな市町村の首長をサポートさせる。

地方創生本部:官僚、研究者を派遣して自治体サポート - 毎日新聞

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PDF:http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/cm/pdf/gaiyou.pdf(編集部注:上記画像は記事執筆時点のものです。1月現在「地方創生人材支援制度」とタイトルのみ変更されています)

これを聞いて、僕が思い出したのが、昨年、村楽LLP(全国地域おこし協力隊ネットワーク)が作成した、地域おこし協力隊「失敗の本質」 という資料。

一般的に、稀に見る成功事業とされている地域おこし協力隊ですが、失敗も数多くあるようです。 僕は、地域おこし協力隊ではないですが、境遇・待遇など似た立場にあるので、書かれてあることは、自分のことのようによくわかります。

ところで、地域おこし協力隊とは?

地域おこし協力隊(ちいきおこしきょうりょくたい)は、人口減少や高齢化等の進行が著しい地方において、地域外の人材を積極的に誘致し、その定住・定着を図ることで、上記のような意欲ある都市住民のニーズに応えながら、地域力の維持・強化を図っていくことを目的とする制度である。

地域おこし協力隊 - Wikipedia

都市部の若者を地域に送り込む、という点で共通するこの地域おこし協力隊での経験を是非、若手官僚派遣で活かしてほしいです。 そして、とてもよくまとまっている資料なのに、Facebookで埋もれていたので、もったいなく、まとめてみました。

とてもきれいなスライド。Facebookページから全て見られます。

続いて、Facebookページに掲載されていた連載。


「複数の地域おこし協力隊を各集落に分散して配置する」

集落に1人で入った協力隊員は、地域おこしとは名ばかりの便利屋的に扱われて発言力も持たず、集落でのしがらみや保守的な動きの中で身動きがとれなくなってしまうケースが多々見られます。この場合、田舎の心理的距離感の近さがネガティブに作用し、協力隊員は常に監視されているような気分になってしまいます。

また、市町村合併などで広域化した自治体において、各集落に協力隊を平等に配置しようといった発想で分散させてしまうケースも多いですが、むしろ1つの集落にまとめて配置し、集中的に盛り上げて他の地域に波及させていく形の方が、結果的には上手くいっています。

村楽LLP(全国地域おこし協力隊ネットワーク)


「行政が採用・面接を行ない、地元の人が関与していない」

本来、地域おこし協力隊が担当するフィールドは地域であり、そのパートナーシップを取るべき相手は地域住民のはずです。ところが、募集プロセスに地域住民が関与しないまま、いきなり落下傘のように地域おこし協力隊が入ることが多いのが現状です。(略)

行政が採用を行なった結果、臨時職員のような扱いになってずっと地域に溶け込めなかったというような事例も散見します。地域に受け入れられない地域おこし協力隊は不幸です。

村楽LLP(全国地域おこし協力隊ネットワーク)


「地域おこし協力隊を役場に配置し、外に出さない」

事務作業自体は都市部で鍛えられただけあってよくできるために、役場のルーチンワークに組み込まれる場合もあります。

しかし最長で3年、それ以降は自分で食い扶持を稼がなければならないという大前提がありますから、任期が終わったためにその地域には定住できないという事態が現実に起こっています。(略)

理想としては、行政のロジックを理解した上で、その地域に残るための土台づくり(経済活動、人間関係、地域資源開発、販路開拓等)を進め、民間公共団体において自らの雇用が維持できるような売上げを高める努力をしていくべきでしょう。

村楽LLP(全国地域おこし協力隊ネットワーク)


「地域おこし協力隊の活動経費を行政の規定通りにしか使わせない」

地域おこし協力隊が少ない給料の中から自腹でこれらの費用を負担していたり、自分の私物を半ば業務用に提供するなどして、限られた期限の中で何とかインパクトを出していこうと奮闘している協力隊員の現実があります。

(略)地域おこし協力隊としては、なるべく行政予算をアテにせずに自由な裁量で使える資金を確保していくことが、地域に還元できるインパクトを出すことに繋がります。例えばマルシェなどに出展した際には、出展に必要な費用を活動経費にて支出した上で売上げは地域団体でプールしておくといった動き方が必要でしょう。

村楽LLP(全国地域おこし協力隊ネットワーク)


「地域おこし協力隊を都会から来た高学歴・キャリアのスーパーマンとして扱い、変な期待をする」

協力隊はエリートだからお手並み拝見してやろう、といった形で地域住民から距離を取られてしまう場合も出てしまいます。地域おこし協力隊は特別な能力を使って地域に協力する人たちだ、と捉えられて、地域住民の主体性を引き出せない結果となってしまいます。

むしろ困っている若者を助けてやろう、という風に思ってもらえるアプローチした方が、地域住民たちの自主性や持ち味を発揮してもらいやすいと思います。地域おこし協力隊は立ち上がろうとする地域住民に対して協力する立場であり、主客を間違えてはならないのです。

村楽LLP(全国地域おこし協力隊ネットワーク)


「地域おこし協力隊のミッションについて、定住することを至上命題としている」

そもそも自治体が人口増加を目指すのは、住民が1人増えれば地方交付金が数百万円レベルで増加するからであり、地域おこし協力隊もその交付金措置に乗った制度でもあるために、総務省幹部自らも定住を目指せと大号令をかけていたりします。

とはいえ世の中のトレンドとしては、2拠点居住や週末帰農といったライフスタイルの多様性が認められてきており、極端なことを言えば住民票だけその地域に置いてあれば、この定住要件は満たすことになります。

制度はあくまで制度であり、それによって誰かの人生を型にはめることはあってはならないことだと思います。自分の人生の幅や選択肢を広げていくために、制度を賢く利用していきましょう。

村楽LLP(全国地域おこし協力隊ネットワーク)


振り返って、こちらの資料(再掲)。

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ここから推察されるだけでも、

  • 各市町村に1名ずつ派遣 ⇒ 一自治体に複数人派遣してみては?
  • 現場でなく、国が公募 ⇒ 公募・面接は現場にさせてみては?
  • 総合戦略策定というデスクワークがメインっぽく、現場に出られなそう ⇒ 文書策定が地方創生?

など、不安臭がぷんぷんします。


僕はこの制度にとても期待しているので、骨抜き事業にならないことを期待しています。 そして、今はまだ5万人以下の自治体ですが、ゆくゆくは豊橋市にも手を挙げてほしいです。 少なくとも10人、できれば100人くらいの活きのいい、やる気ある、自称「俺ら、霞が関のマイノリティですから」という若手官僚が来れば、豊橋市も変わるんじゃないかな。

では!



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