『ビッグイシュー日本版』261号より、読みどころをピックアップいたします。


日本の「ギャンブル障害」者の人口は536万人。世界のギャンブル機器の64%は日本にある

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最新号の表紙は、グラミー賞を受賞した21歳のソウルシンガー、サム・スミスさん。スペシャルインタビューも掲載されています。

読みどころピックアップには、特集「ギャンブル障害 人間破壊に至る病」をご紹介します。

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厚生労働省の調査によれば、「ギャンブル障害(依存症)」者は、国内に536万人いると言われています。

有病率は男性8.7%、女性1.8%で、成人全体で4.8%にものぼる。アルコール依存症の109万人、ネット依存の421万人を大きくしのぐ。


ギャンブル障害の治療に取り組む帚木蓬生さんはこう語ります。

海外の調査によれば、米国が1.6%、韓国が0.8%ですから、日本は3〜6倍です。法律上は「遊戯」として扱われていますが、実質的にギャンブルであるパチンコ・スロットが身近な町なかにあり、世界に720万台あるギャンブル機器の64%にあたる460万台、国民30人につき1台という保有台数を誇る日本ですから、当たり前の数字だと思いますよ。


すでにギャンブル障害は精神疾患として国際的に認知されており、窃盗や放火、盗撮と同じ「衝動制御障害」の一種として位置づけられています。

70年代から生物学的な検証が行われてきました。ギャンブルにはまった患者さんの尿の成分や髄液を調べたところ、報酬系を司る神経伝達物質ドーパミンが増加していることがわかったんです。


報酬回路には二通りあります。一つは線条体を中心とした脳の奥深いところにある「衝動的な報酬回路」。こちらは今すぐの報酬を求めます。

そして、もう一つが前頭前野を介する「思慮的な報酬回路」。ギャンブルに浸り、ドーパミンが過剰になると、衝動的な回路が優位に立ち、思慮的な回路をハイジャックしてしまうのです。


帚木さんは国、メーカーの責任についても言及しています。

パチンコメーカーには製造元責任があるし、ギャンブル障害という消費者被害が放置されてきたのは、消費者庁や法律家の怠慢ともいえる。「自分たちは被害者なんだ」という認識を、患者さんにはもっていただきたいものです。

ギャンブル障害を背景とする横領事件も、ときどき世間を騒がせますが、実際にはもっと起きているはず。にもかかわらず、国は無頓着な政策を続け、よその国の何倍もの患者さんを生み出してきた。

アルコールでさえ、午前5時から午後6時までのテレビCMは自主規制しているのに、ギャンブルだけは野放し状態です。そこに加えて、国はカジノまで推進しようとしている。

ギャンブル障害は長らく個人の責任だと言われてきましたが、国家にこそ責任があります。


特集では他にも、女性のギャンブル依存症者を対象にしたリハビリ施設「ヌジュミ」代表の田上啓子さんのインタビュー、弁護士の井上善雄さんのインタビュー、コラム「日本のギャンブル史」「カジノの社会的コスト」が掲載されています。「ギャンブル障害」という社会的課題に立ち向かう上で、ヒント溢れる特集となっております。


最新号では他にも、

  • リレーインタビュー:北斗晶さん
  • サム・スミス スペシャルインタビュー
  • カナダ・バンクーバー「大邸宅シェア」の取材記事
  • 東田直樹さんの連載「自閉症の僕が生きていく風景 対話編」
  • ホームレス人生相談

などなど、多彩なコンテンツが掲載されています。ぜひ路上にてお買い求めください!



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ビッグイシューについて

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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊450円の雑誌を売ると半分以上の230円が彼らの収入となります。