マイクロファイナンスと言えば、ノーベル平和賞を受賞したグラミン銀行の創設者ムハマド・ユヌス氏が有名ですが、本日紹介する「オイコクレジット」は、何と1975年に設立されました。西側諸国で集めた出資金を発展途上国の貧困層を対象に融資する社会的投資の先駆けです。

一度貧困に陥ると社会的信用が失われ、生活を立て直したくても銀行からお金を借りることもできません。信用がないだけに何をするにも余計にお金がかかります。一度はまったらもう出られない底なし沼のよう。発展途上ではないはずの日本にいても痛感する毎日です。「オイコクレジット」は完全に二極化してしまった世界のありよう、お金の流れを変えることができるでしょうか?



ヘンペルス‐ドイツ

「オイコクレジット」は世界中の貧しい人々が小ビジネスを始める際に出資という形で支援する国際的な開発協同組合だ。1975年にドイツで設立されて以来、出資会員は増え続け、投融資額はすでに10億ユーロ(約1130億円)を超えている。エクアドルの夫婦エレーナとヴィンセンテも、世界中で約800もの小規模ビジネスを支援するオイコクレジットの協同組合から融資を受けてビジネスを立ち上げた一人。貧困状態にあった二人は、今ではパンを焼いて地元の市場で販売するまでになった。 
記事:ピーター・フランドホースト

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貧困の底にいた一家、オイコクレジットの融資を受け生活再建を果たす

エレーナとヴィンセンテは幼い娘3人を抱えてエクアドルの小さな小屋に住んでいた。二階にある自宅に入るためには建物の外にかけてあるはしごを使わなくてはならなかった時期もあった。

夫婦が二人とも失業していたとき、エンパナーダ(具入りのパン)を作って、地元の市場で販売する商いを思いついた。

現在、夢を実現した二人は商いで生計を立て、家族を養っている。

二人の成功は、世界中で小ビジネスを志す人々に融資をするキリスト教のオイコクレジット協同組合から小規模融資を受けたことによってもたらされた。二人は商いを始める際にまず1200米ドルを受け取り、その後追加で3000米ドルの融資を受け、パンこね機やレンジ、鍋などを購入した。

オイコクレジットを支援する北部ジャーマンソサエティの役員ハイナー・モーリングは、「二人(のような経済状況では)は銀行からの資金融資は望めませんでしたから」と説明する。

モーリング氏は2012年までメクレンブルクの町でプロテスタント教会の地域教会会議の議長を務めてきた。最近、74歳のモーリング氏は、エクアドルを訪ねた。現地パートナーの協同組合と支援しているプロジェクトを視察するためだ。

エクアドル訪問中、モーリング氏はエレーナ、ヴィンセンテ夫婦にも会った。「彼らは生活をしっかり立て直していました」と語る。「夫婦は一日に200個ものエンパナーダを売り上げ、それによって家族を養えています」

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ミッションは世界や地域のお金の流れを変えること

1975年に世界教会協議会によってこの開発協同組合「オイコクレジット」が設立されて以来、その目的は変わらない。それは、生活再建を試みようとも一般の銀行からは融資を受けられない貧困層を支える国際的倫理型投資のプラットホームとしての役割を果たすというものだ。地域のお金の流れを変え、世界を覆う私利私欲に対抗することをミッションに挙げている。

オイコクレジットは現在オランダに国際事務所本部を置き、主に13か国の支援組織によって支えられている。ドイツ国内では、オイコクレジットを支援する地域事務所が8か所あり、北ドイツだけで2000人の個人や教会関係の出資会員を有している。

エッカーンフェルデ在住の元牧師でありFörderkreis Norddeutschlandの副会長ラルフ・ディエスは言う。「北ドイツの会員たちからの投資額だけで3,600万ユーロ(約4,000万円)になります」

出資額は10億ユーロ超、西側で集めた資金で発展途上国の貧困を支援

世界中からの投資額を合わせれば、オイコクレジットはすでに10億ユーロ(約1130億円)を超える出資額を集めており、現在、世界中で800もの小規模ビジネスの立ち上げを支援している。

「組合は西側諸国で集めた資金を元手に、発展途上国の人々に融資をするのです」とディエスは語る。融資を受けるプロジェクトの多くはフェアトレードに関与しており、将来的には再生可能エネルギーにも、より注目が集まるだろう。

ディエスは今後、領邦教会(Landeskirche)の協力を得て、さらに多くの教区や教会団体からの支援を得たいともくろんでいる。もちろん、教会に属していない個人からの出資も大歓迎です、とディエスは強調する。オイコクレジットに出資した人は、毎年6月の年次総会で決定された配当※(現在は2%)を受け取ることができる。 ※オイコクレジット・ジャパンは、日本の金融商品取引法の制約により、この配当を出資者に還元できません。現在は、この配当をオイコクレジット・ジャパンの運営や啓蒙活動などの費用に充当しています。(オイコクレジット・ジャパンウェブサイトより)

エレーナとヴィンセンテは、オイコクレジットのマイクロローンによってビジネスを軌道に乗せ、生活を立て直すことができた。しかし、そればかりではない。融資したお金は商売のためだけでなく、家族の生活環境を改善するのにも活用された。かつて二階にある自宅へは外にかけた梯子で上っていたが、今ではしっかりした階段がある。

INSPのご厚意による/Hempels

オイコクレジットについて詳しく知りたい方は

「オイコクレジット・ジャパン」ウェブサイト:http://www.oikocredit.jp/

「オイコクレジット・インターナショナル」ウェブサイト:http://www.oikocredit.coop/








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