超・低金利時代の投資の形:オーガニック蜂蜜の生産を支える英国の社会的投資の仕組み

ニカラグア北部セゴビア地方の山の麓に広がるエル・サウセ地域では、生計を立てる手段が牧畜または蜂蜜生産のふたつしかない。前者は森林破壊や地球温暖化の原因となってしまうが、後者は豊かな自然の木々に囲まれてこそ成功するものなので生態系を改善させることができる。 


牧畜の方が収入の安定性という点では低リスクだが、地元の農協「ウカサ」はオーガニック蜂蜜の生産を採用した。この10年、事業が軌道に乗るようさまざまな努力を重ね、四千以上もの蜂の巣から蜂蜜を採取してきた。そのなかには単一種の花粉から抽出した希少な蜂蜜もあり、これらは独特の風味があるため高い価値がつく。農家に安定収入をもたらすのみならず、森林再生もサポートしている「ウカサ」の活動は、今やこの地域でなくてはならない存在だ。

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Photos: Jake Lyell

「シェアード・インタレスト」英国投資家からの資金提供の仕組みがあったからこそ

10年におよぶ養蜂の経験に加え、ウカサの成功を支えているものに「シェアード・インタレスト(Shared Interest)」からの資金提供がある。これは、英国の社会的投資家と世界各地の恵まれない地域にあるフェアトレード団体をつなぐコミュニティ組合(Community Benefit Society※)だ。途上国の農家は、事業存続に必要な資金繰りに苦労することが多いため、「シェアード・インタレスト」が手を差し伸べ、手工芸品団体の原材料調達や、農協が海外バイヤーからの受注を受けられるよう必要な資金を提供しているのだ。

(※)コミュニティ組合(Communitiy Benefit Society):組合員にではなく、より広いコミュニティに利益をもたらすための協同組織。

英国の投資家からすると、自身の余裕資金を「共通口座(Share Account)」に預けることで、何千マイルも離れた地で暮らす人々を支援することができる。投資は100ポンド(約1万4千円)から始められる。集められたお金は生産者へ「融資」として分配され、農作物や工芸品が売れて融資を返済できると、再び融資が受けられるという仕組みだ。

「シェアード・インタレスト」のおかげで、農協ウカサは海外への輸出シーズンが始まる4-5月まで待たずとも、収穫期(11月-3月)に農家に支払いを行い、蜂蜜を買い取ることができるのだ。

「シェアード・インタレスト」の本拠地は英国だが、ケニア、ペルー、ガーナ、コスタリカにもチームメンバーがいる。中米チームの代表マルコ・ガルシアは昨年ウカサを訪ねてこう言った。

自然環境の保護、樹木の移植、授粉しやすい環境づくりと、蜂蜜生産の改善に真摯に取り組んでいた。我々の投資家からの資金援助なくしては、農家への期日どおりの支払いができず、学校や教会の備品購入などコミュニティ支援の資金もなかった。

上質なオーガニック蜂蜜づくりを支えるWin-Winの関係

ウカサが生産される蜂蜜は「単花蜜(たんかみつ)」と呼ばれるもので、一種類の花から花蜜を集めるので独特の風味がある。

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Photos: Jake Lyell

ガルシアは言う。
 

この種の蜂蜜は希少価値があるので高い値がつく。通常、養蜂農家ではいろいろな種類の花を育てるが、ウカサの農園では7月から9月にかけては「カンパニータ」、11月から12月のあいだは「アマリージャ」という花のみを咲かせるので、ミツバチは一種類の花にだけ集まり蜂蜜を作るのだ。

ウカサの本部長を務めるマリア・イサベル・ロペスも喜ぶ。

資金援助のおかげで、生産者から蜂蜜を買い取ることができ大変助かっています。売り上げと生産量の増加にも、しっかり反映されています。昨シーズンは、その前2シーズンの生産量を上回りました。それに、以前には我々が蜂蜜を買い取ることができなかったため養蜂業を諦めてしまっていた農家も戻ってきてくれています。現在ウカサは、養蜂農家の生産量の約8割を買い取ることができており、関係者一同とても満足しています。これからも「シェアード・インタレスト」のご支援をいただきながら、さらに事業を発展させていきたいです。

イギリスでは現在、11,000人以上もの人が「シェアード・インタレスト」を通じて投資を行なっており、金額は100ポンドから10万ポンド(約14,000円〜1,400万円)とさまざまだ。利息は0.25%で、追加投資や資金の引き出しも可能。2016年には、総額6,170万ポンド(約85億円)にものぼる融資を、世界59カ国、約400のフェアトレード団体を対象に行った。融資先の団体は、その地域の農家に安定した収入をもたらし、地域の医療や教育設備の充実などを支援している。
「投資することはあなた自身を金持ちにしないかもしれないが、他者の暮らしを豊かにできる。」

「シェアード・インタレスト」のモットーを見事に実現させている。

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Photos: Jake Lyell

 英国最大のフェアトレードイベント「フェアトレード・フォートナイト」からの提案は、「いつものお茶時間にフェアトレード製品を!」

全英最大のフェアトレードイベント「フェアトレード・フォートナイト」が英国各地で開催され盛り上がりを迎えている。先週、フェアトレード財団が発表した数字によると、売り上げは前年比2%増の16.4億ポンド、英国市場向け製品の生産者にとって未来は明るいと言えよう。

特に「お茶時間」の定番ものが好調で、バナナが6%、コーヒーが8%の売り上げ増を
記録した。自社ブランド全製品に100%フェアトレードココアのみの使用を計画している「コープ・グループ」も、今後12ヶ月で生産者の後押しを強化しようとしている。

折しも、今年の「フェアトレード・フォートナイト」のテーマのひとつは、「休憩タイムにフェアトレードを取り入れよう(#putfairtradeinyourbreak)だ。「お茶時間」の解釈はずいぶん広がっており、蜂蜜だってフェアトレード革命へのおいしい参戦方法となりうる。

チリ、グアテマラの養蜂家を支えるシェアード・インタレストの資金援助

世界最大のフェアトレード蜂蜜業者「アピクープ」(チリ)は創業36年を迎えるが、1997年に「シェアード・インタレスト」の資金援助を受けて以降、コミュニティレベルのプロジェクトから市場を牽引するまでに事業を拡大させた。

「アピクープ」本部長のチノ・エンリケ氏は言う。

蜂の巣を開いて蜂蜜があふれ出すのを見ると、ミツバチの1匹1匹がしっかりと仕事をしているんだなと気づかされます。「シェアード・インタレスト」の投資家たちも同じこと。われわれ1人1人ができることは小さいが、それらを積み重ねていくと大きな違いを生み出せる。

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Photos: Jake Lyell

英国を代表するフェアトレード組織「トレードクラフト」では、グアテマラの養蜂家組合「チパック」の蜂蜜を販売している。「チパック」の代表カルロス・ガルシアは言う。

われわれの組合、所属メンバー、コミュニティを代表して、「シェアード・インタレスト」の投資家の皆さまに感謝の意をお伝えしたいです。ご支援のお陰で、私たちの環境は経済的にも社会的にも大きく改善しました。

お茶、ファッション…地球規模のムーブメントがかつてないほど気軽にはじめられる時代

しっかりと知識を得て自らの行動を選択するエシカル志向の消費者たちが、スーパーマーケットに留まらず、おしゃれエリアにも変化をもたらそうとしている。ファッションブランド「H&M」や「Mango」は今春「エシカルコレクション」を発表した。「美女と野獣」「ハリーポッター」などの代表作を持つ女優エマ・ワトソンもエシカルファッションを支持するセレブのひとりだ。

さあ、あなたも「フェアトレード・フォートナイト」に参加し、エシカル商品を選び、地球規模の変化をもたらそう!いつものお茶のお供を少し見直してみる、春服にエシカルファッションを取り入れてみる、とてもシンプルなことなのだから。世界的ムーブメントに加わり真の変化を起こすことが、かつてないほど気軽にできる時代なのだ。

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以上、「The Big Issue UK」より

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