豊中市社会福祉協議会が主催で12月18日に行われた「子ども食堂(子どもの居場所)フォーラム」での湯浅誠さんの基調講演の後は、豊中市で広まりつつある「子ども食堂」のうち、運営母体に特長のある4つの子ども食堂の事例が紹介された。
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子ども食堂に関わる人はもちろん、地域福祉に興味がある人、行政関係者などが集まった
校区福祉会が母体のケース
「さくら食堂」桜塚校区福祉会 伴野 多鶴子さん
「さくら食堂」は、豊中市社会福祉協議会が進める小地域福祉ネットワーク活動を実施する「桜塚校区福祉会」が運営の母体だ。
子ども向けのイベントに使うスイカ割りのスイカは、豊中市のアクティブシニア男性が集まる都市農園プロジェクト「豊中あぐり」で取れたものを使うなど、地域の高齢者の活動が子どもたちに繋がっているのが感じられる。
桜塚校区福祉会ではもともと地域の高齢者向けに、毎週会食と配食の給食サービスなどを行っていた経験が長く、食事作りはお手の物。しかし今回は子ども食堂ということで、「ご飯の量をどのくらいにするべきか」「アレルギー対応をどうすべきか」ということで悩んだという。
何度か様子を見た結果、ご飯の量は少なめに盛り付けておかわり可とすること、アレルギー対応はできないが、事前にメニューを告知することで乗り切っているという。
アンケート結果からは「献立のバランスが良い」「お吸い物がきれいで美しかった」「嫌いだったものが食べられるようになった」と、子どもからも保護者からも評判が良いという。
子どもと高齢者で一緒に食事し、交流してもらうことで、高齢者が元気になっている様子が伺える、と報告した。
子ども食堂データ 開催場所:校区の小学校内のコミュニティルーム 開催日時:月1回 参加費:子ども200円 大人400円 対象者:校区の小学校の放課後子ども教室 延長保育の子どもたちと一人暮らしの高齢者 |
介護事業者が母体のケース
「あいわ豊中南こどもひろば」社会福祉法人 愛和会・事務部長 長尾 雅子さん
「あいわ豊中南こどもひろば」は、障害者・高齢者向けの事業を行う社会福祉法人が持つデイサービスセンターの施設を利用する。デイサービスが終わった後にこども食堂を開催するのだ。参加者は誰でもオープンではなく、市社会福祉協議会のコミュニティ・ソーシャル・ワーカーが支援するなかでつながった子供たちを対象に実施している。両者の強みを持ち寄る形で実施しているのだ。
高齢者・障害者向けの事業のノウハウを生かして、子ども食堂には珍しい送迎のサービスつきだが、大人の送迎と違い、子どもの場合は「女性でないと送迎を嫌がる子どももいる」というケースもあるとのこと。
職員たちの普段からのきめ細かい目配りのおかげか、仕込みの時間から手伝いをしてくれる子や食事の後の宿題タイムで勉強をする子どもたちが増えてきたようだと話す。
子ども食堂にかかわるスタッフは本業が福祉なだけあって、たとえ専門が異なっても直接支援をしたくなることがあるのがもどかしいそう。同じ法人内の別のエリアで児童福祉をしている職員に来てもらって児童のケアについての研修を開催するなどの動きが起こってきていることや、支援が必要な子どもについて周囲の大人が情報共有することが必要だと報告した。
子ども食堂データ 開催場所:高齢者・障害者向けのデイサービスセンター 開催日時:月1回 参加費:子ども100円 大人200円 対象者:施設近隣の小中学生及びその保護者(学齢期前のきょうだい可)※事前面談有 |
シングルマザーが当事者の集まりとして運営するケース
「団欒子ども食堂」団欒長屋プロジェクト代表 渕上 桃子さん
渕上さんは「湯浅さんの話を聞いて、うちは貧困じゃなくてただの貧乏だとわかって安心しました」と笑って話すシングルマザーだ。
団欒子ども食堂の特長は、「大人も子どもも、有志で調理から後片付けまで参加してもらう」ということ。基本的に当事者の集まりなので、ご飯が自分で作れるようになるということは、とても大切な自立の一歩と考えており、座敷にちゃぶ台で食べる食事は「大家族」ふうだ。
民家での開催なので一般家庭用の鍋や炊飯器などで炊事するのが大変ではあるものの、大人数でわいわいと食事をする事で子どもの偏食が緩和したり、「よそのおばちゃん」に指摘されることで、いつも口うるさい親が言い続けるよりもあっさりと行儀が直ったりするという効果があるという。
「経験」「社会教育」「子どもの自立」を考えた子ども食堂なのだ。
子ども食堂データ 開催場所:民家(一軒家の平屋) 開催日時:月1回 参加費:子ども100円 大人300円(未就学児 無料) 対象者:学童利用の子どもとその保護者+地域住民 30食限定 |
福祉の若手職員たちがボランティア活動で行うケース
「まんぷくほ~む」まんぷくほ~む実行委員会・代表 恵濃 雄一さん
「まんぷくほ~む」の運営方法も興味深い。
作業療法士や理学療法士、介護福祉士、ケアマネなどの介護関係の様々な職種の仲間同士が集まり、ボランティアで運営している。
提供するメニューはほぼ「カレー」だが、「手羽先カレー」「冬瓜カレー」「里芋カレー」など、珍しいものにも果敢にチャレンジしている。
「子ども食堂が終わった後の同じ業界の仲間たちとの”反省会”と称した飲み会が楽しみ」と語り、運営側が楽しむことこそが、本業も子ども食堂も両方長続きしそうな秘訣だと感じる。
悩みは3つ、「本当に困っている人に情報を届けられているのか」「地域の手助けになっているかどうか不安」「完全ボランティアなので、収支をどうしていくかが課題」だと語った。
子ども食堂データ 開催場所:地域のデイサービスセンター内 開催日時:月1回 参加費:子ども100円 大人(高校生以上)300円 対象者:0~18歳までの小友とその保護者。それ以外の年齢の方や障害をお持ちの方も歓迎 |
4つの子ども食堂の発表を終え、湯浅さんはこう話した。
「子ども食堂」でつながる地域
子ども支援は家族支援でもあると思います。子ども食堂を運営する上での課題 数々の子ども食堂の現場を見て来た湯浅さんによると、子ども食堂の運営課題は大きく5つ。
子ども食堂があって余裕ができたぶん、他の日におかずを一品増やせる親もいる。
家族の話のきっかけにもなります。
あと、高齢者の居場所になったり、スタッフが勉強したり、多世代の交流になったり、飲み会のきっかけになったりしてるでしょう?子どもを支援しているようで、地域の大人をつないでもらっているのです。
1.人・ボランティアスタッフだという。
2. 運営費
3. 場所
4. 広報、周知、連携
5. 保健と保険
2.運営費は、食材の寄付や場所の提供をしてもらえればかなり楽になる。
3.場所は公民館などの場合は抽選が入るため、直前まで告知できないというケースが多いという。 しかし、この2つの問題は子ども食堂に「巻き込む人」を増やすことで、”食糧の寄付ならできるよ”、 ”場所提供ならできるよ”、という人が出てくるものなので、運営に忙しくても「4.広報、周知」をしなければならないと湯浅さんは話す。
特にその土地に長く住んでいるわけではない人たちが子ども食堂を始めた場合は、「新しく来た人が何かやっているなあ」と地元の人は遠巻きに見ていることが多く、かかわりをうまくつくれない傾向にあるという。
自治会や社会福祉協議会、民生委員などに、「話題にしてください」とお願いするのも手だとアドバイスした。
最後の「5.保健と保険」は、食中毒を出さないための保健であり、何か起こってしまったときの「保険」の話でもある。
まずは始めてみることから!と勢いで始めてしまい、気にはなっているものの、活動時の事故に対する保険に入る資金的・時間的余裕がないところが多いとのこと。
「子ども食堂のネットワークを作り、保険をつくりたい」
その状況を知った湯浅さんは「多くの子ども食堂が協力して、保険加入を進めたい」と話す。 全国200ヵ所くらいの子ども食堂が参加して、クラウドファンディングで全国からお金を集め、子ども食堂に来ている子どもたちに何かあればきちんと保険でカバーされるような態勢を整備できるよう、企画を検討しているとのこと。子ども食堂は地域の交流の場であり、地域の網目が濃くなるほどに、それは地域の資源となる。できる人ができることからやっていく、ということが大切だと締めくくった。
2018/04追記:
上記で紹介された企画について、湯浅さんが率いる「全国200のこども食堂とともに、保険加入をすすめるプロジェクト」でクラウドファンディングを2018/04/03-6/21まで実施されるそうです。
ビッグイシューもリターン品を提供しています。
https://camp-fire.jp/projects/view/68605
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