モノが溢れている日本において、「断捨離」や「ミニマリズム」を実践しているという人は多いだろう。これらは「本当に必要なもの」を自分に問いかけるきっかけにもなるため、ずいぶんと広まってきたように感じられる。
しかし “家の中のモノの所有を必要最低限にする”というだけでなく、家も小さくしてしまう「タイニーハウスムーブメント」を実践している人はあなたの身の回りにいるだろうか?
米国で2000年頃に「生活を軽くしたい」「シンプルにしたい」と考えた人たちがたどりついた「小さな家」や「タイニーハウスムーブメント」の考え方は、リーマンショックを機に広がった。日本においても東日本大震災をきっかけに、モノや家の所有に疑問を感じた人たちを中心に動きはじめている。
『ビッグイシュー日本版』では2 3 8 号特集で「小さいおうち」を取り上げたが、今回334号では「動く小屋」に注目。
自分が生きてゆく上で大切にしたいことが、「大きな家」あるいは「高い家賃」ではないということに気づいた人たちの「動く小屋」とは、どのようなものか、一部をご紹介したい。
“自分を構成するもの、自分に必要なものをきちんと理解してつながりをデザインする”
タイニーハウスで暮らす人々を訪ねるロードムービーを制作した「タイニーハウスビルダー」の竹内友一さんは、タイニーハウスの自作や、制作ワークショップの開催を通して感じたことを語る。竹内さんが初めて作ったのは、山梨県・河口湖の湖畔でパンやコーヒーを売るキオスクのようなタイニーハウス。(下写真)
千葉で障害者の就労支援をしているNPOの依頼で、農作業中に休憩できるタイニーハウスを建てたことも。作業中の彼らの意見を聞いて、壁はいろいろな青で塗り、自分の好きな窓を決めてのんびりくつろげるように、窓もたくさんつけたそう。(下記)
スペースが限られているからこそ、人によって、自分ができないことはタイニーハウス外でアウトソースせざるを得ない。タイニーハウスつくりは“自分を構成するもの、自分に必要なものをきちんと理解してつながりをデザインする”と表現する。
本誌334号特集では、竹内さんのロードムービー制作のエピソードや、タイニーハウスに込めた想いを詳しく紹介。
廃材を使って3万円で制作する「動く小屋」だからこそ、価値観が変わる
静岡県浜松市でこれまで計5台の小屋を製作してきた松本憲さん(空間デザイナー)。 廃材を使い、「軽トラに乗るサイズ」というルールを設けて、設計図を引かずにみんなで制作するというスタイルだ。最初は地元でお茶屋を営む裕さんから「お茶をもっと身近に感じてもらえる方法は?」という問いに対して緑茶の屋台をつくったのがきっかけ。 制作費をかけず、みんなでつくるというプロセスを楽しむことで、売上を気にしなければならない”移動販売”も、みんなで集まれる場所のとっかかりをつくるということが価値だと感じられるようになったという。
松本さんの活動の紹介やこれからの展望も、本誌334号特集にて。
その他、特集では“小さな暮らし”を伝えるウェブメディアを企画運営し、タイニーハウスは「自分が何を大切にしているか気づくきっかけになる」と話す相馬由季さん(「YADOKARI」プロデューサー)に、小さな暮らしの魅力や計画中のセルフビルドについてインタビュー。
また、“パーソナル屋台”を作ってまちに出て、道ゆく人に無料でコーヒーをふるまう田中元子さん(株式会社グランドレベル代表)は、それを“自分で作る公共”=「マイパ ブリック」と名づけた。そんな田中さんに“パーソナル屋台”の物語を聞いている。
ビッグイシュー334号ではこのほかにも、
・リレーインタビュー。私の分岐点:女優 ともさかりえさん
・スペシャルインタビュー:メイヴィス・ステイプルズ
・国際:“カンフー尼さん”女性のエンパワーメントのために闘う
・ホームレス人生相談:40代男性会社員からの「妻が口うるさくて疲れます」の相談
など盛りだくさんです。
ぜひ路上にてお求めください。
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ビッグイシュー・オンラインの「小さな家」関連記事
・小さな住まいがホームレスに希望と安心をもたらす:シアトルのトランジショナル・ハウジング・プロジェクト・高知の海辺。原価150万円。オフグリッドで超シンプルな家「タイニーハウス」の建築現場を取材した
・住宅のダウンサイジング:世界に広がる「スモールハウス・ムーブメント」とは何か ・100万円で家を建てる!小笠原昌憲さんに聞くセルフビルド(1/2)
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ビッグイシュー日本版「タイニーハウス」関連バックナンバー
THE BIG ISSUE JAPAN238号特集:小さいおうち― スモールハウス・ムーブメント
http://www.bigissue.jp/backnumber/238/
THE BIG ISSUE JAPAN290号
国際記事:米国「タイニーハウス運動」。ホームレスの選択肢に
http://www.bigissue.jp/backnumber/290/
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ビッグイシューについて
ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。
ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると半分以上の180円が彼らの収入となります。