「ホームレスの人」と聞いて、あなたはどんな人を思い浮かべるだろうか。
「おじさん・おじいさん」「公園などで段ボールハウスに住んでいる」といった人を思い浮かべる人もいるかもしれない。確かにホームレス状態と言えばそのような人が多かった時期もあるが、今は「ホームレス」にあたる人が変化している。

また、その変化に伴い、炊き出しや夜回りがイメージされやすい「ホームレス支援」の様子もまた変わってきている。


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写真:Snapshot https://www.homedoor.org/snapshot/

「路上生活者の数は減少傾向」=ホームレス問題の解決、ではない

厚生労働省の2019年度調査によると、全国の路上で生活する人の数は4,555人。同調査の10年前の人数が15000人を超えていたのと比べると、7割以上減少したことになる。(2003年発表の初全国調査時は25,296人だったので、それと比べると8割以上減少)

グラフ


しかしこの数字は「ホームレス状態の人」が減っているということを示しているわけではない。この調査の対象は駅や公園、河川敷といった、屋根のないところで寝起きしている人たちに限られており、ネットカフェやファストフードといった24時間営業の店舗などで過ごしている人たちは含まれていない。

例えば安定した住居がない状態でネットカフェ等を利用する人は、東京都内だけで一晩に4,000人いると推計されており(2018年 東京都調査)いわゆる「ネットカフェ難民」をはじめとする、統計に現れない「見えないホームレス」の数を合わせると、甚大な数の人が、今も不安定な居所で夜を過ごしていると考えられる。
※2007年に厚労省が全国規模で行った同様の調査では、全国で約4700人の推計。

かつての「段ボールにくるまって過ごしている人」は減っても、「安定した・安心できる住まいがない人」は依然多く、そして見えづらくなっているのだ。

海外のホームレスの定義

海外で「ホームレス」というと、イギリスでは
①占有できる住居を持っていない状態にある世帯の一員
②家があってもそこに立ち入れない、住むことが許されない車両・船に住んでいる状態
③継続的に占有する権利がない場合
④28日以内に家を失う可能性がある場合
(住宅法)
を指し、アメリカでは
安定した住居を持たず、緊急シェルターなどの一時的な施設、人が住むのに適さない場所(路上・車中・廃屋など)で夜を過ごす者、もしくは今すぐに住まいを失う可能性があるもの。
(ホームレス生活者のための緊急支援法)
と定義されており、いわゆる日本の路上生活者は「ホームレス」ではなく「ラフスリーパー」呼ばれる。どの国でも、人はある日突然ホームレスになることは珍しく、だんだんと生活環境が悪くなっていくため、「ホームレス」の対象を大きく捉えることで、「路上生活」に至る前に予防策を検討することが可能となるのだ。

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© Pixabay

「安定した・安心できる住まいがない人」とは

では、日本の「路上生活者」としてカウントされない、「ホームレス状態」の人にはどのような状況にある人がいるのだろうか。

『ビッグイシュー日本版』364号では、一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事の稲葉 剛さんをゲスト編集長に迎え、家庭に居場所がなく街をさまよう若者たち、難民として日本に逃れてきた外国人、ネットカフェで途方に暮れる妊婦など、世代や国籍も多様な人たちが住まいを失っている現実と、その人たちを支える新たな取り組みをレポート。

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・居場所のない女子中高生をサポートする一般社団法人Colabo 代表の仁藤夢乃さん
・優しい社会・都市の実現を目指す市民団体「ARCH(アーチ)」の共同代表・河西奈緒さん
・難民シェアハウス事業も展開しつつあるNPO法人WELgeeの代表、渡部清花さん
・妊娠葛藤相談、研修・啓発、調査研究・政策提言等に取り組むNPO 法人 ピッコラーレの代表理事中島かおりさん
・札幌で4つの市民団体が連携して生活困窮者のためにシェルターを展開するNPO法人 コミュニティワーク研究実践センターの佐渡洋子さん
に話を聞いた。

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ビッグイシュー364号ではこのほかにも、
・リレーインタビュー。私の分岐点:梅宮アンナさん 
・スペシャル企画:『セサミストリート』リリー
・国際1:アフガニスタン、サフラン産業でアヘン農業から脱却
・国際2:大英博物館で「マンガ」展! 国外最大規模、アトムからジブリまで
・ホームレス人生相談:30代のお父さんから「8歳の息子に『UFOはいるよね』と聞かれたらどう答えればよいのか」の相談

など盛りだくさんです。
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『ビッグイシュー日本版』364号

ぜひ路上にてお求めください。

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*本記事の冒頭およびサムネイルで使用した写真は、Snapshot のものです。これは大阪のホームレス支援団体「Homedoor」のプロジェクトで、ホームレスの方々にカメラマンになってもらい、長い間、街・人・時間を見ている感性で撮った写真をストックフォト写真として販売。その写真の売上をホームレスの方に還元しています。

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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると半分以上の180円が彼らの収入となります。