コロナ禍で「不要不急」の対面を前提とする事業が大ダメージを受ける中、エッセンシャルワークである農業も変革を求められている。

米シカゴでマイクログリーン*1の都市型農園を展開している「クローズド・ループ・ファームズ(Closed Loop Farms)」を紹介しよう。生産拠点はバック・オブ・ザ・ヤード地域にある建物「ザ・プラント」*2。3年前はスタッフ1人のみだったが、今ではフルタイム8人、パートタイム4人にまで事業を拡大。コロナ禍における地元住民たちのニーズに応えるべく、これまでとは違うビジネスに挑戦中だ。



*1 発芽して1~3週間の若芽野菜の総称。土壌で栽培される。手軽に食事の栄養価を高められることで注目が高まっている。

*2 Closed Loop Farms 「生産と消費がループする農業の輪」の意。
The Plant 


レストランへの卸から直接配達へ

マイクログリーンの栽培に特化し、シカゴ中心部の一流レストランにのみ卸すというビジネスを行ってきた。「実際、スタッフは全員、ほぼ毎食マイクログリーンを食べており、地元の人たちにもそうなってもらえたらと願ってます」クローズド・ループ・ファームズの設立者アダム・ポラックは言う。



しかし、コロナ禍で商品を卸していたレストランは軒並み休業に。「すぐさま事業の見直しを行いました」とポラック。 収穫物を一般のお客さんの自宅に直接届けることを始めたのだ。

マイクログリーンは鮮度が短いため、スーパーマーケットを通じた流通は難しい。新鮮な商品を届けたいという想いから、以前から「配達システム」を取り入れなければとは感じていた。しかし新たなビジネスモデルを取り入れるのは簡単なことではない。しかしコロナ禍の今こそ、配達システムのニーズがあると判断したのだ。

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配達日は火・金の週2回(エリアによる)。
注文は25ドル〜、配達日前日の正午まで注文可。配送料は10ドル、200ドル以上の注文で配送料無料。
「ザ・プラント」でピックアップする場合は、購入金額の条件はない。


「年配の人や健康リスクを抱えている人など、大勢の人が人と接触したくないと食料品店に行くことを躊躇しています」とポラック。 「生産者から直接入手できるというのは、とても安心・安全な方法だと思います。いつ届くかが分かるし、有機農法で作られたヘルシーなもので、そこで働く人たちにお金が支払われるという透明性もある」。

「これは食料の安全保障の問題でもあります。国内外でサプライチェーン(商品が消費者の手元に届くまでの一連の流れ)がいろいろと問題になっていますから、これは大きな安心感になります。私たちは大資本のサプライチェーンに乗っかっておらず、生産を続けるだけ。毎週、新鮮な商品をお届けできるので、お客さまも喜んでおられるようです」

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感染対策はしっかり取り、すべてのプロセスを人との“接触なし” で行っている。配達員は、インターホンに触れる前に手を消毒する、手袋を着用する、配達済みのメッセージをお客さんに送信してから立ち去る等。

「マイクログリーンを食べたいと思う人たちなら、ファーマーズマーケットで買えるような他の商品も手に入れたいはず」と考え、さまざまな地元の生産者ともコラボ。おかげで、利用者はクローズド・ループ・ファームズのサイトから幅広い商品を購入することができる。(ブルーベリー、カカオフルーツソーダ、各種チーズ、オーガニックチョコレート、コーヒー、蜂蜜、ピリ辛ソース、カモミールティー、スポーツドリンク、消臭剤など)*3。

*3 宅配で注文できる商品一覧 

有機農業、廃棄物1%以下、フードバンクへの寄付、地域コミュニティへの貢献

こうした事業見直しは前々からやりたいと思ってはいたが、新型コロナの影響で前倒しで実現することとなった。「長期的には私たちにとっても良い変化になるだろうと考えていますし、人々が農作物を手に入れる方法も変わっていくでしょう」

「私たちはお客さんたちと直接やりとりする関係を大切にしています。そうすることで、巨大なグループ企業と遜色ない利便性を提供しつつ、お客さんにはスモールビジネスを応援してもらえたらと思っています」。

クローズド・ループ・ファームズでは、スモールビジネスの支援だけでなく、環境とコミュニティに優しくあることも大切にしている。農場から出る廃棄物の99%以上を堆肥化し、屋外の農場で肥料として使用。生鮮食料品の売れ残りは、地域のフードバンク「カーサ・カタリーナ」にすべて寄付。



マイクログリーンは有機質の土壌で農薬を使わない「完全有機農法」を実践している。さらに、スタッフの8割は農場から5マイル(約8km)以内のところに住んでおり、放課後の学習プログラムを開催するなど、コミュニティのためになる活動も行っている。

事態が収束すれば、レストランへの卸しも再開したいと思っているが、それでもシカゴ市民向けの配達サービスは今後も続けたいと考えている。

By Rachel Koertner
Courtesy of StreetWise / INSP.ngo


参考:
Backyard Fresh Farms 
無農薬で野菜を育てる環境にやさしい室内農業

Bike-a-Bee 
シカゴで取り組む都市の養蜂プロジェクト

Just Ice
透明度の高い溶けにくい氷を製造する会社

Kombuchade
お茶を発酵させてつくる植物性のスポーツドリンクメーカー

Mint Creek Farm 
有機牧草地をベースにした家畜および養鶏場

Tuanis Cholorate 
オーガニックなチョコレートを製造


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