2021年6月19日に行われたオンラインイベント<BIG ISSUE LIVE #4「コロナ禍の支援現場から見えてきたこと」>には、困窮者支援活動に最前線で取り組む小林大悟さん(「新型コロナ・住まいとくらし緊急サポートプロジェクトOSAKA」呼びかけ人、NPO法人釜ヶ崎支援機構・主任相談員)、根本真紀さん(ソーシャルワーカー)が登壇。
大阪と東京、それぞれの支援現場の実情について、司会を務めるNPO法人ビッグイシュー基金大阪事務所の川上翔が話を聞いた。今回この記事では、根本真紀さんの活動を紹介する。
この記事は、2021年6月19日にYouTubeで開催されたイベント<BIG ISSUE LIVE #4「コロナ禍の支援現場から見えてきたこと」>レポートその2です。
(その1「釜ヶ崎の困窮者支援、コロナ禍の影響とは」)
主催:ビッグイシュー日本
コロナ禍の夜回りを地域の団体と連携支援
ソーシャルワーカーの根本真紀さんは、長年に渡り生活困窮者に対する相談支援業務に従事している。年末年始やゴールデンウィークなどの期間は日雇いの仕事も減り、生活に困る人が増え、また役所も閉まってしまい相談の受け皿がない。こうした状況から始まった食事支援と相談支援の取り組みが『年越し大人食堂』だ。2021年春のゴールデンウィーク期間にも『大人食堂』が開催され、根本さんも要請に応じて、相談支援に携わった。
また、「今日、寝る場所がない」という突然行き場をなくした人に対して一定期間、緊急の宿泊支援を実施する『東京アンブレラ基金』での活動にも、根本さんは参加。公的な支援につなぐための相談支援を行った。
2021年の年明けからは有志何名かで終電の後の新宿駅や東京駅、上野駅というターミナル駅周辺で深夜の夜回りを実施。
「東京駅周辺にコロナ禍で住宅を失ったという方がいて、寒い冬にもかかわらず寝袋もなく休んでいる方が目立った」。根本さんは支援団体にすぐさま協力を仰ぎ、寝袋や衛生用品を配ったという。
そういった、複数団体が連携する活動の中で、根本さんは「個人で動いていると、例えば路上で休んでいる方を泊めてくれるホテルを見つけるのは限界があります」。根本さんは、支援団体と連携して動くことで「そのとき必要な支援を届けられる」と話す。
具合が悪くて動けないという困窮者の方を、支援団体の協力で車を借り、この日はビジネスホテルで休んでもらった
コロナ禍における支援活動では、「ウェブの相談窓口にフォームを設置したこと」が効果的だったという。
フォームから連絡を受け、根本さんらが駆けつける。すると「スマホでフリーWi-Fiは拾えても、通話ができないという若い世代、主に20代~30代の男性で、電車移動するだけの所持金もないという状況の方たちが多かったんです」。
若い世代には「こうなってしまったのは自分のせい」という自己責任論が当事者の中で深く根付いてしまい、「もっと困っている人がいるのに自分が連絡しようとはとても思えなかった」と話す方が多いという。「逼迫した状況になるまでSOSの声が上げにくい状況になってしまっている」と話す。
DEMcK/iStockphoto
コロナ禍で増加する外国人困窮者
コロナ禍では、困窮し支援を求める外国人も増えている。2021年5月3日と5日に開かれた『ゴールデンウィーク大人食堂』の658人の来場者のうち、100人以上は外国人だったという。
「外国人は非正規の仕事をされている方が多く、(今回のような状況では)雇用で影響を受けやすい。公的な支援を受けにくいため*、民間の支援に頼らざるを得ない」と、根本さん。
*日本に来る外国人たちは、それぞれの出身国ごとのコミュニティ内で助け合いをしていることが多い。しかし一旦そこからこぼれ落ちてしまうと、利用できる公的制度が限られており、コミュニケーションの面などでのハードルも高すぎるため、支援を受けられずホームレス状態になってしまう人もいる。
ためらわずにSOSを
イベントの最後に根本さんはメッセージとして次のように話した。「自己責任論がここまで浸透していたか、と強く感じています。ためらわずにSOSは出していいんだと改めて言いたいです。(支援の)制度外のことで相談に来られたとしても、ただ案内だけして、そこで終わるのではなく、支援できるところにつなぎとめるまでやる。それだけでも、相談支援のあり方が変わってくると思います。一緒に頑張りましょう」。
根本真紀さんプロフィール
東京で活動するソーシャルワーカー。ビッグイシューとも関わりが深く、ボランティアとして現在の『路上脱出・生活SOSガイド』(※)東京23区編の初版の制作に従事。現在は「一般社団法人つくろい東京ファンド」とともに夜回りも行いながら、様々な支援活動に携わっている。
イベントレポート3:「数字で見る困窮のいま…「貸付」が1兆円を超えている」は、2021年7月10日公開予定です。
記事作成協力:Y.T
当日の動画
つくろい東京ファンド ― 市民の力でセーフティネットのほころびを修繕しよう!
※注:『路上脱出・生活SOSガイド』…「食べ物がない」「泊まるところがない」「仕事を探したい」「生活保護を申請したい」など、ホームレス状態の人や生活に困窮している人が必要とする情報をまとめた小冊子。東京、大阪、各地の情報をそれぞれ無料で郵送・配布している。ダウンロードも可。
https://bigissue.or.jp/action/guide/
**新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急企画第6弾**
2021年6月4日(金)~2021年8月31日(火)まで受付。
販売者からの購入が難しい方は、ぜひご検討ください。
https://www.bigissue.jp/2021/06/19544/
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ビッグイシューについて
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