応援したい相手、心の支えの対象――“推し”への愛情表現として、ライブに行く、グッズを買う、YouTube動画を見るなどがあるが、タイの俳優、ガルフくんことカナウット・トライピパタナポンさんのファンコミュニティは少しアプローチが異なる。ファンが事前に「バースデー・ドネーション」を募り、集まった寄付で『ビッグイシュー日本版』の裏表紙に彼の誕生日を祝う広告を出したのだ。




『ビッグイシュー日本版』として初の、「誕生日広告掲載」が実現した背景について、非公式ファンクラブの「Gulf Kanawut JFC」のメンバー、TさんとCさんに話を伺った。

ファンが“推し”の誕生日をみんなで祝い、社会貢献したい

「Gulf Kanawut JFC」では、2021年夏にも日本赤十字社とコラボし、全国47都道府県72か所の献血ルームに「ガルフくんの写真を使用した献血を促進するポスター」を貼り、400人以上のファンを献血アクションに誘導するというソーシャルグッドな企画を行っている。




ファンがそういった形の“推し活”をすることについて、Cさんは「ガルフくんの国、タイは熱心な仏教の国なので、寄付などの喜捨文化が日常的に根付いています。それを受けて、ファンの人たちも寄付や社会貢献をテーマにした企画をすることが多いのではないでしょうか」と語る。


12月にある彼の誕生日に向け、「Gulf Kanawut JFC」では半年前からどんなお祝いをするか検討するなかで、他の媒体とともに『ビッグイシュー日本版』への誕生日広告掲載が候補に上がった。メンバーの一人であるCさんが『ビッグイシュー韓国版』で頻繁に「芸能人の誕生日広告」が行われていると知っていたこともあり、『ビッグイシュー日本』に興味を持ち、広告掲載料などの打診を始めていった。

そして、10月1日からは「バースデー・ドネーション」の呼びかけを開始。




その後、集まった額をもとに誕生日広告を実施する媒体を絞り込んでゆき『ビッグイシュー日本版』の表4(裏表紙)への出稿が決定。事前告知を行っていった。



肖像権はどのようにクリアしているのか?

多くの人が疑問に思うのが、「非公式のファンコミュニティで、どうやってオフィシャルな本人画像の使用許諾を取るのか」ということだろう。

それについてTさんは「タイのガルフくんの公式マネジメントに、今回の企画を伝えて『写真を使わせてほしい』と相談したら、快諾してくれました」と語る。

それどころか、基本的に公式マネジメントが「ファンがガルフくんのサポートのために行う非営利活動であれば使用料なしで許諾する」方針のため、社会貢献につながる今回の活動も使用料なしで実現可能となり、その分を広告掲載料に充てることができたそう。

公式マネジメントからの許可については、そのキャプチャを編集部へ提示するなどの形で確認していった。

ビッグイシューの裏表紙に載せるにあたり苦労した点

「苦労というほどのことではないですが…」と前置きしながらCさんは、「6月頃から企画を進めていたので、公式マネジメントから支給していただける写真が、真夏の服装のものばかりになってしまって(苦笑)12月の真冬に販売される裏表紙に載せても違和感のない、新しい写真を選ぶのが悩ましかったです」と振り返る。

写真が絞り込まれた後は、デザインを本業とするファンがデータを制作。「皆と一緒に楽しみたい、日本のファンの方々が喜んでくれるのがうれしい」とこちらもボランティアで進められた。

「デザインについては、ビッグイシューのトーンやテイストから極端に逸脱しないよう、かつガルフくんを知らないビッグイシューの既存読者の方にもその魅力が伝わるようなもので…といくつかああでもないこうでもないと考えていました。

でも、ビッグイシューの編集部の方は、いろいろ相談するたびに『ファンの方が一番喜ばれる形にしてくださいね』と気持ちよく言ってくださったので、とてもやりやすかったです」とTさん・Cさんは話す。

ビッグイシューに誕生日広告が掲載されて

実際に誕生日広告が裏表紙に掲載された420号(2021年12月1日発売)が発売されると「今回ビッグイシューを初めて買った」「路上に立ってる人が、何をやってるか初めて知った」というファンも多かったそう。

「これまで知らなかった、参加しようと思わなかったことに“推し”を通じて初めて知り、参加しようと思うことが、この企画のいいところだと思うんです」とCさん。
「販売者から直接購入することは、知らなかった社会とつながることだ」とも。



「東京、大阪、名古屋、福岡などの街頭ビジョンにも掲出したのですが、ファンにとって、ビジョン広告とビッグイシューの誕生日広告で最も異なる点は【手元にモノが残る】ということですね。
ガルフくんが単体で日本の雑誌に掲載されたのは日本初ということもあり、ファンには嬉しい記念品になったと思います」とCさん。




“この機会があって、あらためて世の中と繋がりを感じた”など、それぞれの体験、気持ちの変化をSNSで紹介する人がいたことが印象的だったと話してくれた。

また、Tさん自身、今回の企画をきっかけに初めてビッグイシューを購入したのだそう。
「通勤圏内で販売者さんを見てはいたのですが、実際に買ったことはなくて。
誕生日企画の話が立ち上がって初めて買って読んでみて、“こんな内容だったのか”と驚きました。
バックナンバーを見ても、社会問題に限らずテーマが多様で、アーティストについても取り上げられていることを知り、新鮮でした」と話してくれた。

推しの誕生日広告を出そうか迷っている人たちにメッセージを…とお願いすると、Cさんはこう語ってくれた。

「ビッグイシューへの誕生日広告掲載は“三方よし”の企画だと思うので、私たちだけでなくいろんな“推し”のある人たちに広がっていったらいいなと思います。
そういう人たちに伝えたいこと? “誕生日広告、楽しいし、嬉しいよ!”ですね」


なお、2月15日発売の425号の表4(裏表紙)も誕生日広告だ。

◆2月15日号:ミュウさんことスパシット・ジョンチーウィーワットさん(タイ俳優)
日本のファンの有志の皆様が出資して実現。
先日のガルフさんとは『TharnType/ターン×タイプ』というドラマで相手役だったそう。
https://twitter.com/mew_BD2022

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さらに3月1日号の表4(裏表紙)も誕生日広告の掲載が決定している。
それぞれのファンたちが心を込めて企画・デザインした裏表紙を楽しんでいただければ幸いだ。

◆3月1日号:キム・ナムギルさん(韓国俳優)
こちらも日本のファン有志の皆様による出資で実現。 韓流ファンによるお誕生日広告は日本では数多く実施されているが、ビッグイシュー日本版では韓流広告はこれが初となる。
キム・ナムギルさんは社会貢献活動を熱心にされていることから、今回の広告掲載先として、ビッグイシュー日本をチョイス。
※参考:公式ファンクラブ


ビッグイシューの広告掲載について
https://www.bigissue.jp/how_to_support/program/ad/