路上で販売される雑誌、「ビッグイシュー日本版」を発行する有限会社ビッグイシュー日本には、雑誌の編集・発行だけでなく販売者を影で支える「販売サポート」という仕事があります。
日々販売者に雑誌を卸し、ある時は販売場所を巡回して売れ行きや困りごとなどを聞き取りつつ必要なサポートを行い、またある時は販売促進企画を行うこともあります。

その販売サポートのスタッフとして、大学生や社会人のインターンも活躍。
今回は2020年10月から大阪事務所でインターンを始めた鈴木さんに、インターンに応募した動機やビッグイシュ―での仕事内容などについてインタビューしました。


「コロナ禍で身動きしづらい大学生活、このまま終わってでいいのか?」

Q.ビッグイシューのインターンを始めたのは、どのようなきっかけですか?

“ビッグイシューを知ったのは、小学5年生くらいの時でした。母が近所にいた販売者さんからビッグイシューを買っていて、私もその時一緒についていくことが多かったんです。初めは母からビッグイシューがどんな雑誌なのかを教えてもらったりしていて。幼い頃から、頭のどこかに「おもしろそうやな」っていう思いがあったんだと思います。

大学生になって、新型コロナウイルスが流行し始めた頃、予定していた交換留学が中止になってしまいました。「これからどうしよう?」「大学生活、このままでいいのかな?」と思っていた時に、ビッグイシューのことを思い出して、何かできないかと思って調べて、オンライン説明会に参加しました。インターンをしてみたかったのですが、緊急事態宣言中だったため、宣言があけたところで、インターンのご案内をいただき、応募しました。”

Q.インターンでは、どんなお仕事をしていたんですか?

“週2日ほど出社して、雑誌の卸し、販売場所への巡回、販促グッズの制作のお手伝いなどを行いました。”

01
事務所で販売者に雑誌を卸しながら、談笑する鈴木さん。

“私がインターンを始めたころは、認知促進の活動としてYouTubeで様々な方をゲストに招いてお話をする「ビッグイシューライブ」をはじめとしたオンライン配信企画を始めた頃です。 授業で少し動画編集を習ったことがあると伝えると「じゃあぜひ!」と動画撮影や編集を教えていただき、任せていただけるようになりました。他にも、広告用の写真撮影や画像編集、SNSに投稿する誌面の紹介文の作成にもチャレンジしました。”

Q. 大学で行った講義では、海外の学生さんとの通訳をされていましたね。

“はい、ビッグイシューが大阪大学の留学生に対して英語で講義をすることになった時、登壇した販売者さんの日本語を通訳させてもらいました。
 参考記事:https://bigissue-online.jp/archives/1079955543.html

私は海外で生活していた期間が長く、メインの言語は英語なんです。
ほかのアルバイトでは、「敬語の使い方がおかしい」と𠮟られることがあり「やっていけるかな」と自信を失うこともあったのですが、ビッグイシューのスタッフさんたちは、「英語できるの? ほんなら今度、通訳してみいへん?」と、興味があることや得意なことで活躍の場をつくってくれるので、すごくありがたく、自信を持つことができました。”

02

“巡回”は、販売者とのコミュニケーションの場。

ー販売サポート業務のひとつに、各販売場所への巡回があります。
この日の巡回は4カ所。午前中に事務所を出発し、武庫之荘駅(兵庫県尼崎市)周辺で販売しているさとうさんの元へ向かいました。販売状況や近況、気になっていること、今後の予定など、さまざまな話題が上がります。

03

実は鈴木さんが小学生にお母様と購入していた販売者は、さとうさんだそう。
「インターンになってから、巡回で再会して。こんなつながりあるんだなとびっくりしました」「大阪せまいね〜」と笑顔で振り返ります。

「仕入れの時に事務所にもいくけど、スタッフとなかなか話せないこともあるから、巡回してもらえると助かる。」とさとうさん。
この後も、3ヶ所の販売場所を巡り、販売者さんたちと様々なお話しをしました。

自分の価値観を見直すような出来事や出会い

Q.インターンを通じて、自分に変化はありましたか?

“幼い頃からビッグイシューを知っていたのもあり、ホームレス状態にある方々に特にマイナスイメージを持っていたわけではありませんでした。実際にインターンをやってみると自分の常識や価値観を覆すような出来事や人との出会いがたくさんありました。販売者の皆さんも本当に人間味に溢れていて、個性豊かな方ばかりでとても刺激的です。

大学の授業でも貧困問題やSDGsについて学ぶ機会はありましたが、現場に足を運び、当事者の方と会うことがいかに大事なことか、ビッグイシューのインターンを通じて実感しました。

ホームレス状態にある方の生活は、「どん底」というイメージを持っている方もいるかもしれません。だからといって、ホームレス状態から無理に引っ張り出そうとするが「支援」というわけではない。自分は「支援」を誤解していたな、大事なのは当事者の方とのコミュニケーションなのだ、と学びました。”

ー2022年3月に大阪大学人間科学部を卒業し、秋からは難民問題について学ぶために海外の大学院で学ぶことになっている鈴木さん。進路選択にもインターンでの経験が大きく影響したと話してくれました。

Q . 最後に、インターン募集に興味のある方へ、ひとこと

“日本の会社で働くことがほとんど初めてで、コミュニケーションの面で不安も大きかったのですが、それが初日で一気に解消されました。スタッフや販売者の方々が、普段からよく気にかけてくれるんです。チームの一員として接してもらえるのが、本当に素敵なところだと思います。試験期間はお休みをいただいたりと、無理なく学業とも両立できました。唯一無二の環境で、色んな人と関わり、学べる機会に恵まれたと思っています。少しでも興味のある方は、ぜひ、応募してみてほしいです。”

取材・記事協力:屋富祖ひかる


ビッグイシュー日本(大阪事務所)では、販売サポートインターンを募集しています

<業務内容>
動画撮影・編集業務、及び販売サポート業務
※新型コロナウイルスの感染状況によって、業務内容が異なる可能性があります。

●動画撮影・編集(販売者さんによる誌面紹介動画の作成、ライブ配信の補助など)
※iMovie、Final Cut Pro、Adobe Premiereでの編集経験があれば尚良いです。
上記の動画編集ソフトでの編集経験がない場合でも使用方法のレクチャーいたします。
詳しくはビッグイシュー公式YouTubeチャンネル「ビッグイシューチャンネル」をご覧ください。

●販売サポート業務
販売場所への巡回や販売応援、雑誌の卸しなどの販売者さんのサポート業務
<募集人員>
1名(20歳以上)※20歳未満は応相談
いままでに学生さんや30代の方まで色々な方がインターンとして活躍されました。
詳しい募集要項はこちらをご覧ください。
https://www.bigissue.jp/2022/03/23112/

これまでのインターンを卒業された方は、ビッグイシューで学んだ経験を生かしてそれぞれがやりたいと思った世界で活躍されています。 ビッグイシューのインターンを通して、販売者さんへのサポートを一緒に考え、一緒に学べる方をお待ちしています。

あわせて読みたい他のインターン体験談

ビッグイシューでのインターンは「多くのチャレンジに恵まれた」。グローバルな問題にもつながる発見とは?

人はカテゴライズされるものではなく、グラデーション。それに気づいた4ヶ月間―ビッグイシュー東京事務所のインターン体験談―

外資系IT企業に内定した大学生が、ビッグイシュー日本をインターン先に選んだ理由

過去記事を検索して読む


ビッグイシューについて

top_main

ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊450円の雑誌を売ると半分以上の230円が彼らの収入となります。