路上で販売される雑誌、『ビッグイシュー日本版』を発行する「有限会社ビッグイシュー日本」。この会社では、雑誌の編集・発行だけでなく「販売サポート」という販売者を支える仕事があります。
日々事務所で販売者から指定のあった雑誌を卸すだけでなく、東京・大阪事務所の「販売サポート」部門では、販売場所を「巡回」して売れ行きや困りごとなどを聞き取りつつ必要なサポートを行ったり、認知拡大・販売促進企画に関わったりすることもあります。
今回は、「ビッグイシュー日本」大阪事務所スタッフ・中嶋が販売サポートの仕事を紹介します。
販売サポートスタッフ・中嶋
Q「巡回」とは?何のために行っている?
販売者は雑誌の仕入れをするために、それぞれの都合のよいタイミングで事務所に立ち寄ります。その際に困りごとがあれば相談を受けることもあるのですが、販売者の中には、仕入れの頻度が低い人や、他の人がいると話しづらい人もいます。また、実際の現場を見ながらのほうが話が早いこともあるので、大阪事務所では、スタッフが各販場所に定期的に行くようにしています。「ちゃんとやってるか」と監視して回るというためのものではなく、「元気してるかな?」という確認や、コミュニケーションの機会を確保するためですね。
インターンといっしょに巡回することも。
『ビッグイシュー日本版』は毎月1日・15日に発売される雑誌ですので、そのタイミングに合わせて月に2〜3回は販売場所へ行って近況をヒアリングし、雑誌の卸、相談などを行います。
ただ、大阪事務所で巡回を行っている販売場所は40ヶ所ほどある*ので、1日で回り切るのは難しい。複数人で4日ほどかけて巡回しているような形ですね。
*日本全国では北海道から熊本まで販売場所がある。「ビッグイシュー日本」大阪事務所の管轄は、名古屋以西の販売場所で、大阪事務所のスタッフが巡回する地域は、大阪、京都、奈良、兵庫の4府県。
それ以外の地域では、全国の「販売サポーター」という市民ボランティアが販売者のサポートを行っいます。
巡回時に販売者に雑誌を卸すこともある
Q 巡回で心がけていることは?
コロナ禍以降、大阪事務所も出社制限やリモートワークの推奨のために常駐スタッフが少なくなりました。それにより、雑誌の仕入れのために事務所を訪れる販売者たちとの何気ない日々の会話が少なくなってしまっています。かつては事務所で談笑することも多かったが…
以前は、早朝でも仕入れに来る販売者や同僚の誰かしらがいて会話していたりしました。まず事務所でみんなで話して、気持ちを温めてから現場に出ていたのが、そういう機会も減ってしまった。
なので、コロナ禍になってからは特に、販売者が自分の担当場所を任されて雑誌販売を行っている、“ホーム”に出向いて、お話をすることがとても大事だなと考えています。
伺う内容も、「売り上げはいかがですか」から始まって、それぞれの現場での工夫や意見をしっかりヒアリングできます。
品揃えや販売展示のあり方は人それぞれ
また、他の販売者との人間関係や、販売以外の時間の過ごし方とか、「最近、料理に凝っててね」とか「広報も兼ねてSNSを始めてみてね」など、ご自身の販売場所であればリラックスしてお話してくれる方もいるので、お一人ひとりの人柄や生き方を知るきっかけになっているかなと思います。
Q 販売者が地域になじめるようなサポートは?
販売者がいくら誠実に頑張っても、道行く人に認知されていなければ販売に繋がりにくいため、認知度が高まるよう、試行錯誤しています。ひとつには、地域のイベントに出展させてもらうケース。ビッグイシューの販売場所の近辺でのイベントに出店できる機会があるときは、なるべく近くの販売者に声をかけてイベントで販売してもらうことがあります。
地域の書店の軒先をお借りして販売させていただくことも (大阪府の長谷川書店のケースより)
路上で立っている販売者と同じ人が立つのですが、他の出店者さんと同じようにブースがあることで安心して声をかけてもらいやすく、お客さんと地元トークができたりと、販売者と地域の方のつながりをつくるきっかけになっていると思います。
もうひとつは、貧困問題の理解促進、認知度向上を目的として出張講義の講師を企業や大学、小・中学・高校などで登壇する機会をいただくことがあるのですが、この時、近隣の販売者にホームレス状態となった経緯や路上生活の実情を話してもらうこともあります。
出張講義の様子(灘中学への出張講義より)
講演後、登壇した販売者の元へ行き「実際に行って買ってみた」という参加者の方も少なくありません。
その他、テレビ局からドキュメンタリーの取材依頼がきて、販売者に打診することもありますね。
講演の場合も、メディアに掲載される場合も、まずお名前を出しても大丈夫か、お顔が出ることがあっても大丈夫かなど、販売者の意向を丁寧に聴いて提案することを心がけています。
今後のイベント開催情報
https://www.bigissue.jp/event/
これまでの“出張講義”登壇情報
https://www.bigissue.jp/how_to_support/program/seminner/
Q 販売サポートスタッフやインターンにはどんな人が向いていますか?
本が売れないと言われて久しいうえに、コロナ禍、昨今の物価高などいろいろありますけど、認知されないことには販売もできませんので、コロナ禍になってからはオンラインでの「BIG ISSUE LIVE」を開催し、これまでに16回、さまざまな方をゲストにお話をする機会を持っています。※次回は<BIG ISSUE LIVE #17「愛蔵版『ビッグ マムアンちゃん』発売 大人気キャラクターマムアンちゃん生みの親、タムくんと話そう!」>です
また、「ビッグイシュー日本」としても『販売者応援3ヵ月通信販売』や、販売者のいない地域で雑誌を取り扱っていただく「委託販売」など、事業継続・認知拡大のため様々な挑戦をしています。
大変な状況の中でも、個性豊かな販売者さんとのコミュニケーションを楽しむことができたり、新たなチャレンジをしてみたいという方は、販売サポートに向いていると思います。
インターンは随時募集していますので、このような仕事をやってみたい、興味があるという方は、ぜひお問い合わせください。
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ビッグイシュー販売サポートのインターン募集中(大阪)
■仕事概要
●販売者のサポート(販売場所への巡回や販売応援、雑誌の卸しなど)
●販売者の売上促進(販促グッズの作成、ネットでの販売広報など)
●イベント企画(販売者イベントや地域密着型イベント、講演会の企画運営など)
応募方法など詳細はこちら
(興味のありそうな方へのご案内も大変助かります)
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『販売者応援3ヵ月通信販売』参加のお願い
3か月ごとの『ビッグイシュ―日本版』の通信販売です。収益は販売者が仕事として"雑誌の販売”を継続できる応援、販売者が尊厳をもって生きられるような事業の展開や応援に充てさせていただきます。販売者からの購入が難しい方は、ぜひご検討ください。
https://www.bigissue.jp/2022/09/24354/
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ビッグイシューについて
ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。
ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊450円の雑誌を売ると半分以上の230円が彼らの収入となります。