「森林破壊」を食い止めるアプローチ:ジャマイカの地域団体やNGO活動への助成で起きるインパクト

 森林破壊が世界中で大きな問題となっている。地球の温暖化や気候変動をもたらし、希少種かつ絶滅危惧種の存続になくてはならない生息地や生態系を壊し、農村社会の食糧源や水源にも影響を与えるのだから。この壊滅的な事態と闘うべくコミュニティが結集したジャマイカよりレポートする。

この20年で急速に森林破壊が進んだジャマイカ

国連食糧農業機関(FAO)によると、ジャマイカは国土の31.1%(約33万7千ヘクタール)が森林に覆われており、うち26.1%は生物多様性に富み、炭素密度の高い「原生林」に区分されるものだ。しかし、これらの森林も年平均400ヘクタールのスピードで失われ続けており、1990年から2010年の20年間で合計8千ヘクタールの森林を失った。

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カリブ海の島々の中で最も生物多様性に富むジャマイカ。記録されているだけでも8000種の動植物と3500種の海中生物がいる。
Credit: Zadie Neufville/IPS

地球規模の気候変動の原因となるのは大気中に蓄積される二酸化炭素(CO2)だが、森林破壊はその主要因だ。推定では、伐採および焼き払いなどの森林破壊が原因で毎年15億トン以上のCO2が大気中に放出されている。世界レベルでは毎年3千万エーカーもの森林が失われている今、CO2を減少させてくれる森林を伐採し続ければ、数十年以内に劇的な気候変動が起こるだろう。

コミュニティレベルの活動に助成金交付

森林保全を目指す「ジャマイカ環境財団(Environment Foundation of Jamaica)」が着目したのはコミュニティレベルの活動。2017年7月3日、財団は森林保護活動を行う13のコミュニティ組織(5つの教区)への助成金支援を決めた。助成金は合計67万2千ドル、EFJが運営する「森林保全基金(FCF)」から割り当てられる。

財団の主任テクニカルディレクターを務めるアリソン・ランゴラン・マクファーレンが語った。

森林破壊は大きな問題です。焼畑農法など農作業の一環として実施されることも多いですが、その他にも、燃料用の木炭、漁具の材料や材木として、住宅や道路建設のため、鉱業など産業活動の一環でも伐採されています。

森林伐採の影響は沿岸部のマングローブにまで及ぶ。水質劣化、土壌浸食、生物多様性の低下などで川の流域部に大きな影響を与えているのだ。

気候変動への影響も深刻だ。

森林破壊は気候変動にも影響します。光合成の際に温室効果ガスであるCO2を吸収してくれる樹木の数が減るのですから。おまけに、生きている木に貯め込まれた炭素も伐採時に大気中に放出されます。森林は光合成の際に酸素を生み出してCO2を吸収、地球温暖化や気候変動の原因となる大気中の温室効果ガスを削減しているのです。

マクファーレンはジャマイカにとって森林がいかに重要なものであるかを強調。カリブ海諸国は森林から多くの製品や材料を入手し、食品、医薬品、化粧品などの副産物を生み出してきた。森林は個人やコミュニティに持続可能な暮らしを営む機会を提供してきたと述べた。

森林は日陰を作り、水の循環と供給になくてはならない存在です。流域を保護し、土壌浸食やシルテーション(泥土などが堆積する現象)を低減させます。木の根が土壌を適所に保ち、林冠(森林の上層部)が雨しずくの力を弱めるからです。このおかげで水がゆっくりと地中に浸透し、私たちの水の出どころである帯水層(地下水を含む地層)を回復させるのです。 

また、森林はさまざまな動植物の住み処となっており、その多くは生態系の中で重要な役割を担っています。例えば、ジャマイカのマングローブ林は多くの魚やその他の種にとって大切な養魚場です。同時にレクリエーション地域としても重要で、歴史的かつ文化的に意義あるものもあるのです。

地域に根差した活動に期待をかけて

EFJ会長のデイル・ウェバー教授はNGOから提出された33の企画書を精査し、4つの課題テーマ − 緩衝帯コミュニティにおける生活の選択、流域保全、沿岸地域における自然災害リスクの軽減、植林 – の少なくともひとつに関わるプロジェクトに、森林保全基金からの助成金交付を決めた。

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ジャマイカ環境財団(EFJ)が森林破壊を食い止めるために助成を決めた団体の代表たち
Credit: Desmond Brown/IPS

最高額19万5千ドルを受け取るのはモナのライオンズクラブ。「ブルー・アンド・ジョン・クロウ・マウンテンズ森林保護区」にて、植林と研究を通じた持続可能な森林管理と気候変動の緩和をテーマとした長期プロジェクトを行っている。

クラレンドン教区で実施されている3つの養蜂プロジェクト、エコツーリズム、アグロフォレストリー(森林を農業と林業を組み合わせて活用すること)のプログラムも雇用の代替手段として助成金を受けることが決定した。

地域住民に森林保全の大切さを知ってもらうワークショップを計画している団体もあれば、ポートランド教区、トレローニー教区コクピット・カントリーのプロジェクトでは地域の森林再生にフォーカスしている。

ウェバー教授は助成金を受ける人々に向けて語った。

みなさんの活動は大きなインパクトを持っています。それぞれのコミュニティに変化をもたらす皆さんを応援しています。

マクファーレンも言う。

地域に根差して活動する組織、NGO、関係者が連携することで、これまでにない結果を生み出せるでしょう。

各プログラムはそれぞれの地域の実施団体が特定する問題に取り組むことになる。養蜂などの持続可能な生計手段を提供することで、焼き畑農業や炭焼きなど一部地域で行われている持続不可能な環境活動を減らしていこうとするプロジェクトもあれば、さまざまな研修を開催するプロジェクトもある。研修メニューとしては、持続可能な暮らしとプロジェクト管理、国民の意識向上と教育活動、植林などの活動による土壌侵食制御など災害リスク軽減などが予定されている。

プロジェクトを実施したコミュニティの環境および社会状況が改善され、コミュニティ、組織、個々人の能力が高まることを期待しています。

マクファーレンはそう締めくくった。
記事:デスモンド・ブラウン
翻訳監修:西川由紀子








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