「モフモフ」という表現を聞いて毛並みの良い動物を思い浮かべる人は、10年前より明らかには多くなっている。
感覚を豊かに表現。オノマトペ研究が医療分野に活かせる可能性?
『ビッグイシュー日本版』329号の特集に登場するオノマトペ研究者の坂本真樹さん(電気通信大学教授)によると、01年に漫画『シャーマンキング』14巻で、キャラクターがパンを食べる音として使われたのが初めてではないかと話す。その後さまざまなところで使われるようになり、動物の毛などの感触や、魚やゲームキャラクターなどが緩慢に動く様子を表現する時に頻繁に使われるようになったのだという。
『ビッグイシュー日本版』バックナンバー324号表紙の猫のボブも、まさに「モフモフ」
そのようにオノマトペについて様々なことを調査・研究している坂本さんだが、研究のひとつに、それぞれの「オノマトペ」の持つ印象を数値化するというものがある。「フワフワ」と「モフモフ」はどう違うのかなどを数値で表すのだ。
「すべての日本語のオノマトペから答えやすい312語を選び、「明るい︱暗い」「暖かい︱冷たい」など43項目について、被験者に印象を7段階で答えてもらうアンケートも繰り返し行い、結果を「数量化理論Ⅰ類」という統計処理法で解析している。」のだという。
何のためにそんなことを?と思うかもしれない。
しかし研究は医療の現場でも実用化される可能性があるという。
「患者にしかわからない痛み」を、最初の診察の段階で、検査の項目や緊急性をスクリーニングできるようになるというのだ。いったいどのように・・・?
その詳しい内容は、『ビッグイシュー日本版』329号をご覧いただきたい。
さかもと・まき 1998 年3月東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻博士課程修了(博士)。 98年4月同専攻助手、00年4月、電気通信大学に着任、現在電気通信大学大学院情報理工学研究科及び人工知能先端研究センター教授を兼務。16年10月よりオスカープロモーション業務提携。人工知能学会、認知科学会、情報処理学会、VR 学会、感性工学会、広告学会等各会員。12年度IEEE 国際会議にてBest Application Award、14年度人工知能学会論文賞など受賞多数。著書に『坂本真樹先生が教える人工知能がほぼほぼわかる本』(オーム社)などがある。 |
坂本龍馬の「~ぜよ」は司馬遼太郎の作品から? 方言の歴史と未来
坂本龍馬と言えば語尾に「~ぜよ」という方言をつけて話すイメージが一般的だが、果たして会ったこともないはずの龍馬がいつもそのように話すというイメージはどこから来ているのだろうか。
驚くべきことに、龍馬を主人公にした最初の小説『汗血千里の駒』(坂崎紫瀾/1883年)で描かれている龍馬は方言キャラではなかったという。
「68年放送の司馬遼太郎原作の大河『竜馬がゆく』が、龍馬を土佐弁キャラにイメージづけました。以降、どんなドラマや漫画でも龍馬は『ぜよ』。」と話すのは方言研究者の田中ゆかりさん(日本語学/日本大学文理学部教授)。テレビは人々の「方言イメージ」に大きく影響するのだ。
『方言萌え!?――ヴァーチャル方言を読み解く』 (岩波ジュニア新書/田中ゆかり著)より引用
特集では方言の歴史のレクチャーから。日本には、語彙・文法・アクセント・音韻などから総合的に分類する古典的な方言区画では16の方言があり、この地域的差異は、江戸時代の幕藩体制によって一般人の移動が制限されたことで醸成されたと田中さんは話す。
明治期に入って「標準語政策」が推し進められ、方言を話すことが恥ずかしいとされた期間があったものの、1980年代に入って「地方の時代」「個性の時代」が叫ばれ始め、方言に対する風向きが変わったのだという。
それらの方言の歴史を踏まえ、最近の方言事情や、方言の未来について『ビッグイシュー日本版』329号でじっくりと語っていただいた。
たなか・ゆかり 1964 年神奈川県生まれ。専門は日本語学・社会言語学。博士(文学)。日本大学文理学部教授。読売新聞社勤務を経て、早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得中退。静岡県立大学国際関係学部講師などを経て、06 年から現職。著書に『「方言コスプレ」の時代』『方言萌え!?』(いずれも岩波書店)、『首都圏における言語動態の研究』(笠間書院)ほか。 |
ビッグイシュー329号ではこのほかにも、
・スペシャルインタビュー:テニス選手 ノバク・ジョコビッチ
・リレーインタビュー。私の分岐点:安藤和津さん
・国際:Me Too運動の創始者、タラナ・バーク
・ビッグイシューアイ:深夜の路上ホームレス人口調査。ARCHによる「東京ストリートカウント」
・ワンダフル・ライフ:人と山との距離が近く、隠れた物語が見えてくる「低山登山」
・ホームレス人生相談:27歳女性からの「一人旅が好きですが両親が心配します」のご相談。
など盛りだくさんです。
ぜひ路上にてお買い求めください。
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オノマトペを楽しむ書籍
『宮沢賢治のオノマトペ集』
栗原敦監修/杉田淳子編/ちくま文庫
宮沢賢治の作品世界に登場するオノマトペを、気象、風、霧、水、光など13章に分けて収
録。
『日本語擬態語辞典』
五味太郎/講談社+α文庫
日本にやってきた外国人のために、日本語の擬態語(オノマトペ)を、五味太郎氏の味のある一コマの絵、英語と日本語でわかりやすく説明。
『日本語 オノマトペ辞典』
小野正弘編/小学館
日本語の擬音語・擬態語(オノマトペ)4500を収録し、古語や方言もカバー。
方言を楽しむ書籍
『はじめての秋田弁』
こばやしたけし/無明舎
横浜から秋田市のとある学校へ転校した女子学生。最初は理解不能だった秋田弁をクラスの友人たちとの交流の中で身につけていくという設定の四コマ漫画。
『大阪ことば学』
尾上圭介/岩波現代文庫
「言え」という命令形に、東京では8通り、大阪では34通りの表現があるという。
言ウテヤ、言ウテエナ、言ワンカイナ、言ウテンカイナ……。大阪弁の気遣いに開眼できる本。
『これが九州方言の底力! 』
九州方言研究会編/大修館書店
九州には、江戸時代まで九つの藩があった。七つの県になった今も、県ごとに方言も違い変化に富む。九州の大学教員などによる「九州方言研究会」がその研究成果の一端をまとめた。