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(2012年1月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第182号より「ともに生きよう!東日本 レポート18」)




「しゃべる線量計」視覚障害者や高齢者も使える放射線測定器開発!




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(福島県盲人協会と県内の中小企業で開発された「しゃべる線量計」)





東京電力の福島第一原発事故に伴う放射性物質の拡散に悩む福島県で、測定した放射線量を音声で案内する線量計「しゃべる線量計」が開発された。

12月9日には、開発に当たった阿曽幸夫さん(福島県盲人協会会長)、中村雅彦さん(同協会専務理事)、斎藤雄一郎さん(三和製作所社長/福島県大玉村)らが記者会見して、線量計の仕様や開発経緯などを発表した。

「最初に音声を聞いた時は『ここはこんなに線量が高いんだ』とわかってビックリした。これまで私たち視覚障害者は、今この場の線量がわからず不安だったが、これからは自分自身で確認できる。今後の健康管理にも役立てたい」と、阿曽さんは笑顔で語った。

福島県内では7月以降、線量計を買い求める人が急増したが、音声の出る製品はなく、視覚障害者は不安な毎日を送っていた。そんな状況の中、10月中旬に三和製作所などが線量計「ガイガーFUKUSHIMA」を開発したことがテレビで報じられ、これを知った阿曽さんは中村さんを通じて同社に連絡した。

実は、震災直後の政府の会見放送で手話通訳者がテレビ画面に映らず「過去の教訓が生かされず、聴覚障害者が苦労している」という意見が寄せられていたことから、斎藤社長ら開発チームはすでに視覚障害者向けの音声付き線量計の開発も構想に入れていた。そこで福島県盲人協会からの具体的要望を受け、11月以降、両者で開発を開始。「音声で数値を案内する線量計は世界でも初めてでは」と話している。

線量計の内部にはガイガーミュラー管や回路のほか、数値を音声で読み取る基板が内蔵され、視覚障害者や高齢者が聞き取りやすい高さの女性の声で数値が読み上げられる。今後は起動音やダイヤルの位置、スピーカーなどの工夫を重ねて完成させる。価格は5万円で1月下旬から販売開始の予定。

阿曽さんは「視覚障害者一人ひとりにこの線量計を配布したいが、なかなか予算もない。企業や団体などでご理解いただけるところがあれば、ご協力をお願いしたい」と支援を訴えている。予約受付は1月5日から、福島県盲人協会(電話024―535―5275、火~金曜日午前9時から午後4時まで)。

(文と写真 藍原寛子)








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(2011年12月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第181号より「ともに生きよう!東日本 レポート17」)






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ケージに入れられた犬たち。福島市飯野町の保護シェルターにて

被災地福島の犬猫たち、飼い主と離れシェルターで越年へ



東京電力福島第一原発事故に伴い、被災したペットたちの〝受難〟が続いている。半径20キロ圏内の「警戒区域」で保護されたペットは、福島県と福島県獣医師会などによる福島県動物救護本部が県内2ヵ所にシェルターを設置し、一時預かりをしている。

市民からの義援金をもとに、犬210匹、猫70匹、合わせて約280匹が2つのシェルターで飼育されているが、毎日のえさやりやトイレ掃除、散歩などはボランティアにより支えられている。




その一つ、福島市飯野町のシェルターを訪ねた。犬の保護スペースに入ると、一斉に鳴き声が響いた。一匹ずつケージに入れられ、人が近づくと警戒して吠えたり、様子を探ろうと鼻を近づけたりする。

「保護直後は、病気やけが、寄生虫などで体調を崩した犬が多い。ワクチンや虫下しなどを与えた後、2週間は隔離室で様子を見ますが、『この子たちも震災の犠牲者だなぁ』と思います」と、犬担当チーフの栗原泉さん。




県は保護した被災動物の殺処分は行わない方針で、飼い主が不明だったり譲渡可能な犬猫は、ホームページに写真入りで掲載し、希望者に引き取ってもらっている。子犬や子猫はほとんど飼い主が決まっていく。その一方で、飼い主がわかっていても引き取られない犬猫が7~8割を占める。このままでは数百匹の犬猫の滞在が長期化しシェルターで年を越しそうな状況だ。

警戒区域の指定解除の見通しが立たないなか、引き取れない主な理由は「借り上げ住宅では飼えない」「家族の状況や仕事で動物の世話ができない」など。福島県食品衛生課の大島正敏課長は「被災した他県ではシェルター縮小や閉鎖になっているのに、福島の見通しは立っていない」と、保護動物の現状を説明する。

避難先でペットが飼えない問題を解決しようと、県は各市町村に、仮設住宅や公営住宅でのペット同居に向けた入居条件緩和を求める通知を2度出した。通知書には、新潟県中越地震で仮設住宅での動物同居は問題がなかったことも明記された。そのことも功を奏し、ペット同居は進んだが、民間の借り上げ住宅では依然として難しい状況にある。

(文と写真 藍原寛子)
 
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