住宅政策提案書発表シンポジウム「市民が考える住宅政策」大阪編 レポートpart.8を読む

住宅政策提案書発表シンポジウム「市民が考える住宅政策」大阪編 レポートpart.9


空き家が増えているのに、なぜ家賃は安くならない?

オーディエンスC:

平山さんのお話の中であった、民間住宅の空き屋は増加しているにもかかわらず、家賃は高止まりしていて、安くならない理由に関して、もう少し詳しく教えてください。また公営住宅は拡充させていくべきだと思いますが、同時に、低所得者に向けての住宅バウチャー (家賃補助)の制度づくりが行政に求められている、と考えています。住宅バウチャーについてもご意見を伺えればうれしいです。


平山:
今、民間借家の空き家率は約18%です。しかし、多くの家主さんは、家賃を下げてまで貸そうとしない。なぜか。やはり基本は、リスクが大きいという家主さんたちの認識です。滞納リスク、さらに、高齢者や障がいのある方を受け入れてしまうことによるもろもろのリスクを考えて家主さんは家を貸すことに躊躇する。

そしてもう一つ、日本の民間借家市場の大きな特徴は家主さんが持っている物件数が少ないことです。家主の8割以上が個人経営、3割近くは10戸未満、過半数が20戸未満しかもっていない。要するに、家主さんの経営規模が小さい、だからリスクに敏感になるという傾向があります。

たとえば、物件を100戸持っていれば1戸2戸の家賃滞納があっても、経営全体が壊滅的ダメージを受けるということにはならない。ところが、たとえば5戸しか経営していないケースでは、1戸2戸と滞納が出たら、その影響は大きい。または、高齢の方が亡くなったり、病気になったりしたらどうしようと考えてしまう。ですから、もう少し大きい規模でリスクをプールする仕組みを考えていくという方向性がありえるのではないか、と思います。

行政がまずリスク負担の仕組みを考えるべきでありますし、また、民間のNPO、支援団体でもそういうことができるかもしれない。要するに、誰が、どうやってリスクを負担するのか、という問題を解く必要がある。徳武さんの話にもあったように、今は家賃保証会社が増えて、そのマーケットが大きくなっている。その家賃保証会社に、お金を払うのは入居者です。入居者が全部負担するかたちで家賃保証がビジネスになるという仕組みになっている。しかし、繰り返しになりますが、そのリスクは誰がどのような仕組みで負担するのが公正な社会なのか、ということを考える必要があると思います。

もう1点。公営住宅に関してですが、日本では非常に少ない。一方、民間借家がたくさんあるので、それを活用する方策を考えていけばよい、という見方もあります。私がいつも思いますのは、住宅政策を組み立てるときに、一つの手段だけに頼るという「決め打ち」は危険で、公営住宅、民間借家という複数の選択肢を育てる必要がある、ということです。 住宅政策全体については、持家一本槍の方針を保ってきて、賃貸セクターが劣悪なままになってしまった、という問題状況があります。賃貸市場については、今ある資源を活用しながら重層的な施策をつくっていくべきだろうと思います。

公営住宅に関しては、日本では建っていませんし、むしろ減らそうとしている自治体が多い。公営住宅が減るのは「当然」「自然」という認識がある。また、国際的にも、今どき公営住宅を建てている国はもうないだろうと思われている。しかし、それは間違いで、ヨーロッパ諸国ではリーマンショック以降、持家取得が困難になるにつれて、いろいろな国が公的住宅の建設を再開しました。あるいは、中国では、持家の価格が上がりすぎて、若い世代では買えない世帯が増え、不満が拡大したことから、公営住宅の大量建設を開始しています。建たないに決まっている、という認識は改めたほうがいい。民間借家の活用は、ご指摘のように重要な課題です。バウチャーなどの公的家賃補助がないという現状は、先進諸国では特異です。申し上げたいことは公営住宅を大事し、民間借家も活用するということです。

活用できる空き家は意外と少ない

オーディエンスD:

「居住支援協議会」をどのように広げていくことができるのかということを教えていただきたいです。

稲葉:
居住支援協議会というのは、住宅セーフティネット法という法律に基づく仕組みです。これは、国土交通省系の政策になるわけですけれども、国の言うところの「住宅確保要配慮者」、民間の住宅に入居するときに様々な困難を抱えている人たちの円滑な入居を進めるという名目のもとに、各地域で居住支援協議会という組織を作ることができる、と定められています。居住支援協議会は各自治体の住宅課と不動産業界の関係者と入居者の支援している NPO 関係者などによって構成されるということになっています。

現在、国土交通省の方で全国の自治体に居住支援協議会を作ってください、つくれば年間一千万円の予算をつけます、ということで設立を進めているんですが、しかし残念ながらそんなには進んでいません。住宅政策提案書の中に書いたのは東京都豊島区の例です。居住支援協議会の地域によっては、作ったはいいけど、サロン的に年に2、3回会議して終わりみたいな形できちんと調査等をやってないところもあるんですが、東京都豊島区の居住支援協議会は空き家活用ということでかなり積極的に動いています。

空き家の実態調査等も行って、NPO を公募して空き家を活用してもらう。それに対して、居住支援協議会が物件の保証人になるという仕組みを作っています。ただ、これは豊島区のホームページをご覧になっていただけば詳しく報告も出ていますが、残念ながらあまり活用は進んでいないという実態があります。

これは実際、委員をやっている方からも話を伺ったのですが、実際に空き家を活用しようとして空き家の実態を調査するとまず大家さんがそこを空き家だと認めないという問題が生じたそうです。「週末だけ使っている」、「倉庫として使っている」と言って、空き家だと認めない。面倒くさいことに使いたくない、というような意識がどうしても働くみたいで、そこがまず第1のネックになるとのことでした。

空き家だと認めたとしても、次には、NPOなんてよくわからないものに貸したくないと言われるそうです。そこを行政の方が何とか説得して、「では貸しましょう」という話になっても、よくよく調べてみると耐震性の問題があって行政が関わるプロジェクトとしては使えない物件であると判明してしまう。その結果、空き家は沢山あるんだけれども、実際に活用できる物件というのはほんの数%しかなく、なかなかその活用は進んでいかないと聞いています。

そこのところをどうクリアしていくのかという仕組みを作っていく必要があると思っております。東京では東京都として居住支援協議会を作ろうという動きがようやく出てきておりまして、それについて今要望をまとめて出しているところです。作るのであればきちんと実効性のある支援協議会にしてくださいと。そして私達 NPOも入れてくださいということをお願いしている状況になっています。


 

増加する持家の空き家:放置住宅はなぜ増えていくのか

オーディエンスF:

私は普通のサラリーマンです。明日から私はこの住宅の問題にどうやって貢献したらいいのかなというのがいまいちわかりません。明日から私にできることがあったら、ご教授いただければと思います。


阪井:
私のところにボランティアに来たいという方がいらっしゃったら、私がいちばんにお願いすることは声をかけてお友達になってくださいということです。みんな心が寂しい人が多いので、それは障害であろうがなかろうがワンルームにおられて一日しゃべらない方もいらっしゃると思うんですね。まずそのアパートの入口で掃除をしてください。それから声をかけてください。挨拶をしてください。これがうちのアパートに入った時のルールです。コミュニティーを作るにはやっぱり声をかけること。まず声をかけてあげるというのがいちばん最初の基本だと私は思います。ちょっと適正じゃないかもわかりませんが、うちのアパートではまずは挨拶するということが基本です。

オーディエンスF:それなら出来ます。

阪井:はい、よろしくお願いします。

 

オーディエンスG:

私は空き家の件でお尋ねしたいです。私が居住しているのは大阪の北の郊外の住宅地です。

ちょっと歩くだけで数件の空き家を発見します。それも1年3年5年ではなくて、もっと前から空いているらしいんですね。外側から見ますと少々ボロボロですが、住もうと思えば住むのには差し支えない。

ただし、住まいというのは外側から見るのと内側から見るのは全然違いますね。

特に鍵を通していないと中からの腐食が激しい。そういう住宅が沢山あって、一方では、路上生活者がいる。この現実をどうにか解決したいと思わずにはいられないです。


私の友人に佐賀県に持ち家を持っている人がいます。その人は現在東京に住んでいます。だから1年に1回は掃除したり、庭の手入れをしたりしているらしいんです。そのような人もだんだん年を取ると思います。負担になってくると思います。私は、近くに学生がいるなら学生下宿にしたらどうか、とか言ってみるのですが。絶対に貸さないと言います。理由を問い詰めてみると税金対策だというのです。家を人に貸すよりも空き家にしといた方が得なのかなと思うのですがそのあたりのことを聞かせていただければと思います。



平山:今日は賃貸住宅の話題がメインだったのですが、ご指摘のように、持家の空き家も増えていて、とくに郊外部ですとか、都市の縁辺部では、持家の空き家率がきわめて高くなる可能性があります。

空き家の増え方は多様です。地方から東京や大阪に来た方が、地元の家を相続し、それが空き家のままになっていて、地方で空き家が増えるというパターンがあります。大都市では、いま述べました、郊外や縁辺部での空き家増大というパターンがあります。また同時に、市街地では老朽した民間借家の空きが増えているという状況があります。

空き家増大にともなう問題点の一つは、放置住宅の増加です。この放置住宅は、老朽し、場合によっては、危険な状態になっていて、もはや利用できそうもないのに、放置されているという住宅です。

では、この放置住宅を、なぜ、除却しないのか。まず、除却費用を用意できない場合が多いという点。

次に、建物が残っていますと、固定資産税が6分の1になるという特例措置があります。言いかえますと、空き家の持ち主は、除却すると、6倍の税を課せられる、だから、除却しないで放置する、ということになります。

さらに3点目として、既存不適格建築が多いという点があります。大都市の市街地では、建築基準法に適合していない建築が多い。それは、残っている間は、既存不適格として存在を許されているのですが、建て替えるとなると、法律に合った建築しか建てられない。道が狭く、敷地が狭い市街地では、既存不適格建築の建て替えは困難であるか、あるいは不可能です。建築が残っていれば、それに増築することは可能です。このため、老朽した建築であっても、壊さずに残しておくというパターンが増えます。

20世紀の住宅問題というのは住宅がないという問題でした。住宅がとにかく足りない。今は、住宅はたくさんあるのに、そこに入れない、アクセスできない、という問題が大きい。家が必要な人と空き家をもつ家主さん、空き地の持ち主さんをリンケージしていく仕組みをつくっていくことが、政策形成のうえで重要になっていると思います。

鍵は民間の借家をどう活用していくか

司会:ありがとうございました。まだまだ皆さんご発言あるかと思うのですけど今日は時間がここまでということで、最後閉会の挨拶ということで平山委員長からお願いいたします。   

 

平山:最後に一言。今日は、沢山おいでいただきまして、誠にありがとうございました。昨年、ビッグイシューさんからこの「住宅政策提案」という仕事の話をいただいた時、考えたことの一つは、住宅の問題が大事だということをまず訴えたいということでした。

と申しますのは、貧困問題に関しまして、いろいろな人たちがいろいろな努力をなさっているのですが、その大半は、雇用からのアプローチです。貧困問題とは、要するに雇用と所得の問題なんだ、というふうに考える方が非常に多い。そしてその次に福祉の問題が重要だという見方が一般的です。政府だけではなく、支援団体の方々、NPOやボランティアの方も「雇用と福祉の問題」として貧困問題をとらえている。

それは、もちろん、間違いではありません。雇用と福祉は重要です。しかし、私たちが考えましたのは、生活の一番の基本として、あるいは基盤として、住む場所の重要さを主張する必要があるということ、言いかえますと、貧困問題に住まいからアプローチすることの効果が大きいということです。住む場所が安定しないと職探しもできず、福祉があっても、たいして効果がない。まず、住宅が重要なんだ、住む場所の大事さということが忘れられがちなんだ、ということを主張していこうと思いました。

今日、このようなシンポジウムをしないかというお話をいただいた時に、もちろんやりたいなとは思いましたが、ひょっとしたらお客さんが来ないのではないか、と不安でした。しかし、こんなに沢山の方に来ていただきまして、勇気づけられました。どうもありがとうございました。

それからもう一つ。徳武さん、阪井さん、ゲストとしてお越しいただき、ありがとうございました。お二方のお話や最後の質疑を通じてわかってきたことは、民間の借家をどう活用するのかがキーポイントになる、いうことです。

公営住宅をどうすればよいのかは以前から重要なテーマですし、今でも大きな主題です。しかし、現在の大都市で低所得の人たちの生活を支えるには、空き家率の高い民間の借家をどうやって役立てるのかが不可欠のテーマになります。お二方にお話しをしていただき、この点の確信が深まったことは、今日のシンポジウムの成果だと思います。

最後に、いつも丁寧な仕事をしていただいているビッグイシュー基金さんにこの場を借りて御礼申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。私たちのグループの仕事は今日で終わりではありません。住宅の大切さ、それに関する政策のあり方について、これからも発信していきたいと思います。みなさまと意見交換をしたり交流したりする機会をまた得たいと考えておりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。本日は、ありがとうございました。

住宅政策提案書発表シンポジウム「市民が考える住宅政策」大阪編

part.1
徳武聡子さんが語る「追い出し屋問題」のいま:目立つ過酷な家賃取り立て

part.2

part.3


part.5


part.7

part.8

part.9
平山洋介氏が語る、「放置住宅」が増えていく3つの理由(本記事)

資料
「住宅政策提案書」:2013年11月1日






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