「私は決して路上のビッグイシュー販売者を無視しません。  彼らは、もう一度やり直そうとしているのですから」

マンチェスター・ユナイテッドを世界一のビッグ・クラブに育て上げた伝説の名監督、サー・アレックス・ファーガソン。彼はストリートペーパーの大ファンでもある。ビッグイシューの独占インタビューに応えて、引退後の充実した生活について語ってくれた。

(by David McDonnell / (c)www.street-papers.org / The Big Issue UK / 2015年1月12日掲載)

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(Photo : Phil Noble)


今はマンUの試合を見ても 激昂することはない

四半世紀以上、彼は英国サッカー界の顔だった。

引退から1年半が経ち、短気な熱情家として知られるサー・アレックス・ファーガソンは、もはやマンチェスター・ユナイテッドの試合を見て激昂することはないそうだ。

彼が26年半の統治を終えて以来、オールド・トラッフォード(※マンチェスター・ユナイテッドのホームスタジアム。1910年に開場した、英国屈指の名スタジアムの一つ)の煌めくスター選手たちは、辛い時間を堪え忍んでいる。[ファーガソンの後任の]デヴィッド・モイーズは大崩れし、新監督のルイス・ファンハールが、自分の哲学を打ち出そうと今なお悪戦苦闘を続けている。

しかしファーガソンは、かつての古巣がこのシーズンに進歩をとげたのを見たと話す。昨年11月のマンチェスター・シティとのダービー戦(※同じ街のライバルであるユナイテッドとシティの対戦は、「マンチェスター・ダービー」と呼ばれ、両サポーターが熱狂的に盛り上がる)を、1-0で競り負けた時でさえ。

「今ではあまり感情的にならずにチームを見に行けますよ。つまり、私たちはシティに負けましたが、善戦しました。素晴らしいプレーがたくさんありました。もし11人で戦えていたら(ユナイテッドは前半にクリス・スモーリングが退場処分を受けていた)……と思いますが、言っても仕方のないことですね」

そしてファーガソンは、ユナイテッド引退後の人生について話し始めた。


リタイア? 誰のことでしょう?私は今が一番忙しい

「私は本当に今の生活を満喫しています」と彼は言う。

「自分のサッカー生活を楽しんでいますし、家族や友人との時間も、楽しんでいます」

「私はユナイテッドの親善大使で、理事会のメンバーですから、今でも多くの試合を見ています。ただ、更衣室のジョークは、選手についてはもちろん、裏方のスタッフについても、もはや私の耳には届きません」

「掃除係も、コックも、管理部門の人々も、道具係も、みんな素敵な人たちです。以前より接する機会は減りましたが、いつも本当に礼儀正しく誠実です」

ファーガソンは監督時代、毎日明け方に起きて、ユナイテッドの練習グラウンドに最初に来ることを習慣としていた。そのスケジュールは73歳を迎えた今もハードである。

「リタイア? 誰のことでしょう? 私は今が一番忙しいですよ」と冗談を言うファーガソン。「いわゆる“引退生活”と比べると、ずいぶん慌ただしい人間に見えるかもしれませんが、監督時代のように終始プレッシャーにさらされることはなくなりましたから。私は動き出すと元気になるんです。今朝もジムでバイクを漕いできましたよ。体調維持に欠かせませんね」


“Hand up, not Hand out”? 素晴らしい!

ファーガソンは、引退後に多くの社会的ベンチャー企業の支援もしていると言い、ホームレスを路上からなくそうとするビッグイシューの試みを称賛すると話してくれた。

ウィルムズローの彼のオフィスで、机上の手紙の山からビッグイシューの11月号の雑誌を探し出すと、彼は言った。「私は決して路上のビッグイシュー販売者を無視しません。彼らは物乞いをしているのではなく、もう一度やり直そうとしているのですから」

「販売者が1冊か2冊しか雑誌を持っていなくても、彼らは雑誌を売り切ってお金をもう少し稼ぎたいでしょうから、私は10ポンド紙幣をやってあいさつすることもあります。しかしそれは、自分がビッグイシューの記事を読むのが本当に好きだからなのです」

「ここに何と書いてあります?」と彼は雑誌を見て言った。

「“施しでなく、立ち上がるための差し伸べよう(Hand up, not hand out)”? 素晴らしい!」

「ユニセフ大使として、それに、マンチェスター・ユナイテッドが13年間務めた『ユニセフ・パートナーシップ』を通じ、私は国内外の多くのプロジェクトを訪問しました。若者、特に孤児たちがどのように悩み苦しんでいるかを聞くと、いつも気持ちが打ち砕かれます。ただ、私はこの頃、イギリス国内のことが、より気になるんです」

「私は、マンチェスターの多くのチャリティ事業や(自分の育った)スコットランド・ゴヴァンのハーモニー・ロー・ユースクラブの発展に関わっています」

「このクラブの後援者となり、最新技術を取り入れたピッチを建設するために、160万ポンドの資金を集めました。自分自身のチャリティ活動もありますし、こうした資金集めを目的として、公の場でのスピーチを多くこなしています」


ハーバードでリーダーシップについて講義。若い才能を見いだすこと

ファーガソンは引退後、ハーバード・ビジネススクールで、自らの経営・指導術に関する講義を学生に行うなど、活動範囲を広げている。

「楽しい仕事ですよ。ボストンでは一連の講義の終わりに、学部の教授たちへ話をしたのですが、その際私が指摘したのは、若者に刺激を与えてやることは、教育を授けることと同じくらい重要だということです」

「その時に将来の逸材をどのように見つけ出し、育成するかについて少し話し合いましたが、それは、私がサッカー人生を通じて行ってきたことでもあります」

「ポール・スコールズ[マンUで約20年間プレーした主力選手。身長168センチの小兵ながら、世代最高のMFといわれた]を最初に見つけたときは、瞠目しました。私は『小柄すぎる』と思いました。しかしそれは、育ちつつある天性の才能の到来の時でした。そして、彼を採用するという選択は、とてつもなく大きく報われたのです」

「若い才能を見いだすことは素晴らしい挑戦です。とはいえ講義では、私は主にリーダーシップについて話していますし、それは私に向いているテーマだと思います」

「私も記憶力に自信のある方ですが、パトリス・エヴラ(※フランス代表でもあるマンチェスター・ユナイテッドの選手)にはかないません。頭脳明晰そのものです。5か国語を話すことができ、それは選手同士のコミュニケーションに大いに役立ちました。性格も良かった。父親は外交官だそうですが、彼もまさにそういう人間でした」

「さらに優秀な人もいます。ディエゴ・フォルラン(ウルグアイ人サッカー選手。マンチェスター・ユナイテッドには2000年代前半に在籍し、2014年にセレッソ大阪に移籍)はどうでしょう? 彼も語学の達人で、5か国語ぐらいを見事に話せました」

「[セレッソ]大阪と契約を結んだ時、フォルランは約1週間、事前準備し、5分間のメディアのインタビューを日本語で(!)行ったとのことでした。なんと素晴らしいことでしょう」

ファーガソンは現在、自伝を執筆中で、引退後の最初の1年について新たに2章を書き加えたところだという。


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(Photo : Andrew Yates)

(David McDonnell/(c)www.street-papers.org / The Big Issue UK)






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ビッグイシューについて

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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると半分以上の180円が彼らの収入となります。