筆者の住む街には毎年2月上旬、恒例の「ホームレスデー」がある。

元ホームレスの男性が始めたイベントで、人々が市役所近くのダウンタウン一帯で、寒空の下、段ボール製の「仮設住宅」に一泊しながら、道行く人に募金を呼びかける。

今年の募金目標額は10万ドル(約1200万円)で、イベント当日、すでに8万ドル以上が集まっていた。路上生活者に食料や衣類を配る原資になる。

こうして、ホームレスのことを気にかける人々がいることは、本当に素晴らしい。

だが、ホームレスや物乞いは一向に減らない。筆者はイベントの翌日、同じダウンタウンで黒人の若者に、「食べ物を買うお金をください」と声をかけられた。

その同じ青年が数週間前、韓国人とみられる若い女性に食事をおごってもらっている光景を見たこともある。

また別の日には、路上で60代くらいの背の低い白人の男が、70代前半と見受けられる、背の低い弱々しい感じの黒人の物乞いに、「なんで、お前さんの酒代までやらなきゃならんのだ」と非難を浴びせているのを耳に挟んだ。

たぶん、「数ドル恵んでくれないか」あたりから会話が始まったのだろう。

「路上生活者や貧困層を援助しても、酒やたばこや麻薬にカネを使う」は、断りの常套句だ。

結局、ホームレスデーは焼け石に水のように見える。

ホームレスにとっては毎日がホームレスの日であり、個人の温かい善意や金銭的援助だけでは、残念ながら問題の根源に届かない。

ホームレスが立ち直るには食料だけでなく、職や住宅も必要だ。多くは家庭の事情や借金や病気など、ひとりでは抱えきれない問題を背負っている。

結局は、各種の社会制度の設計に行き着く。

法律を改正し、仕組みを根本から変え、弱い者いじめを恥ずかしい犯罪とし、力ある者を縛り、底辺の者にも脱出の糸口が見えるようにしなければ、解決はない。

だが米連邦最高裁はここ数年、富裕層や企業からの政党への献金上限額を撤廃し、ますます政治が力のある者に操られるよう手助けしている。閉塞感は強まるばかりだ。





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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると半分以上の180円が彼らの収入となります。