ビッグイシュー・オンライン編集部より:本誌連動企画として、「中央ろうきん若者応援ファンド」の特集記事をお届けします。

[この記事は「中央ろうきん若者応援ファンド」の提供でお送りしています]


日本へ来た子どもたちが夢を語り、普通に暮らせるように外国人の生活や学習、地域との交流をサポート

理事長石井ナナヱさん 手前中央 とメンバーの皆さん

(理事長石井ナナヱさん(手前中央)とメンバーの皆さん)


2万人以上の外国人が暮らす埼玉県の東武東上線沿線を中心に、彼らの暮らしをあらゆる側面からサポートしている「ふじみの国際交流センター」。特に10代で移住してきた子どもたちへの支援について、石井ナナヱ理事長に聞いた。


親の都合で呼び寄せられ 来日直後から単純労働に

 理事長の石井ナナヱさんはもともと、公民館で日本語教室を運営していたが、外国人とかかわるうちに「外国人が自由に集まり、日本語を勉強でき、夫のDVから逃れた外国人妻の駆け込み寺となるオープンスペース」の必要性を感じるようになり、97年、10人の有志と「ふじみの国際交流センター」を立ち上げた。

 現在、日本語教室、パソコン教室、外国人と日本人が交流する「多文化サロン」、子どもたちが日本語を学ぶ「国際子どもクラブ」の他に、DV被害に遭った外国人女性のためのシェルターを運営している。さらに、生活に必要な情報をまとめた『インフォメーションふじみの』を7ヵ国語で隔月発行、多岐にわたる生活相談を多言語で受けている。昨年は、652件の生活相談が寄せられた。これらの活動は外国人を含む大勢のボランティアによって支えられている。

たくさんのボランティア協力による日本語の個別指導教室

(たくさんのボランティア協力による日本語の個別指導教室。ボランティア参加についてはこちら


「ここへ勉強に来るのは中国やフィリピンの人が多いです。なかでも深刻なのは、10代で母国から呼び寄せられた若者たちです。日本人との再婚などで定住者ビザを持つ外国人が母国に残してきた子どもを呼び寄せる場合、未成年で未婚の実子なら定住者ビザが申請できるので、15〜17歳で来るケースが多いのです。

そういう子は最初の2週間ほどはここへ顔を出しても、3週間目からはもう働かされている。仕事の大半は工場で野菜を洗ったり、弁当を詰めたりする単純労働です。

町で見かけて声をかけると、親は『元気にお金を稼いでくれています』と言うが、日本語もままならない子どもは将来の夢さえ語れずに暗い表情を浮かべていて、親子の認識の違いに愕然とする」と石井さんは言う。


日本語がわからず心閉ざす子どもたちが、普通に働ける社会に

 そんな若者の職業選択肢を増やすためにも、せめて高校は行かせたいと、石井さんらは学習支援に奮闘するが、現実は厳しい。

母国では成績優秀だったのに、日本語がわからないため全日制高校に合格できず、心を閉ざしてしまった中国人の男の子がいます。県内には、英語と数学だけで受験できる“外国人特別選抜”制度のある高校がありますが、受験可能枠であっても合格できるとは限りません」

 一方で、「中学3年の時に中国から来た男の子は高校生になった今、ここで自分がしてもらったように、後輩の入学説明会に同席したり、制服を買うのに付き添ったりしています。相談に来たのがきっかけでサポートする側のスタッフになった外国の方もたくさんいます」


みんなで一緒にごはん

 今年は「中央ろうきん若者応援ファンド」の助成を受け、中・高校への働きかけの強化や、通いたい若者に交通費を支給するなど新たな取り組みを始めた。日本で暮らす外国人は約210万人。うち7割近くが永住者・定住者などの資格をもつ「これからずっと日本で共に生きていく人たち」だ。

「ぜひ、彼らと交流してみてください。彼らは日本人が考える以上にそれを望んでいるし、私たちが普段気づかないことに気づかせてくれます。縁あって日本に来た人たちやその子どもたちが普通に社会に参加し、働いて税金を払えるくらいの暮らしができるような社会になってほしいと願い支援を続けています」


*活動を支えてくださるご寄付・ご協力を求めています。

http://www.ficec.jp/supporter/supporters.html

認定NPO法人 ふじみの国際交流センター(FICEC=ファイセック)

1997年設立。埼玉県ふじみ野市、富士見市、三芳町を中心に、地域の外国人への生活支援、日本語指導など、多文化共生の街づくりを目的に活動している。

参加・寄付などのお問い合わせ先

TEL 049-256-4290


中央ろうきん社会貢献基金について

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ろうきんは、はたらく人のための非営利・協同組織の福祉金融機関。

中央ろうきん若者応援ファンド」は、家庭環境や経済状況、病気や障害などの社会的不利・困難を抱え、不安定な就労や無業の状態にある若者の自立支援に取り組む団体を応援する助成制度(2014年10月創設)。認定NPO法人ビッグイシュー基金をアドバイザーに迎え、NPO支援組織の協力のもと、2015年は9団体に総額1,000万円を助成している。