ビッグイシューオンライン編集部より。1月1日発売の302号から、毎号各地のビッグイシュー・ストリートペーパーの販売者を紹介している「今月の人」を転載します

中世からものづくりが盛んだった、ドイツ南部の都市ニュルンベルク。美しい街並みを残すこの街は、ナチ党が最初に権力を掌握し、第二次大戦後には連合国による裁判が行われた地でもある。

身長2メートル以上ある66歳のカールハインツ・シュナーベルが立つ姿は、さながら巨人のようだ。決して順風満帆な人生ではなかったが、彼は常に前向きに生きてきた。現在はニュルンベルクで最大のショッピングセンターにて『シュトラーセン・クロイツァー』誌を販売する彼は、「お客さんとの交流は何ものにも代え難いよ」と言うと、笑顔を見せた。

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Photo: Bogdan Itskovskiy

 長い間、ドイツ東部のノルトライン=ヴェストファーレン州に住んでいたというカールハインツ。

「私がニュルンベルク、自分の故郷であるフランケン地方に戻ってきたのは、ここで仕事を得られる可能性があったからなんだ」と話す。「私は熟練の工具製作者であり、電気通信技術者だった。でも2002年に失業し、次の仕事をノルトライン=ヴェストファーレンでは見つけられなかった」
「それと同時期に結婚生活もうまくいかなくなった。
そして不運なことに、ニュルンベルクでの仕事も、若いチームの中で年齢が高すぎるという理由でダメになってしまった。私の年齢は、事前に知らせてたはずなんだけどね。
失業している間に、私はNCプログラミングと機器の設置を行う資格を取得したよ」

――シュトラーセン・クロイツァー誌のことはどのように知ったのですか? 
「刑務所でだよ!(笑)  私は交通違反の点数が多すぎて、95年に免許を失ってしまった。当時の私はノルトライン=ヴェストファーレン州の遠く離れた田舎から通勤しなければならず、免許を持たずに運転していたんだ。警察に捕まり、2000ユーロの罰金を課されたが、お金がなかったから、その代わりに8週間刑務所に入ることになった」
「そこで友人のベルトラムと出会った。彼も罰金が払えず、私と同じように刑務所に入っていた。彼が私をシュトラーセン・クロイツァーに連れて行ってくれ、以降ずっとかかわり続けている。最初は文章を書くワークショップに参加し、次は雑誌の販売者になり、その後は市内の観光ガイドとして雇われた」
「その後、理事会から販売者代表に選ばれ、また同時期に営業部長になった。でも11年には個人的な理由でその職を辞した。13年からはローテンバッハ・ショッピングセンターの格好の場所で再び販売の仕事を始め、かなりの常連客をもっているよ」


――順風満帆とはいえない人生を、どのようにして切り抜けてきたのですか?
「もちろん私はずっと幸運だったわけじゃない。でもそれは他の人たちも同じはず。私は95年に心臓発作を起こし、02年には失業、03年には運転免許を失い、そして04年には夫婦関係が危機に陥り、06年に離婚した」
「失業して誰にも雇ってもらえないというのは本当につらかったよ。その状況から抜け出すのに、シュトラーセン・クロイツァーが大きな力になってくれた。12年には再び心臓発作を起こしてしまい、身体的な後遺症は免れたものの、再度話せるようになるまで言語聴覚士のところへ通わなければならなかった。でも私にとって最もつらかった経験とは、娘の死だった。彼女は39歳という若さで3人の子どもを残し、がんで亡くなったんだ」

――将来にはどんな希望を?
「今のまますべてのことを続けていきたいし、できるだけ健康でありたい。自分が望む人生を築き上げ、どこかに依存せずに暮らしていけるのは本当に幸せなことだよ。それとあと数年はシュトラーセン・クロイツァーの販売を続けたいと願っている。雑誌を購入してくれるお客さんとやりとりをしていると、多くの人があたたかい反応をしてくれ、私の人生を豊かにしてくれるからね」

 (Sabine Beck/ Strassenkreuzer, INSP.ngo

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 『シュトラーセン・クロイツァー』
1冊の値段/1.80ユーロ(約210円)。そのうち90セントが販売者の収入に。 
発行回数/月刊 
販売場所/ニュルンベルク






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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると半分以上の180円が彼らの収入となります。