2017年6月の1か月間、ジュンク堂書店大阪本店(堂島アバンザ)で「ビッグイシュー日本版」のバックナンバーフェアを開催しました。

これを記念して、ビッグイシュー304号「にぎやか、問題解決―いいね!図書館」特集で取材をさせていただいた、伊丹市立図書館「ことば蔵」から館長の綾野昌幸さんをお招きしてトークイベントを開催しました。

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登壇者:
綾野昌幸さん(「Library of the Year」2016年度大賞の伊丹市立図書館「ことば蔵」館長)
福嶋聡さん(ジュンク堂書店難波店店長)
水越洋子(ビッグイシュー日本版 編集長)
<司会進行>土田朋水(ビッグイシュー日本版 副編集長)




土田:
 『ビッグイシュー』は通常、本屋さんでは売っておらず、駅前や街角などの路上でしか買えない雑誌です。雑誌を売っているのは、全員ホームレス状態にある方々で、雑誌1冊の売り上げ350円のうち、180円がその方の収入になるという仕組みです。

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『ビッグイシュー』がホームレス支援の雑誌だということを知らない方も多いんですが、それ以上に「雑誌の中身がよくわからない」という方が、まだまだたくさんいらっしゃいます。やはり路上で販売をしておりますので、どうしても本屋さんのように気軽に試し読みができない、ということがあり、雑誌の中身に触れていただく機会が限られてしまいます。

そういったこともありまして、今回はジュンク堂大阪本店の小笠原店長のご厚意でバックナンバーフェアを開催、あわせて304号の特集「にぎやか、問題解決―いいね!図書館」にちなんだイベントを開催させていただきました。テーマは、「今、本屋で図書館を考える」です。

本を読まない人が増えつつある今、雑誌、図書館、書店はどうあるべきか

2014年に文化庁が実施した国語に関する世論調査によると、1カ月に「3冊以上の本を読む」と回答した割合は、約18%。一方で「まったく読まない」と答えた人が、約48%で半数近く、最も多くなりました。これは15年前と比べても、10%ほど増加しているということです。確かに最近は、本や雑誌に代わってSNSやYouTube、ゲームなどに時間を費やす人が増えてきたと思います。その中で改めて、人間の知というものを長いあいだ担ってきた、本、雑誌、図書館、書店というものを、時代の変化の中でどう捉え直していけるのか、ということや、本を貸す図書館と、本を売る書店が、これからどのようにいい関係をつくっていけるのか、というのを今日ちょっと皆さんと一緒に考えてみたいと思っております。



綾野:
伊丹市立図書館「ことば蔵」からやってまいりました綾野です。伊丹市立図書館というのは5年前に宮ノ前という街なかのほうに移ってきました。
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綾野昌幸(あやの まさゆき)さん
市民参加を重視した公園のような図書館を目指した、伊丹市立図書館「ことば蔵(ぐら)」の館長。 伊丹生まれ、伊丹育ち。大学卒業後は伊丹市役所へ。これまで地域の伝統行事の復活、「伊丹まちなかバル」の イベントの開催などを、市民と一緒に進める。先進的な図書館を表彰する「Library of the Year」の2016年大賞受賞。

「Library of the Year」の図書館館長は、図書館の利用者カードを持っていなかった!?

開館まで10カ月ありましたので、市民の方や商業者の方や、ネットワークを持っていた方と、どうやっていこうということを相談しました。図書館の職員だけでイベント考えるのは限界があると思ったんですね。まして自分は、恥ずかしい話、図書館に行っていなかったんです。「何か本を読まなあかんということになったときは、ジュンク堂さんなどに来て、本を買えばええ」と思ってた。返すのも面倒くさかったし、恥ずかしい話、図書館の利用者カードすら作ってなくて。図書館の職員とコミュニケーションするなかで「ありえへん!」と言われて慌てて作りまして、そこから借りるようになりました。

自分はそれまで図書館に行かなかった人間なので、自分をターゲットにしたんですね。「図書館に今まで足を運べへんかった者が、どうやったら図書館に来るんやろ…」と。そして、どうやっていくかを、自分一人じゃなくて、市民の方と一緒に考えていきました。「図書館は1階に交流フロア、広いスペース、地下には多目的室などがあるけど、あなたたちなら、どんなことをやっていただけますか」といった対話をいたしました。

開館前から、そういう会議を重ねていましたので、開館のときまでにいろんなアイデアが出てきました。もちろん図書館の職員もアイデアを出しました。

開館当時は、イベントに関しては今よりは少なかったんですけど、新しい形の図書館としてスタートしました。
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▲ことば蔵外観(ことば蔵ホームページより)


我々は現在も運営会議というのをやっています。夕方6時半から8時まで、1時間半ほどの会議ですが、毎回新しい方が来られるなど、たいへん活発なんですね。その中に「やりたいこと発表会」というのがあるんです。毎回4人、5人ぐらい手を挙げはるような感じです。出していただいた企画に対して、参加されている市民の方も「もっとああしたらええやん」「ここをこうしたら、もうちょっと本とか言葉に絡められるんちゃうの」みたいな、いろんな意見をその方に対して言ってくださるんですね。

「市民から出された企画はほぼ100%やる方向で考える」

図書館としてのイベントをやってますので、公民館とは違います。例えば「ダイエット講座」みたいなことをやったりするんですけど、単に「ダイエット講座」やるだけじゃあかん。来ていただいた方々が図書館のファンになってくださるように、「ダイエット講座」をやるときはダイエットに関する本を司書の方にお願いして並べたりして、「これ、あとで上の階で借りられますよ」というような形でご案内したりしています。こういう運営会議で出された提案については、ほぼ100パーセントに近い形で、やる方向で考えています。実現するにあたって「ここ、こうしたらええやん」「もうちょっと期間をもって、広報したほうが人集まるよ」とか、いろんなことを市民の方と図書館の職員が言い合いながらつくりあげているのが運営会議という形です。
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▲「ことば蔵」運営会議(ことば蔵ホームページより)


 例えば6月でいえば17日土曜日「コトバーシティ英語読解講座」というのがあります。市民企画の講座であったり、催しがたくさんあるというのが、伊丹市立図書館の特徴で、昨年「Library of the Year」の大賞を、おかげさまでいただけましたのも、そういった市民の方の力があってこその大賞だったと思っています。

「ことば蔵」運営会議のチラシにはこんな言葉があります。 「え? これも図書館で?」「私も何かできるかも」「誰もが主役になる会議」「図書館で人生が変わった」「地域の記憶を大切に」と。 「地域の記憶を大切に」というのは歴史的なストーリーを大切にしている、ということです。

図書館で「書店VS図書館」のガチバトルイベント!?

実は伊丹市立図書館も、いろんな企画をやっている中で、本屋さんとタイアップしていろんなことをやってきました。一つは開館して1年ぐらいだったと思うんですけど、「書店VS図書館」というのをやったんですね。ほんまに本屋さんと図書館というのは共存できるんか、みたいな感じで、実際に伊丹市内の本屋さんに来ていただいて、図書館の職員とガチ(本気)でバトルみたいなことをやりました。図書館のほうは司書の方も出ていただいて、いろんな話をしていく中で、落ち着くところは、伊丹市内で読書や本を好きになってもらうというのを、お互い大事にしていってWin-Winでいこう、となりそこから生まれた企画もありました。

今は「帯ワングランプリ」という本の帯を作っていただく企画があります。公募ガイドという本に載せていただいているので、全国からいろんな帯が伊丹市立図書館にたくさん届きます。その本の帯を、「ことば蔵」のほうでも展示して投票していただくんですが、市内の本屋さんでも展示していただいて、投票していただいたりしてます。最終的に「伊丹本屋大賞」というのを、各書店に選んでいただいて、その選んでいただいた帯をコピーして巻いて、そこの店でその本を販売してもらうという企画です。
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▲昨年度の受賞作品(伊丹市ホームページより)

 「書店VS図書館」というのと、「帯ワングランプリ」、今まではそういった形で本屋さんのほうとタイアップしてきました。伊丹市立図書館「ことば蔵」の概要になったかどうか分かりませんけど、今までの経緯です。

<トークイベント2に続く>








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ビッグイシューについて

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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると半分以上の180円が彼らの収入となります。