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77年から1140トン再処理ー「もんじゅ」の廃止で使えなくなったプルトニウム

東海再処理工場(茨城県)の廃止申請が、6月30日に原子力規制委員会に提出された。



東海再処理工場(茨城県)の廃止申請が、6月30日に原子力規制委員会に提出された。提出したのは日本原子力研究開発機構(以下、「機構」)。1977年に再処理を開始して以来、幾多のトラブルに見舞われたが、中でも大きかったのは97年3月に起きた低レベル放射性廃液をアスファルトで固める施設での火災爆発事故だ。「もんじゅ」事故の2年後のことで、これを契機に動燃改革が迫られた。翌年に核燃料サイクル開発機構と改名、05年に日本原子力研究所と合併して現在の名称になった。

これまでに1140トンの再処理を行ってきたが、その大部分は電力会社との契約に基づくもので、取り出したプルトニウムはおよそ7・5トンと推測される。これらは主として「機構」が進める高速増殖炉「もんじゅ」で利用することになっていたが、14年には老朽化から東海再処理工場廃止の方向が明確になった。現在も約4・1トンのプルトニウムが同施設に貯蔵されているが、「もんじゅ」の廃止で消費できないままになる可能性も出てきた。

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提出された廃止措置計画認可申請書によれば、廃止にかかる費用が7700億円、加えて廃液の固化などの作業をするために利用する施設の運転に2170億円、合計で約1兆円が必要だとしている。この処理工場の建設費は1530億円、13年までの総事業費は7800億円だったので、これに匹敵する費用が廃止措置にもかかる。

廃止に必要な期間は70年と試算。契約量の再処理を終えるまでの運転期間が30年程度で、廃止措置にはその倍以上の期間が必要になる。不要になる施設については除染作業などを実施した上で解体を進め、最後に低レベル放射性廃棄物の貯蔵建屋の解体となる。

もっと大変!トラブル続く六ヶ所再処理工場
総事業費は13・9兆円超に

長期になる理由は、廃止する施設群が30を超えることに加え、放射性廃棄物が極めてずさんに扱われてきたことも関係している。6月6日に「機構」の燃料研究棟(茨城県大洗町)で被曝事故が起きたが、これも放射性廃棄物がきちんと貯蔵されずに長期間放置されていたことが原因だった。また、10年程前には東海再処理施設で高レベルの廃棄物を地下貯蔵庫に上から放り込むなど「不規則に貯蔵」されていたことも明らかになった。

液体状で放置されている廃棄物のうち高レベルはガラス固化し、低レベルはセメント固化などを行い、処分可能な形状にしなければならない。そして、これらの作業を行う設備は当然、新規制基準に合格しなければならず、耐震補強も求められる。

以上のような体質の「機構」に廃止措置がきちんとできるのか、非常に心もとない。規制委員会だけでなく、当該自治体や市民の監視の目が必要だろう。

しかし、さらに大事なことは、この試算が放射性廃棄物の処分地が決まっていることを前提としていることだ。もし決まらなければ、貯蔵を継続することになり、廃止までの期間はさらに延び、費用もかさむ。

東海再処理工場の例で廃止の大変さが明らかになったが、度重なるトラブルで完成延期を繰り返している六ヶ所再処理工場(青森県)はどうだろうか? 


7月3日には総事業費が13・9兆円に増えたことを使用済燃料再処理機構が公表した。04年の評価時点では11兆円、11年には12・6兆円、そして今回さらに増加した。うち7000億円は規制基準に対応するためだ。建設費は4倍の2兆9000億円に膨れ上がった。

しかし、これは廃止措置費用が04年時点の1兆6000億円のままでの見直しである。処理の規模が東海の4倍であるから、おそらく廃止費用はさらに増え、廃止期間も30年程度では収まらないだろう。

時間が経てば経つほど、費用がかさむのが原子力の特徴だ。放射性廃棄物の処理・処分費も見積もり直すたびに高くなっていくだろう。すなわち後の世代の負担は増える。このまま六ヶ所再処理工場は運転せずに廃止されるべきだ。
 (伴英幸)

(2017年8月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 316号より)


伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)







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