10月25日、廃炉作業中の新型転換炉「ふげん」の使用済み核燃料をフランスへ運ぶための準備契約が、日本原子力研究開発機構(以下、機構)と仏オラノ社(旧アレバ社)との間で締結された。報道によれば、燃料搬出に必要な輸送容器の認可を両国で取得し、2018年~23年度に4基の製造が行われる。その後、26年度まで年1回の割合で、計466体の使用済み核燃料をフランスへ搬出する。実は「ふげん」の使用済み核燃料は東海再処理工場内(茨城県)にも265体が貯蔵されており、それらも併せてフランスへ搬出されるという。そのために60億円の予算が要求され、別途2基の輸送容器が製造される。






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手前から敦賀1号、八角形の建屋が2号、一番奥に白い屋根が少し見える建物がふげん 
Photo:片岡遼平

運転終えて、2026年度から使用済み466体をフランスへ

「ふげん」の名前は普賢菩薩からきている。純国産の原子炉の実用化を目指して賢者にあやかって命名された。発電が技術的に成立するかを確かめる原型炉として、福井県敦賀市に電気出力16・5万kW(※1)で建設され、1978年から2003年までの25年間におよそ200億kWh(※2)を発電して運転を終えた。この間に使用された核燃料は2459体。これまでに東海再処理工場で728体が再処理された。

※1 kW(キロワット)…電気を作る能力(発電容量)
※2 kWh(キロワットアワー)…発電した電力量


なお、「ふげん」の次の実証炉は青森県の大間町に建設予定だったが、建設費の高騰を理由に電力会社が受け入れを拒否。これにより純国産原子炉の夢は断たれた。「ふげん」の解体作業は08年から始まっている。

解体に伴う放射性廃棄物もそうだが、とくに使用済み核燃料について、西川一誠福井県知事は速やかに県外へ搬出することを強く求めている。当初の計画では、12年までに東海再処理工場へ搬出予定だったが、11年3月の東北地方太平洋沖地震により搬出できなくなり、5年間の延期を福井県にお願いして了解を得た。しかしその後に、東海再処理工場の廃止が決まったことから、使用済み核燃料の将来の扱いが不透明になった。そこでとりあえず、県外搬出時期のさらなる9年間延期を求め、18年3月に県に了解された。同時に18年度上期に、県外搬出の具体的な計画を明示するよう求められていた。その具体的計画が今回の搬出計画である。


プルトニウムに使い道なし。再処理しない道を探れ

貯蔵だけなら、福井県から現在265体が貯蔵されている東海再処理工場に持ち込むことも可能だ。問題は日本が使用済み核燃料の再処理を政策としており、「ふげん」の廃止措置の許可申請の中で、再処理することを明記していることだ。東海再処理工場は廃止が決まり、青森県・六ヶ所再処理工場は「ふげん」燃料再処理の許可を得ていない。そこで、フランスとの契約になったと考えられる。

準備契約と言っているが、準備の後には再処理契約につながるだろう。でなければフランスが引き受けるはずがない。同国では海外の放射性廃棄物の貯蔵業務は禁止されているからだ。

「ふげん」の燃料の再処理によって、およそ1・3トンのプルトニウムが回収される見込みだ。このプルトニウムの使用計画については、再処理契約を結ぶ前に公表するという。すでに機構は4トンものプルトニウムを東海再処理工場内に保管しているが、具体的な使用計画は立てられていない。今回の再処理で、さらにプルトニウムの余剰が増える。

廃炉になった「もんじゅ」の使用済み核燃料についても、フランスでの再処理という路線に乗ってしまえば、さらに3トンほどのプルトニウムが余剰として追加され、使い切れないプルトニウムを抱えることになるのは必至だ。

原子力委員会は7月31日にプルトニウム利用の基本的な考え方を決定した。これによれば、研究開発に利用されるプルトニウムの「当面の使用方針が明確でない場合には、その利用又は処分等の在り方について全てのオプションを検討する」としている。研究開発での利用とは機構による利用のことである。従来、再処理は国の政策という理由から、オプションの検討などまったくなされてこなかった。再処理をしてもプルトニウムの使い道がないのだから、これを契機に政策を転換し、再処理契約を結ばず、他のオプションを検討するべきだ。

※平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境汚染への対処に関する特別措置法

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(2018年12月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 348号より)


伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)
http://cnic.jp/








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