ドイツのニュルンベルク市、ゴステンホーフ地区にあるこのシェアハウスは、一見何の変哲もない学生向け住居だ。でもここに暮らす5人の住人たちのライフスタイルは独特だ。買い物はしない、そのかわりに深夜の「ゴミ箱あさり」で手に入れる食料品だけで生活をしているのだから。 

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Anika Maaß, www.anikamaass.de
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夜の暗がりの中、ゼヴェリン、ゴッシ、リーヌス(いずれも仮名)と他2人の住人たちは「ハンティング」に出発した。 時刻は夜の11時頃。リュックや袋、懐中電灯を手にした彼らが向かう先は、近所にある閉店後のスーパーマーケット。5人が捜しているのは、消費期限切れやリンゴが茶色く傷んできたといった理由でスーパーで売り物にならなくなった廃棄食品だ。

こうした屋外にある大型ゴミ容器(*)から食料品をあさる行為を「ダンプスター・ダイビング(ゴミ箱あさり)」と言う。 廃棄されている商品は、見た目は悪いかもしれないが、食べる分には何ら問題ない。

*英語で「ダンプスター(dumpster)」。欧米のスーパーには文字通り人がダイブできるくらいの巨大なごみ容器が使われている。

ゼヴェリンはソーシャルワークを学ぶ24歳の学生。オーストラリアを旅した時にヒッピーたちから贅沢な食料の調達先を教わった。「ゴミ箱からの’買い物’は純粋に実用的なんだ」と言う。旅から戻った彼は疑問を抱くようになった ー 食べ物はどこからやってきて、どれだけの量が廃棄されているのかと。

ゴッシは考古学を専攻する24歳の学生。幼い頃から「リンゴが変色したら、そこだけ切り取れば残りは食べられる」と教えられてきた。それだけに、以前働いていたミュンヘンの果物店で大量のフルーツが捨てられているのが耐えられず、その「ゴミ」を家に持ち帰っていたら、店をクビになってしまった。その後間もなくして、安全な食べ物をタダで手に入れられる他の場所を見つけたというわけだ。

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Anika Maaß, www.anikamaass.de

リーヌスは計算工学を学ぶ26歳の学生。以前から、パン屋が抱える「売れ残り商品の問題」に関心があった。いわく、彼がこのシェアハウスに越してきたタイミングで、(この問題への)住人らの情熱に火がついた。以来、彼らは一緒に「ダンプスター・ダイビング」をやっている。

ゴミ箱あさり(ダンプスター・ダイビング)の手順とそのモチベーションとは

ゴミ箱を「物色」する際、ゴミ箱の上の方にあるものから、下に入っているものが大体推測できるという。米やパスタが見つかることは稀で、チョコレートやハチミツもほぼない。離乳食や花が捨てられていることもある。多いのは果物や野菜で、彼らはほぼそれで生活している。

このように廃棄食品で生活していると、決まった食品を一定量見つけるのは難しい。だから時々「ジャガイモ・シーズン」がやってきたりする、と3人は笑う。 生鮮食品は滅多に買わない。廃棄されている肉や魚には慎重だが、乳製品は「ピクニックで丸1日屋外に持ち出した状態」と考え、持ち帰っている。

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Anika Maaß, www.anikamaass.de

5人は皆、穏やかな性格の持ち主だ。 何かを世間に広めたいのでも、政治的な訴えがあるわけでもない。 ただ単に、「廃棄されるべきでないもの」への基本的な理解と責任を持つだけの話、とゼヴェリンは言う。

ゴミ箱の中身をくまなく捜すには、時間も熱意も必要だ。 まずは、食料が入っていそうなゴミ箱を見つけることから。目当てのゴミ箱が見つかったら、まだ新鮮そうな野菜や果物と、今日明日にでも腐りそうなものとを選別していく。

捕まるかも、トラブルになるかもと、ストレスやプレッシャーを感じたりはしないのだろうか? 「そうでもないよ」と3人は答えた。彼らが物色するのは、フェンスで囲まれていないゴミ箱だけ。というのも、50kgのリュックを背負ってフェンスを飛び越えるのは容易ではないからだ。 一度、警官に見つかったこともあるが、見逃してくれたらしい。道行く人々から好奇の目で見られることもあるが、彼らは気にしてない。

「友人たちを招待すると、いいアイデアだねと喜んでくれます」と彼らは言う。拾ってきた果物や野菜がたくさんあるときは、おみやげ用まであるのだから、友人たちはなおさらハッピーだ。

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一番大切なことは「何でもかんでも捨てない」ことで、3人はそのためにもっと努力したいと口にする。そんな彼らが構想しているのが「フードセーバーID制度」。店の余った食べ物を「公式に」持ち帰ることができ、廃棄食品を防ぐというもの。他には、「食品の共有棚」を設け、家庭の残り物・余り物をそこに寄付し、他の人が自由に持ち帰れるようにすることも考えている。

こうした生き方・考え方を他人に強いるつもりはない。彼らは自分たちのためにそうしているだけで、使命感なども特にない。自分たちの体が求めるものに従う、その方が重要だと考えている。

その時食べたいものがぴったり見つかるということはまずない。しかし、だからこそ「ゴミ箱あさり」は、彼らが大切にしている「バランスの取れた食事」をもたらしてくれるという。

「ゴミ箱あさりをするなら、料理もできなくちゃね」

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ゼヴェリンはそう言うと、これまでの「収穫物」から自分たちで考えついたレシピを紹介してくれた。 彼らは食品の保存方法についても学んできた。「ミキサーは重宝しますね。いろんなものを混ぜてペースト状にして使えますから」と言うゴッシ。 時々はこういった調理器具を買うこともあるが、決して多くはない。 こうした時に備えて日頃から節約を心がけているので、何ら問題ないと。

私たちはバルコニーで夕食をいただくことにした。今夜のメニュー「カリフラワーのポレンタ(*)」の食材はすべてゴミ箱から見つけたものだ。ありがたく食事を頂く彼ら。 テーブルの上の花瓶には、緑のブロッコリーが生けてあった。

*コーンミールを粥状に煮たイタリアの定番料理

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Anika Maaß, www.anikamaass.de

ダンプスター・ダイビングは違法なのか ー 弁護士の見解

\ ダンプスター・ダイビングの違法性について、ヴォルフ・フォン・ロゼンシュティル事務弁護士のコメントを紹介する。

スーパーマーケットが出した廃棄食品を拾い集める「ダンプスター・ダイビング」という行為は、ドイツでは「私的妨害及び窃盗」として法に触れるリスクがあります。これについては、ゴミ箱に入っているゴミは依然として、それを捨てた人または廃棄物処理会社が所有するもの、という法律上の考えがあるためです(個人的には解せないのですが...)。

また、「ゴミ箱あさり」を目的として私有地に侵入することは、ゴミ箱所有者の意に反することとなるので、無視できない問題です。こうしたことから、これまでにも複数の起訴や刑事訴訟がありましたが、公益の無さや当該スーパーマーケットからの告発がなされていない等の理由で、いずれも裁判手続きは延期されています(社会奉仕活動やそれに類することを行うという条件で罰則を免れたケースもあります)。

これまで誰も「ダンプスター・ダイビング」を罰することに関心を示してきませんでした。 しかし、判決が下されたことがないからこそ、少なくとも罰金刑などの有罪判決が下るリスクがあることは、はっきりさせておくべきでしょう。

言うまでもなく、ゴミ箱が施錠されている場合は「ダンプスター・ダイビング禁止」を意味します。それをこじ開ければ、たとえ窃盗物に価値がないからと窃盗自体は見逃されても、器物損壊の罪に問われます。

By Katharina Wasmeier
Translated from German to English by Marsida Toska
Courtesy of Strassenkreuzer / INSP.ngo



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